表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/90

その後

「ただいま。」詩織とその一行が道楽亭に着く。

「お帰り!理沙がカウンターの奥から答える。

「理沙、桃花がエルフの羽衣を纏った。」

「なに?マジ?」

「マジ。」

「も、桃花、こっちに来なさい、大丈夫、怖くないから。」

「ひっ、」桃花が後ずさる。

 その後ろで、涼音が桃花の両肩を抱いて、理沙の方に突き出す。

「大丈夫だよぉ、多分!」

「ひひひ、エルフの羽衣。」

「あの、あの、あの、理沙さん、目が怖い!」

「あー、理沙。今桃花に敵対行動をとると・・」

「あぎゃぁぁぁぁ。」響き渡る理沙の悲鳴。


「危ないよー。」詩織がのんびりと言う。


「早く言いなさいよ!」身体から煙をあげながら理沙が詩織に突っ込む。

「おー流石理沙、無傷か~。」

「電気耐性なかったら死んでたよ!」

「全属性攻撃無効の、荒ぶる理沙なら平気だと思った。」

「でも今ので判った。」にっこりと微笑んで、理沙が桃花に近づく。

「ひ、ひえ。」桃花が変な声をあげる。

 しかし、羽衣の攻撃は無かった。

 理沙が羽衣を触る。

「ほぉ、ふんふん、成程。エルフの最期の想いを乗せた霊毛かぁ。」

「流石理沙だね。」

「やだなぁ、詩織もこの程度は看破してるんでしょう。」

「まぁね。」

「んじゃ、ちょうだい。」


「んー、解ったぁ。」

「シャイナがいないから、桃花で良いか。」

「へ?」

「髪の毛貰うね。」そう言うと、桃花の髪の毛を一本、詩織が抜く。

「つ。」桃花がその小さな痛みに声をあげる。


 詩織は、カウンターに行くと理沙がコップに用意した水で、カウンターに指で陣を描く。

「え?何するの?」

「桃花、今から面白いもの見れるよ、きっと。」

「へ?」


 詩織が桃花の髪の毛をその陣に乗せる。

 そして、両手を翳しもごもごと呪文を唱えた。


 一瞬後で、陣がまばゆく光る。

「ひ。」桃花は眩しさで、目を瞑る。


「何が起きたの?」桃花が目を開けると、カウンターに桃花が纏う羽衣が浮いていた。

「んー。まぁまぁ。」

 羽衣は、桃花の方にゆらゆらと飛ぶが、桃花の纏う羽衣に気付き、うろうろと飛ぶ。

「ななな、なに、あれ?羽衣?」

「しー姉が、錬成したんだよ。」

「私が纏っているのと同じものに見えるけど。」

「んー、魂の量が圧倒的に違うかな。」

「魂?」

「桃花が纏っているのは、エルフの魂が8千近く宿ってるけど、しー姉の作ったのは桃花の魂の2万分の1かな。」

「へ?あたしの魂?」

「桃花の髪の毛一本だからね。」

「でも、桃花に従おうとしてたから、ほぼ完コピだねー、流石しー姉。」

ケラケラと涼音が笑うが、桃花は少し怖くなっていた。

「エルフの人達が人生をかけて織る羽衣を、一瞬で?」

 その桃花の肩を涼音が抱く。

「へ?」

「桃花、深呼吸。」

「え?うん、すーはー。」

「桃花、今、一瞬しー姉に敵対心を持ったよ。」

「え?そんな事。」

「あるんだよ。」

「桃花は、今、エルフの人生に共鳴した。」

「え?私が?」

「うん。」

「良い?」

「え?うん。」

「しー姉は、エルフの根源を馬鹿にしていない。」

「え?う、うん。」

「しー姉は、ただ、其処に在った物を再現しているだけ。」

「え?」

「言わば、そこにある物の絵を描いているのと同じ。」

「え?」

「もっと言えば、そこにある物の写真を撮った、みたいな?」

「同じ事じゃん。」

「でもそういう感じ!」

「そこにある物を、ただ写しただけ。」

「それに、桃花が敵対心を抱くと。」

「抱くと?」

「全身の骨が粉砕された状態で、店の外に放りだされる。」

「あー、この間、聞いた話だ。」

「例外はないよ。」

「え?じゃぁ涼音がそう言う気を起こしたら?」

「同じ運命・・」

「怖い、怖い、何それ!」

「それが、道楽亭。」


 詩織は羽衣を掴んで、理沙に渡す。

「魂までは入れられなかった。けど、素材ならこれで充分でしょ。」

「ん、流石詩織だ。」


「もうひとつある、レバーってある?」詩織がシュワに聞く。

「焼き鳥のレバーなら冷蔵庫に。」

「一本ちょうだい。」

「はいです。」

 シュワは、レバー串を皿にのせて、詩織の前に置く。


「サンキュ、シュワ。」

 そう言うと、詩織はまた、コップの水で陣を描き、その真ん中にレバー串を置く。





「ねぇ、涼音、あれってまさか。」

「そのまさかだね。」

「しー姉は、あくまでも、其処に在った物を映してるだけだからね!」


そして、両手を翳しもごもごと呪文を唱えた。

 一瞬後で、陣がまばゆく光る。


そして、それはそこにあった。

「獣魔の鋼鎧」

「流石、しー姉。」

 桃花は思う。(エルフの羽衣ほど拒絶は感じない。)

(そうか、種に対して、思いが入るんだ。)

(じゃぁ、大丈夫。)

(多分)

「理沙、これも持って行って。」

「サンキュ、詩織!」

 詩織は、親指を立てる。


 理沙が奥の部屋に消えると、詩織はカウンターに突っ伏した。

「きつい!」

(しー姉が、きついと言うのだから、本当にきつかったのだろう。)


 気が付くと、詩織は寝息を立てていた。

「そっとしておこう。」涼音の言葉に皆が従った。



 それから数日が過ぎた。



道楽亭に来客があった。

「こちらに愛華様が滞在してると聞いて参りました。」老紳士が畏まって言う。


「はい、愛華はこの店にいますよ!」シュワが答える。

「おぉ、では此方で待たせていただいても?」

「お好きな席でお待ちくださいです。」

「かたじけない。」老紳士はドアの傍の席に座る。

「お飲み物要りますか?」シュワが老紳士に聞く。

「はい、では番茶を頂けますか?」

 


「煎れた事無いです。」と言ってフリーズするシュワを横目に、涼音が番茶を煎れ、紳士の前に置いた。

「これは、良い香りです。」老紳士がそれを口にする。


「こ、これは素晴らしい。」老紳士が声をあげた時、愛華が店に帰ってきた。


「愛華お嬢様!」

「な、セバス!」愛華が固まった!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ