そのあと
「なあ、涼音。」
「なに?愛華。」
「なんか、この間、シュークリームパーティを開催したって聞いたんだが。」
「あー桃花が振舞っていたね。」
「なんで?」
「え?」
「何で私はそこにいなかったんだ?」
「いや、理沙姉のお使いに言ってたからだよね。」
「本当か?」
「何が?」
「作者が忘れていたって事じゃないのか?」
「ん、な、な、いや、そんな事・・・ないんじゃないかな。」
「そうかな?」
「いや、もしそうなら、愛華に死亡フラグ立てて終わりじゃない?」
「そこまで嫌われてるのか?」
「いや、嫌われてないからフラグ立たないんじゃないの?」
「成程、そう言う事か。」
「う、うん、多分。」
「そこのエルフに聞くが、我に咎は無いのか?」アモナが言う。
「何を言っているの?」セルフィーが答える。
「我は、そなたの同胞を屠っているのだぞ。」
「えぇ、判っていますが?」
「我は、此処にいる涼音殿達に屈服した。」
「そのようですね。」
「であれば、その涼音殿が認める其方達の同胞を屠った事に対する咎は無いのか?」
「おほほほ。可笑しい。」セルフィーが笑う。
「くはははは。」ハイベルトも同じ湯に笑う。
「魔王クラスの存在が現れたと聞いていたが、その程度の見識とは。」
「我は魔王の娘であるが、まだ父には及ばない。」
「では、覚悟はあるのであろう?」
「何を?」アモナが問う。
「森の中での事であろう。」ハイベルトが言う。
「そこでは全てが自己責任ですから。」同じようにセルフィーが言う。
「己の力量も見極められず、力量以上の存在にちょっかい出した者の末路なぞ与り知らない事です。」
セルフィーがきっぱりと言う。
「まぁ、それが自己責任って事だな。」ハイベルトが笑いながら言う。
「な、こいつらの命の価値観変だぞ。」
横にいる涼音を見ると、うんうんと頷いている。
(それでいいのか?)
「なに?アモナは罰を受けたいの?」涼音が言う。
「いや、そう言う訳ではないが。」
「森の中であった事は、自己責任。たとえ死んでも自己責任。」
「なに?」
「アモナ、あんたあたしに滅っせられたらどう思う?」
「我の力が及ばなかったという事だから、後悔はするが、納得して死を受け入れるな。」
「んじゃ、そう言う事だね。」
「成程。」
「受け入れちゃうんだ。」桃花が思う。
「弱肉強食と言う事であろう。」
「うん、そだね。」
「そうなんだ。」
「あれ?桃花は不服?」
「いや、不服って言うか、初めて知った。」
「それが、あたしたちが生きてる世界。」
「はぇ?」
「こっちの世界にようこそ。」涼音がにっこりとしながら、右手を左胸に当てながら礼をする。
「え?え~?」桃花が挙動不審になる。
「ぽかっ!」詩織が涼音の頭に拳骨を落とす。
「し~姉、痛い!」
「初心者を貶めるな。」
「あ~。ごめん。しー姉。」
「解ればいい。」
「なに?私どうすれば良いの?」
「あ~桃花さんは、そのままでいいよ。」詩織が言う。
「うん、そのままでいいと思うよ。」涼音は目をそらしながら棒読みで言う。
「ねぇ、何かやだ。」桃花が涼音に詰め寄る。
「いや、本当に、何もしなくていい。むしろ受け入れて。」
「何を?」
「げ、現実?」
「なにそれ?」
「桃花さん、森の適性が開花してるんです。」シュワが横から答える。
「何?森の適性って。」桃花は今度はシュワに詰め寄る。
「え、と、桃花さん、最初に森に入った時のプレッシャー覚えてます?」
「最初に感じた重圧?」
「はいです。」
「判ったけど。」
「今はどうですか?」
「え?ほとんど感じないけど。」
「それなのです。」シュワが胸の前で手を組んで言う。
「それが森の適性なんです。」
「え?どうゆう事?」
「森の重圧を感じない、即ち森に認められた者、ってことです。」
「わ、私どうなっちゃったの?」
「何も変わってないよ。・・多分・・。」
「涼音、その間は何?」
「ん~、桃花、初級魔法の本を最初に読んだとき、使えないって言ってたよね。」
「うん、言った。」
「今はどう?」
「頭に流れ込んできたよ。」
「んじゃ、そこにいるシュワに「アビールシャワ」唱えてみて。」
「え?私のじゃ水鉄砲位の威力ってわかってるじゃない。」
「いいから。」
「う~、シュワさんごめん。(アビールシャワ)!」
桃花が、シュワに人差し指を向けて唱える。
すると、直径15㎝の水の玉がシュワに向かう。
「へ?」
「え?」
二人から同時に声が上がる。
水の玉が、シュワに当たる。
「うにゃ~。」
中途半端な威力だったので、シュワは水浸しになりながら床に尻餅をつく。
「え?うそ。」桃花が自分の人差し指を見て言う。
「桃花の魔力レベルが上がったから、威力が少しだけ上がったんだ。」
「涼姉、酷い!」シュワがそう言いながら又着替えに行った。
「シュワさんに、悪いことしちゃった。」
「いいよ、きっと気にしてないよ。」
「でも、魔法の威力が上がったのは解ったよ。」
「私の魔力レベルが数段上ったって事だよね。」
「うん、そう。そして、それが森の適性。」
「魔法のレベルが上がると、森の適性が上がるってこと?」
「うん、それもその一つ。」
「そっかぁ、魔法レベル以外も関係するんだね。」
「流石桃花、理解が早いや。」
「戻りましたぁ。」シュワが明るく言う。
「シュワさん、ごめんなさい。」
「大丈夫です。後で涼姉に仕返しします。」
「生意気な、返り討ちにしてくれるわ。」
「え、っと、突っ込むところ?」
「いえ、いつものお二人のじゃれ合いです。」カウンターのキャラウェイが言う。
「「ちがうよ。」です。」二人同時に答えが返ってきた。
「なんだかんだ、仲良いね。」桃花が口にするが店の喧騒にかき消された。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「では、詩織殿、わが村に行こうとしようか。」口の周りを生クリームで汚したハイベルトが言う。
「お、お父様、みっともないです。」キャラウェイがハンカチを渡しながら言う。
「お?おぉぉ。」少し動揺しながら、ハンカチで口元を拭き、態度を改める。
「何人来られるのだ?」
「し~姉、あたしも見たい。」涼音が手をあげる。
「我は涼音殿の護衛をする。」アモナが横を向きながら言う。
「桃花さん、あんたも来なさい。」詩織が言う。
「え?は、はい。」
「あまり大勢で押しかけても何ですから、今回はこの4人でお伺いします。」理沙が言う。
「相分かった、非公式な訪問故、何のおもてなしも出来ぬが許されよ。」
「いえ、私の不躾なお願いをお聴きいただき、感謝の極みです。」詩織が見事な礼をする。
「ふわぁ、詩織さん素敵。」詩織の礼を見て桃花がぽつりと言う。
「では、参ろうか。」ハイベルトが奥の部屋に行く。
「え?どうやって行くの?」桃花が涼音に問う。
「百聞は一見に如かずだよ、桃花。」
「え?え~?」
一行は薄緑色の陣に入っていく。
その陣に入って消えたハイベルトを見て、桃花が驚愕する。
「え~。き、消えたよ。」
「大丈夫だから。」そう言いながら桃花の身体を抱いて、涼音も陣に入る。
桃花は一瞬の浮遊感を感じる。
そして、涼音に引っ張られるように陣の外に出る。
「ふわぁ。初めて体感する感覚だったよ。」桃花が力無く座りながら言う。
最後にアモナが陣の中に現れる。
「へぇ~、凄いなこれ。」アモナが感心した様に言う。
「わが村にようこそ。」ハイベルトがにこやかに言う。
「おぉ、そう言えば、わが村に来訪していただけるのは初めてであるな。」
「あぁ、そうですね。」詩織は前回の訪問を無かったことにするらしい。
「ハイベルト様、御無事で何よりです。」老妖魔が近寄ってきて言う。
「何を言う、彼の御方達が治める地が安全で無い事など皆無であることは明白であろう。」
「ははぁ、私が軽薄でした。」
「良い。この度は、彼の地の御方に我らの秘宝をお見せするためにお連れした。」
「なんと?」
「我の全権を持って許可する。」
「良しなに計らえ。」
老妖魔は何かを感じるが、ハイベルトに頭を下げる。
「御意。」
そして、涼音達はハイベルトの秘宝がある部屋の前に到着する。
その部屋の前には、数人の獣魔達が集まっていた。
「さぁ、詩織殿、これが我が国の至宝。獣魔の鋼鎧がある部屋だ。」
「お待ちください、長。」
「なんだ。」
「我が国の至宝を、このような下賤の者たちに見せるなど、納得がいきません。」そう言うのは若いが、勇猛そうな威厳を持った獣魔だった。
「控えよ、モルグ!」傍にいた老獣魔が言う。「長の御心じゃぞ。」
「な、しかし、たかが人族にそれを見せるなぞ、ありえません。」若い獣魔は尚も食い下がる。
「この方たちは、先の不死の魔王戦で最も活躍された方たちなのだぞ。」ハイベルトが言うが、その獣魔が言う。
「な、不死の魔王に止めを刺されたのは、長であると聞いております。」
「確かに止めは刺した。」
「であれば、やはり認められません。」
「お前たちは、あの戦いを見ていないから。」ハイベルトが言葉に詰まっていると、涼音がハイベルトに声をかける。
「え~っと、実力を見せろって事?」
「うむ。」
「な~んだ、我達と何も違わないではないか。」アモナがケラケラと笑いながら言う。
「し~姉、あたしがやって良い?」涼音が詩織に問う。
「私じゃ手加減できそうもないから、よろ。」
「承り。」涼音が一歩前に出る。
「で、どうすれば認めるの?」涼音が問う。
「私に一撃でもいれられたら認めてやろう。」モルグが言う。
「判った。」その言葉と共に涼音の存在が消える。
「な、何処に行った?」モルグがあたりをキョロキョロするが、涼音がモルグに膝カックンをする。
モルグが膝まづくと、涼音がモルグの肩に手を置いて言う。「はい、一回死んだ。」
「な、そんな不意打ち、卑怯であろう。」
「え~。判ったよ。」そう言うと涼音は五m程距離をとる。
「んじゃ、行くよ。」涼音はそう言いながらスタン(麻痺)の魔法を無詠唱で発動する。
「な?」モルグは自身が動けない事に驚愕する。
涼音はモルグの前に行き、左の胸に手を置いて言う。
「はい、二回死んだ。」
「がぁ、認めんぞ!」モルグが叫ぶ。
「モルグよ、未熟だな。」ハイベルトが言う。
「まだまだ、俺はやれる。」涼音がスタンを解除したのを感じ言う。
「ふはは、魔法を解除したのが運の尽きだ。」
モルグが涼音に飛び掛かる。
「グラビ」
重力魔法が、モルグに圧し掛かる。
「ぐはぁ。」
モルグは地面に縫い付けられる。
(な、手も足も動かせない。)
(あ~。我も受けたが、あれは何も出来ん。)そう思い、アモナが肩をすくめる。
そんなモルグの前に涼音がしゃがみ、モルグのおでこに人足指を指して言う。
「三回死んだ。」
「え~っと、まだやる?」
「卑怯な攻撃なぞ認めん。」
「はぁ。」モルグの言葉に涼音はハイベルトを見る。
「うむ。」ハイベルトはやれやれと言った顔をして頷く。
涼音は、5m程離れると、重力魔法を解く。
自分にかかる重力の喪失を感じて、モルグが地を蹴る。
「ぐははは、獲った!」モルグが涼音に必殺の爪を放つ。
しかし、その爪は涼音の持つ回避の腕輪に阻まれ、そのまま地面に突き刺さる。
「な?」
「え、と、モルグさんだっけ?・・・もう飽きた。」涼音がそう言いながら、「威圧」を込めて、忍者刀の刀身をモルグの首に当てる。
「いい加減、力量差を感じてくれないかなぁ?」
モルグは言い難い恐怖を感じていた。
「なな、なんだこの恐怖は。」
「モルグよ、力の差を感じたか?」ハイベルトが言う。
「?」モルグがハイベルトを見る。
「涼音殿は、まだ本来の力を開放されておらぬぞ。」ハイベルトが言う。
「モルグよ、涼音殿が本気であれば、そなたは封魔石で封印されて終わりだった。」
「な、封魔石?」
「そうじゃ、そして、それはこの私にも通用するのだ。」
「な、長が封魔石で封じられる?」
モルグは驚愕して目の前の少女を見る。
そして、その少女がぽつりと言う。
「あそこにいるしー姉は、あたしより凄いよ。」
「な?」
「そろそろ降参しないと、獣魔の里が滅ぶかもね。」
「まさか。」
「一応忠告、あたしでも可能。」
モルグが何かを感じて青ざめる。
「み、認めます。」モルグが言う。
「おー、それは良かった。」涼音が忍者刀を収めながら言う。
モルグは首が繋がっていることを確かめ安堵する。
「他に涼音殿に挑みたい者がおれば、今名乗り出よ。」ハイベルトが言う。
「しかし、それで命を落としても我は一切関知せぬ。」
しかし、どの世界でも己の力量を判らぬお馬鹿がいる。
「長、こいつを狩ればこの村のトップになれるの?」犬耳の獣人が右前足を舐めながら言う。
「あぁ、認めよう。涼音殿を己が力で屠れたならな。」
「ハイベルト様、屠るって。」ジト目で涼音がハイベルトを見る。
「んじゃ、庭に行こうよ。ここじゃ狭いから。」犬耳獣人が言ってドアから出る。
「はぁ、面倒になってきた。」涼音はそう言いながら、それに続いた。
ハイベルト、詩織、そしてモルグや老獣魔達も庭に出た。
庭と言っても、広さはバスケットコート2面程の広さがあった。
そこには数十人の獣魔や獣人が二人の戦いを見るため集まっていた。
「うわぁ、大ごとになって来たわねぇ。」詩織が他人事のように言う。
「ハイベルト様、チャチャと終わらせたいので、他に参加したい人がいれば同時にかかって来てくれるよう、言ってください。」涼音が屈伸運動をしながら言う。
「と言う事だ、我こそと思う者は胸を借りると良い。」ハイベルトが言うと、何人かが前に出てくる。
「モルグよ、お前はいかんのか?」ハイベルトはニヤリとしながらモルグに言う。
「私などでは太刀打ちできない事、身に沁みました。」肩を落としてモルグが言う。
「ふむ、その挫折は、上に行ける者が感じる物だ。」
「より精進するがよい。」
モルグはその言葉を聞き、ハイベルトを見ると、何かを感じて言う。
「頑張ります。」
「うむ。」
「おぉ、始まるようだ。」
庭の中心に涼音。
その周りを、6人の魔獣族と獣人が囲んでいた。
「全員一緒でも良いよ。」涼音が欠伸をしながら言う。
「舐めるな。」、涼音の後ろ側にいた獣魔が、およそ6mの距離を一瞬で跳び、涼音に蹴りを入れる。
しかし、涼音は回避の腕輪の力ではなく、体術でするりと躱すと、忍者刀の刃のない方で軽く肩を峰打ちする。
「な、そんな。」獣魔が驚愕する。
「私の攻撃を、見ないで躱した。」
次に、おそらく双子なのだろう、よく似た獣魔が二人、左右から同時に涼音の頭と足を狙って跳んでくる。
涼音はその攻撃を、刀と鞘で受けながら回転し、グラビをかけて二人同時に地面に落とし、それぞれの首に同じように峰打ちする。
「隙あり。」先程の犬耳獣人が、涼音の死角から突っ込んでくる。
「声出しちゃ意味無いじゃん。」涼音はそう言うと一歩横に動く。
犬耳獣人は派手に自爆する。
「な、まだだ!」犬耳獣人はそう言って振り返ると、涼音にデコピンされる。
「痛った~。」
そこへ、残った二人の獣魔と獣人が、連携の取れた攻撃を涼音に浴びせる。
「おっ、君達は職業軍人か。」涼音がそう言いながら、その攻撃を躱す。
「おぉ、あ奴らは我の親衛隊の者たちか。」ハイベルトが言う。
「少しは抗って欲しいですのう。」老獣魔もぼそりと言うが。
「スタン。」涼音の呪文で硬直する。
「解っていたことだが。」
「長、お気持ちは察します。」
涼音は全員に峰打ちを終えた。
「なぁー。認めないぞ!」先程の犬耳獣人が叫ぶ。
「私の毛は石よりも固い!」
「実際に切られていないのだから、私はまだ戦えるのだ。」
「お、「ハイベルト様。」」ハイベルトが何かを言うのを遮って涼音が言う。
「そこの庭石を私に賜ってもよろしいでしょうか?」
そこには形の良い石が転がっていた。
「お?おぉ、好きにするがよい。」
「ありがとうございます。」涼音は一礼すると忍者刀をその石の上に置く。
そして、犬耳獣人や周りの獣魔を見ると、その庭石をすぅっと切る。
「な!」
「え?」
「ふゎ?」
「な~。」
「はぅ。」
「ぎゃ。」
涼音は更にもう一度、庭石を削いだ。
そして、忍者刀を鞘に納めると犬耳獣人にニカッと笑った。
「「「「「「「まいりました。」」」」」」
全員が何故か土下座している。
「え~っと、居心地悪いからやめて。」
そんな中、犬耳獣人が涼音の足元に蹲って言う。
「数々のご無礼失礼いたしましたぁ。」
「え?いや、解ってもらえたなら其れで良いよ。」
「いえ、感服いたしました。某、貴女に弟子入りしたいと思います。」
「間に合ってるから。」涼音はそう言って踵を返す。
「いえ、そこを何卒、ひらに、ひらに~。」
「いつの時代の人間、いや、獣人だよ!」
涼音が突っ込む。
「主、邪魔なら我が排除しようか?」アモナが言う。
「あれ?私要らないよね?」桃花が言う。
「いや、なんか桃花は作者のお気に入りになったっぽいよ。
「何それ?」
「裏設定?」
「なんだよそれ、世界観を壊す設定だね。」
「作者が色々回収することを望むよ。」
なに?フラグ回収?




