キャラウェイ達の村で
「主、邪魔なら我が排除しようか?」アモナが言う。」
「物騒な事言うんじゃないの。」
「いやしかし、こういう輩はGと同じで一匹見かけたら、三〇匹いると言われる存在と同列かと。」
「アモナ、あたしの拒絶魔法舐めるな。」涼音が淡い光に包まれながら言う。
「ハイベルト様、あたしに不敬を思っていない事を切に望みます。」
「拒絶!」涼音が自分への干渉を一切感じない状態になる魔法を発動する。
「つ、涼音様、え?涼音って誰?」アモナが呆ける。
「す、涼音殿。これは?」ハイベルトが涼音に問う。
「おーハイベルト様はあたしに敵対心ないんですね。」
「あ?涼音殿に敵対心?くはは、とうの昔に砕かれておる。」
「涼音、何て楽し、厄介なものを唱えるの。」詩織がニコニコしながら言う。
「しー姉、今楽しそうって言いかけた?」
「いえ、厄介な魔法と言いましたけど。」
「そのにやけ顔がすべてを答えてるけど。」
「ねぇ、涼音、何したの?周りの反応が変なんだけど。」
「桃花もこっち側かぁ。」
「ハイベルト様、これは?」老妖魔が言う。
「私も、涼音様の存在を一瞬忘れかけましたが、屈辱、いえ、期待感で思い出しました。」モルグが悔しそうに言う。
暫くすると、そこにいた獣魔と獣人が何もなかったように解散し始める。
しかし、「何でこんな所に我はいるのだ。」アモナが叫ぶ。
涼音はやれやれと思いながら、アモナの前に行く。
「なんだお前は?」
「あんたの主人だよ。」
「な、我の主人?ぶはははは、我の主人?」
「そうだよ。」
「我を従えると?」
「グラビ!」
「ふぐ!」
「忘れてるかもしれないけど、あんたはあたしに服従を誓った。」
「な、身体が全く動かせぬ。」
「前の時は、この魔法を解いた瞬間にあたしに襲い掛かり、あたしの横にいた龍族の、ワンパンで沈んだ。」
「でも今回は龍族がいない。だからあたしが本気を出す。」
「あたしに服従を誓え。」
涼音が忍者刀を抜いてアモナの首に刃をあてる。
「なにを。」
アモナが渾身の力で涼音のグラビを抜けようとする。
「くっ。」
「くそっ。」
「ぐぬぬぅ。」
「ねぇ、殺そうと思えば、もう数十回殺してるよ。」
「っ!」
「其方の刀で我を滅せる根拠を要求する。」
「あ、そうか。」
「あんたは何が弱点?」
「くはは、言う訳なかろう。」
「なんてね。」
「?」
「あんたは、物理攻撃と聖攻撃が弱点。」
「な。」
「ほんじゃ、あたしの本気を叩き込むとしようか。」
「まず、聖属性の攻撃魔法を刀身に乗せるっと。」
涼音の忍者刀が金色に輝く。
「そして、物理攻撃を補助する。」
涼音の忍者刀に、紫色の光りが集約する。
「最後に、魂が滅せるように。」
光魔法が剣の切先に展開される。
「なぁ~。ま、待て待て待て。」アモナが驚愕して言う。
「その剣は、我を一瞬で滅せるものだ。」
「さっきからそう言ってるよね。」
「な、我は本当に貴女に忠誠を誓ったんだな?」
「疑うなら、この刀で切るよ。」
ずさ。
アモナが重力魔法を破って土下座する。
「この敗北感は、きっと事実であろう。」
「ん?」
「この度も我は貴女に忠誠を誓う。」
「それは良かった。」
「無益な殺生をしないで良かったね。」詩織が残念そうに言う。
「しー姉、残念そうなのは何で?」
「いや、魔族の消滅を見るの初めてだから。」
「あー、あたしも見た事無いや。」
「魔族を見ること自体まれだからねぇ。」
「そっか、封印してどんな素材になるか試してみるのも有りだったね。」
「理沙やシュワが残念そうにしている姿が目に浮かぶよ。」
「あの~、二人とも凄い会話をしてること気付いてる?」桃花が突っ込む。
「「なにが?」」
「え?何がって、そこの人?の命を簡単に滅せるって。」
「「え?普通にできるけど。」」
「あ~。桃花はそれを見たいって事?」涼音が石を取り出しながら言う。
「え?」
「な?」
桃花とアモナが同時に驚愕する。
「そっか、桃花は封魔石見た事無かったよね。」
「ちょ、あ、主、我は忠誠を誓ったぞ。」
「す、涼音、かわいそうだからやめてあげて。」
「え~、色々楽に済むかと思ったのに。」
アモナは今、本当の実力差を痛感した。
(封魔石をかけられるレベル差?、我がレベルは暗黒魔導士レベル58だぞ。いや、きっとこのお方なら我の属性もレベルも看破しておられるだろう。我にはこのお方が忍者レベル16としか見えぬ。しかし、きっと隠蔽されているのであろう。)
アモナは地面に額をあてて土下座する。
「す、涼音、アモナさんもなんか平伏してるみたいだから、許してあげて。」
「ん~残念。」
「涼音、次にちょっかい出してきた魔族を封印すれば良い。」詩織が怖い事を言う。
「しー姉がそう言うなら。」
「す、涼音殿、詩織殿、そろそろ至宝の間に行こうではないか。」ハイベルトがそんなやり取りを見て二人を促す。
「おっと、本来の目的を忘れていたよ。」
「私は忘れてない。」
「しー姉は直情的だから。」
「褒めても何も出さない。」
「いらないよ。」
「で、ではあらためて、こちらに。」ハイベルトが先程の扉の前で言う。
「楽しみ。」詩織が言う。
ハイベルトは、そのドアを開ける。
その部屋は外気から遮断されるように、更にドアが存在した。
そのドアの中にも更なるドアが。
7重のドアの中に、それはあった。
「これが我らが至宝、獣魔の鋼鎧である。」ハイベルトが言う。
「お~。」
「は~。」
詩織と涼音が同時に声をあげる。
桃花とアモナは「?」って顔をしている。
「ハイベルト様、触っても?」詩織が言う。
「お?あぁ、許可する。」
「ありがとうございます。」
詩織は一礼すると獣魔の鋼鎧に手を当てる。
そして涙を流しながら言う。
「こ、この鎧は、貴方がた獣魔が滅するときに、その血で作る鉱物で出来ているのですね。」
「な、何故それを。」
「い、いや、流石森の管理者殿か。」
「その通りだ。」
「素敵です。」詩織がうっとりと言う。
「ハイベルト様、ありがとうございます。この度は私の無謀な願いをお聴き入れ頂き感謝の極みです。」
詩織が礼をとる。
「なに、彼の地の森の管理者の願い、聞き届けるのは当然の事だ。」
「しかもあの甘味の・・・」
詩織は、最後の方を聞かなかったように言う。
「獣魔の王の協力に感謝します。」
そして、何事もなかったように薄緑色の陣に入る。
「では、ハイベルト様、御機嫌よう。」
「えと、あの失礼します。」
「・・・・。」
詩織に続き、涼音、桃花、そしてアモナが陣を渡った。
「彼の管理者たちの眼には、どのように映ったのであろうな?」ハイベルトがぽつりと言う。
「私にははかり知れませぬ。」老妖魔が言う。
「ふふふ、最早我らの能力では贖いきれぬようですな。」
「くふふ、いや、まったくその通りなのが悔やまれる。」
「恐れながら、長。」
「なんじゃ?」
「凄く楽しそうに見えるのですが、」
「くふふ、気のせいであろう、。」
「き、気のせいですか?」
「くふふ、気のせいじゃ。」
「仰せのままに。」
「キャラウェイ、汝も楽しそうだの。」ハイベルトがキャラウェイを見て言う。
「えぇ、お父様。彼の方々達と同じ場所で、教えを受けられる喜び、心が震えますの。」
「うむ、我もあと30歳若ければと思うと、至極残念だ。」
「キャラウェイ、お前に我の願望を託す事、許せ。」
「いいえ、お父様。」
「私は幸福感でいっぱいです。」
「あのような至高の方々達と、まして、机を並べて、同じ時間を共有できるなど、幸運以外の何物でもありません。」
「キャラウェイ。我はお前が羨ましい。」
「うふふ、お父様、私も彼の方々と共に生きられるのが楽しくて楽しくて。」
「う、羨ましいのう。」
「うふふ、今、生を受けた喜びを感じますわ、お父様。」
「くふふ、謳歌せよキャラウェイ。」
「はい、お父様。」
キャラウェイは優雅に礼をとる。
ハイベルトはキャラウェイの姿を見て、満足そうな笑みを浮かべた。
「やっぱり私要らなかったよね。」
「いや、きっと伏線だよ。」
「そうかなぁ?」
「しー姉が呼んだんだから、きっと何かあるよ。」
「うん、そう言う事にするよ。」
「前向きで良いね。」
「しかし、涼音の「拒絶」ってすごいね。」
「そう?」
「あれだけ群がってた人?達から一瞬で存在を忘れさせるって。」
「あたしに強い感情を持ってる人には効かないけどね。」
「にわか対策乙って奴かな。」
「ボッチになりたいときは効果大だね。」
「いや、ボッチになりたくないけど。」
「その時は、知らない振りすればいいんだよね。」
「桃花、あたしをボッチにしたいの?」
「え?」
「ん?」
「違うんだ、あははは。」
「桃花~。」
「え、涼音、目が怖いよ。」
「ふふふ。」
「あ、私用を思い出した。じやぁね。」
「あ、こら待て桃花!」
「・・・」
「くっ、何て素早い。」




