桃花頑張る
短いですが、少しだけでも
「お早うございます。」桃花は最近日課になっている、朝の道楽亭通いをしながら挨拶をする。
「桃花さん、おはようです!」カウンターの奥からシュワが返事をする。
「桃花、おは。」カウンターで突っ伏したまましー姉が答える。
ここ数週間の朝、決まった風景だった。
「涼音は、いるわけないよね。」桃花はそう言いながらカウンターの何時もの席に座る。
「呼んだぁ。」涼音が酷い顔でカウンターの裏から現れた。
「ぎゃぁ。」桃花が叫ぶのもしょうがない。
「あー、涼姉は昨日から、理沙姉の実験に付き合ってます。」シュワが桃花に言う。
「へへへ、太陽が黄色いよ!」
「いや、涼音、それ色々違うから!」
「へへへ、桃花、エッチ!」そう言いながら涼音が床に倒れて寝始める。
「いや、ちが、ちょ、涼音、そこで寝ない!」
「この状態の涼姉は、使い物になんないですよ。」
「いや、色々駄目だよ。」
「いや~、無理です。」
「シュワさん、諦めたら駄目!」
「って、何気に詩織さんにも駄目臭が。」
「ふふ、桃花さん、流石です。」
「え?シュワさん?」
「し~姉も、理沙姉の実験に一週間付き合ってます。」
「え?えぇ?」
「シュワさん、この周りの危険度は?」
「今回は有りません、多分。」
「いや、多分は嫌!」
「大丈夫ですよぉ~。」そう言いながら、シュワが床に突っ伏す。
「え~シュワさ~ん。」
「ふわぁ、今回はきつい!」
「理沙姉が、奥の部屋から現れる。」
「理沙さん、おはようございます。」
「あ~。桃花、おはよう!」
「んじゃ、お休み。」理沙姉もその場で崩れ落ちる。
「え?」
「わたし如何したら良いの?」
あたりで寝息が聞こえ始める。
「え?え?、なにこれ?」
「いや、まず、落ち着こう!」
「私以外、全員が屍状態。」
「いや、詰んでるよね、これ。」
「いやいや、とりあえず、奥の部屋に全員を運ぼう。」
桃花は、意を決すると、まず奥の部屋に向かった。
その部屋の両隅には、淡く光る魔法陣が存在していた。
「部屋の奥にある、机の上では、怪しげな光を放つ『何か』が存在していた。
(きっと『あれ』が今回の原因。)
そう思った桃花は、それを無視することに決めた。
桃花は部屋の隅に常備してある、布団代わりのマットを中央に敷き詰める。
「とりあえずこれで良いか?」
そう言うと、桃花は店で倒れている「物」を運び始めた。
当然、お姫様抱っこをするほどの力もない桃花だ。
両手で持って、ずりずりと引きずっていく。
マットの所に持って行くと、力任せにマットの上に放る。
それを4回繰り返すと、その屍の上に同じく常備してある毛布をかぶせる。
「良し、これで良いか。」
そう言うと桃花は、店番をするために、カウンターの奥に入った。
「どうせ、お客なんか来ないよね。」そう言いながら、鞄から単行本を取り出したとき、来客を知らせるドアのベルが鳴った。
「うわぁ。」
「へ?あれ?まだ開店前ですか?」
見た事無い人が、ドアの所に立っていた。
「いえ、大丈夫です、やってます。」
「あぁ、良かった。」そう言いながらその女の人はカウンターの席に座る。
「えと、この店のシステムは?」桃花が問う。
「この店にある物は自由に使って、その分の料金を払うって聞いてます。」
「あぁ。それならよかった。」
「ブレンドとミックスサンドをください。」
「へ?」
「あれ?カウンターにいる人に頼めば、それを作ってくれるって聞いてますが。」
(あぁ、そう言えばそうだった。)
桃花はそう思うと、この店オリジナルのブレンド豆を一杯分ミルに入れる。
ここ数週間通ったおかげで、大体の事を出来るようになっていた、
ミルで挽いた豆を、ドリップに入れ、常時沸いているやかんからお湯を注ぎコーヒーを煎れると、
シュワお手製の食パンが入った棚から食パンを取り出すと、よく切れる詩織お手製のパンナイフで2cm圧に食パンを切り出す。
その食パンの表面にマヨネーズを塗ると、冷蔵庫から常備しているタルタルと、ロースハム、トマト、レタス、スライスチーズを取り出す。
タルタルはゆで卵を刻んだものを、特製のマヨネーズと塩コショウで味付けしたもので、揚げ物のソースにも抜群に会う。
そのソースを、たっぷりパンに塗り、もう一枚のパンを乗せる。
斜めに切れば、卵サンドの出来上がりだ。
もうひとつのパンには、レタス、トマト、スライスチーズ、トマト、レタスの順に乗せて同じように斜めに切る。
「どうぞ。」カウンター越しに桃花はコーヒーとミックスサンドを出す。
「ありがとう。」そう言ってその人はコーヒーとサンドイッチを受け取った。
瞬間、時間が止まったように桃花は感じた。
「ふぇ?」
「え?」
「・・・」
「あ、いくらですか?」
「えっと。」桃花は固まった。
「あの、あの、あたしどうすれば。「」
『桃花、ファイト!』
「え?え?誰えすかぁ?」




