愛華去る
「何があったのだ?。」
「はい、旦那様がお倒れになりました。」
「な、父上が?」
「はい。」
「う。む、そうか、父上が、そうか。」愛華が挙動不審になり、言葉を発する。
「愛華?」涼音が愛華に声をかけるが、愛華は弱弱しく涼音を見て言う。
「私の自由はここまでのようだ。」
「え?なんで?」
「私は、跡継ぎの男が決まるまでの間だけ、この身の自由を許された。」
「わが父が崩御しそうな時に、浮いた皇帝の血が私だ。
「他に兄弟は?」
「わが父が、男は全て屠った。」
「何だそりゃ!」
「そんな悪趣、この時点で根絶やしちゃえば良いよ。」
「ふっ、そう言う訳にもいかないのだ。」
「なんで?」
「我が集落の掟なのだ。」
「な、そうか。」詩織が辛そうに答える。」
「では、仕方がない。」詩織が言う。
「え、しー姉それって。」
「涼音、固有の部族の掟は私達ではどうにもできない!」
「愛華はその地に戻らなくてはならない!」
「そんなの迷信なんじゃ。」
「涼音、迷信には迷信なりの真実がある。」詩織が言う。
「っ。」
愛華が居住まいを正し、三つ指をついて言う。
「理沙様、詩織様、そして涼音様。」
「本当にお世話になりました。」愛華が頭を下げる。
正式な暇の言葉。
「愛華!」涼音が言葉にするが、愛華は寂しそうに笑う。
「涼音、これが私の人生だ。」
あっという間に愛華との別れの日が訪れた。
「涼音、見送りありがとう!」
「愛華、本当に良いの?」
「あぁ、問題ない!」
「愛華さん、私達何時でも友達だよ。」桃花が言う。
「愛華姉さん、何時でも帰ってきてくださいね!」シュワも言う。
「愛華、貴方が望むなら、私も理沙も理を覆す。愛華が本当に望むなら!」
「理沙姉、しー姉。ありがとう。」
「私は、それを受け入れる。」
「愛華!」詩織が苦しそうな顔になる。
「っ。」理沙も、同じような顔になる。
「ありがとうございます。」愛華が顔をくしゃくしゃにしながら言う。
そして、愛華が涼音の顔を見る。
その顔は、笑いながら泣いていた。
対する涼音も泣きながら、笑っていた。
「行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
愛華はにっこりと笑い、詩織に貰った装備と刀を手にして、道楽亭を出た。
そして、愛華は懐かしそうに、道楽亭を顧みる。
「さよなら。」愛華はそう言うと、歩を進めた。
「さよなら、私の青春。」
道楽亭の住人がそれを見送る。
「愛華、安らかに。」
「愛華、朗らかに!」
「愛華、健やかに!」
「愛華さん、お幸せに!」
残された4人が愛華に言葉をかける。
愛華は、一瞬振りむき、最大限の礼をする。
そうして、愛華は道楽亭から去っていった。
「まさか、このような形で消えるとは思わなかった。」
「いや、違うよ。」
「そうかな?」
「うん、多分。」
「ふふふ、そう言う事にしておこう。」
「愛華?」
「涼音、今生の別れだ。」
「っ!。」
「涼音はそのまま生きて欲しい。」
「え?」
「不自由な私の分まで。」
「愛華!」
「涼音、私の分まで。」
「嫌だよ!」
「え?」
「あたしは、あたしの分しか責任を持たないから!」
「っ。」
「愛華の人生は、愛華が自分で責任もって!」
「え?」
「ふふふ、そうだな、善処するよ。」
「頑張れ!」




