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道楽亭での桃花

「涼音様、我はどの国を殲滅すれば良い?」アモナが涼音に問う。

「殲滅しなくて良いから。」

「え?他の国、他の種族を蹂躙するのが、美徳であろう。」

「何じゃそりゃ。」

「涼音殿、魔族とはそういうものだ。」カウンターで紅茶を飲みながらハイベルトが言う。

「それゆえ、私達は魔族とは相いれないのです。」その横でセルフィーも言う。

「なんじゃ、つまらんのぉ。」アモナはつまらなそうに言う。

 やれやれと思いながら涼音がカウンターを見ると、二人の前にシュークリームが置かれていた。


「な、誰が?」涼音がカウンターの中を見ると、キャラウェイがそれを置いた犯人だと判る。

「む、先程から気になっていたのだが、この石のようなものは何だ?」

「お父様、それは「シュークリーム」と言うこちらの世界の至宝です。」

「まぁ。それは凄いですね。」セルフィーも目を輝かせる。

「えぇ、お母様、それは私たちの世界では考えられない甘美なものです。」

「シャイナ、あんたもか。」


「ちょ、お待ちください!」涼音が言う。

「うん?」

「はい?」

 二人が止まる。

 いや、もう無理だね。

 そう思いながら、理沙姉やしー姉を見ると、二人とも私関係ないって顔で、紅茶を飲んでいる。

「い、一応、申し上げますね。」

「そ、それは、お二人の世界にはおそらく、存在しない甘みです。」

「お気持ちをしっかり持って、お食べ下さい。」涼音は何かをあきらめて言う。

「うむ。」

「判りました。」

 キャラとシャイナはそんな二人を、わくわくしながら見ている。

 そして、二人はそれを手に取り、口に入れる。

「うぉ。」

「ほわ。」

 二人ともフリーズした。

 そして、二人とも貪り始める。

「お父様、お待ちになって。」

「お母様も、待ってください。」

「な、何故止める?」

「えぇ、このような物を食すのを止めるのは、酷い行為です。」


「もっと美味しくできますの。」

「なんと?」

「こ、これを更に?」

「そちらの紅茶を一口飲んでから、食べてみてくださいな。」

「ん?これをか?」

「はい、お父様。」

「お母様も、同じように。」

 二人は、言われたように紅茶を一口飲み、再びシュークリームを食べる。

「おぉ、甘みが増した。」

「これは、確かに至高です。」

 ふたりは、紅茶とシュークリームを交互に口にする。

「な、もう終わりか。」

「あら、もうなくなりました。」


「お、お変わりはないのか?」

「私ももう一度味わいたいです。」


「お父様、こちらの世界で対価を払えば、手に入りますわ。」

「対価?」

「これです。キャラウェイはポケットから千円札と数枚の硬貨を取り出して言う。」

「それは、どうやって手に入れたのだ?」

「理沙様のお仕事を手伝って頂きました。」

「なんと。」

「******、それは本当なのですか?」セルフィーがおそらくシャイナの名前を呼んだのだろうが、涼音達はまったく聞き取れなかった。

「はい、お母様、私も同じように理沙様から頂きました。」シャイナも同じようにお札と硬貨を取り出す。

「何をしたのだ?」

「え、森のダンジョンを攻略しました。」

「それだけか?」

「え?はい。」


「つ、キャラウェイ。」

「何ですか、お父様。」

「もう一個食べたい。」

 涼音は奥のカウンターで頭を抱えている。

「******、*********。」セルフィーに至っては完全なエルフ語になっているが、おそらくハイベルトと同じことを言っているのが、シャイナの反応で判る。

 そういう味が存在しない世界の住人に、そんな刺激物を与えるのはどうかって思うけど、色々まずいよねぇ。

「涼音様、あのお二人は何であんなに騒いでいるのですか?」アモナが涼音に言う。

「あんたも体験してみる?」

涼音は、紅茶とシュークリームを用意して、アモナの前に置く。

「これは?」

「まぁ、飲んで食べろ。」涼音はすべてをあきらめて言う。

「はい、仰せのままに。」

 アモナがシュークリームに齧り付く。

「はぅ!」やはりそのままフリーズする。

 暫くすると、二口目を食べるが、ハッとした顔をして、紅茶を飲む。

 そして、又、シュークリームを口にする。

 およそ魔族と思えないような顔をして、アモナもそれを交互に口にする。

「涼音様、無くなってしまいました。」

「そりゃ、食べたからねぇ。」

「あの、今一度食したいのですが。」

「良いけど、その対価は?」

「対価?」

「私の命では?」

「安いな、あんたの命!」

「我は、何度でも復活できるから。」

「ほぉ。」

「?」

「あたしね、魂を完全に消滅できるんだ。」

「へ?」

「その魂を石に封印して、こっちの世界の素材に出来るんだけど。」

「えぇ?」

「それで良い?」

「え、いや、あの。」

「大丈夫、ちゃんとシュークリームを食べてから封印するから。」

「涼姉、それあたしに食べさせてください。」シュワが手をあげて言う。

「ちょ、その場合我は?」

「ちゃんと消滅するから大丈夫。」涼音がサムズアップする。

「あ、あの、ごめんなさい、我慢します。」

「え~。」シュワが残念そうな顔をする。

「先輩は鬼ですか?」

「いえいえ、猫族です。」


「あはは。」桃花がそのやり取りに笑う。

「す、涼音、私が今回ご馳走して良い?」

「え?良いけど、良いの?」

「うん。今回だけ。面白かったから良いよ。」

 そう言いながら、桃花が財布から千円札を2枚取り出し、シュワに渡す。

「シュワさん、今此処にいる人たちの分、買ってきてくれますか?」

「桃花さん、凄く優しいですぅ。」

 そう言うと、シュワは桃花から紙幣を受け取り出て行った。

 涼音は、そんな桃花に千円札を手渡す。

 桃花は、びくりとするが、ニコッと笑ってその千円札を受け取った。


 ハイベルトとセルフィーは何かを考えて固まっている。

 そして、まずハイベルトが動いた。

「理沙殿、足りない素材は無いか?」

 セルフィーもその言葉を聞き言う。

「我らの里でしか手に入らぬ物もあるであろう?」


 理沙は紅茶を口にして言う。

「ん~、ありますが。」

「それは?」

「なんでしょう?」


 理沙は、何かを考えながら言う。

「エルフの羽衣と獣魔の鋼鎧。」

「なっ?」

「そ、それは。」

「我が里の秘宝。」

「私たちが10年かけて織る秘物。」

「「何故その存在を。」」



「勿論、そんな物の対価に、たかが甘味を充てるなど、ありえないですね。」理沙はけらけら笑って言う。

「あたし見てみたい。」詩織が手をあげて言う。

「み、見せるだけなら構わぬが、提供するとなると・・・。」

「私達も、それを対価に提供するのはちょっと・・・。」


「見せてくれるなら、この店に来る都度、シュークリーム3個を10回提供する。」詩織がズビシと言う。

「な、あれを30個?」

「そっそそ、それは1日1個を30日でも良いのですか?」

「30個以内なら、提供条件は問わない。」

「し、詩織様、私は羽衣をお見せするのに同意します。只、私達の里の中だけと言う条件が付きますが。」

「ん、それでいい。」詩織がにっこりとっ微笑む。

「し、詩織殿、我も見せるだけで良いなら、構わぬ。」

「あれは、我が同族が、己の死をかけて錬成する物なので、里の外に持ち出すのは禁忌なのだ。」

「はい、では、お二人とも契約成立でよろしいですか?」

 詩織が満面の笑みで言う。

「判った。」

「問題ないですわ。」

 

 そんなやり取りが終わった頃、シュワが帰ってきた。

「おまちどうさまなのですぅ。」

 シュワが18個のシュークリームをカウンターに置く。

「桃花、分配ヨロ。」涼音はカウンターからボックス席に移りながら言う。

「はえ?、今此処にいるの、何人だっけ?」

「り、理沙姉さんや、しー姉さんにも分けるんだよね。」


 実際には、涼音、理沙、詩織、桃花、ハイベルト、キャラウェイ、セルフィー、シャイナ、シュワそしてアモナの10名だった。

 しかし、シュークリームは18個しかない。

「あたしは1個で良いから。」と桃花が思い分配を始める。

「と、取り合えず、セルフィーさんと、ハイベルトさんに2個づつ。」

「その言葉で、シュワがシュークリームを2個づつ、ハイベルトと、セルフィーの前に置く。」

「あら?」

「おぉ?」

 セルフィーとハイベルトはそれをニコニコしながら受け取る。

「キャラとシャイナさんにも2個づつ。」

「あら、よろしいの?」

「も、桃花、恩に着る。」

 二人も嬉しそうに受け取った。


「あたしは一個で良いよ。」涼音が言う。

「私はいらないよ。」理沙が言う。

「ん~。あたしも良いかな。」詩織が言う。

(あれ~8個余った?)

「あ、シュワさんとアモナさんも2個づつどうぞ。」

「桃花姉。ありがとなのですぅ。」(あれ?呼称が変わってないか?)桃花が思う。

「桃花、いや、桃花様ありがとうなのです。」

「ぐす、童は貰えないのか?」ナーガがいつの間にか現れて言う。

(あれ?さっきいなかったよね?)と思いながら

「ナーガさんにも2個。」と桃花が言う。「ありがとなのじゃ。」

(あと2個かぁ。)

「やっぱり、理沙さんと詩織さんにあげて。」

シュワが詩織と理沙の前に一個づつ置く。

「や、まて、この対価は何じゃ?」ハイベルトが言う。

「え?あ、そうでした。」セルフィーもハッとしながら言う。

「あぁ、そうだな。」キャラウェイもハッとして言う。

「桃花、他のアイテムで良い?」シャイナもンにこにこして言う。

「桃花姉、あたし、涼音の次に忠誠を誓うよ。」

「おい、安いなシュワ。」涼音が突っ込む。

「お~、では童も桃花殿に従属するのじゃ。」

「だから、あんたら安いな!」涼音が飽きれる。

「え?いや、そんなつもりは。」桃花が狼狽して言う。

「桃花、あっちの世界では、施しには対価が必要なんだよ。」涼音が桃花に小声で言う。

「え?そんなに重い事なの?」

「そんなに重い事なの!」

 桃花は一瞬固まるが、直ぐに復帰する。

 そんな桃花を見て、涼音は(桃花って、やっぱりこっち側の人間みたいだね。)と思う。

「え、え~、じゃぁ、皆さん、あ、私が道を間違えそうなときに助言をください。」

「優等生の答え来た~。」涼音が小声で突っ込む。

「ん?どういう事だ?」

「それは、そなたからの疑問に答えればいいという事か?」

「そんなことでよろしいの?」

「判りました、私はこの生続く限り貴女の問いに答えましょう。」セルフィーが言う。

「では我も、同じように答えよう。」ハイベルトも答える。

「私は、私の出来る限りの知識を提供します。」シャイナが言う。

「では、私は、私が御前にいる時、御前を守護しよう。」キャラウェイが言う。


(あんたら、本当に安いな!)涼音が心で突っ込む。

それは、桃花最強伝説が生まれた瞬間であった。



「桃花。」

「なに?」

「あんた、素でやってるよね。それ?」

「ほぇ?素って何?」

「まじかぁ。」

「え?なにが?」

「やばい、このままじゃ主役の座食われるね。」

「え?え?何言ってるの涼音。」

「桃花、恐ろしい娘。」

「なんとかの仮面のパロやめて。」

 ぎゅっ

「ほえ?涼音、何で抱きつくの?」

「桃花分充電。。」

「何それ?何かのCMのパクリ?」

「いや、桃花の天然成分抽出中。」

「なんか、生気が吸われてるみたいだから離れて。」

「やだ。」

 ポカッ。

「痛った~い。」

「桃花酷い。」

「なんか若さを吸い取られてるみたいでヤダ!」

「え~、そんなはず・・・無いじゃん。」

「なに?その間?」

「涼音、本当に吸い取ってるの?」

「え?、いや、若さとかは違うよ。」

「え~?なんかやだ。」

「いや、本当に吸い取ってないから。」

「本当に?」

「桃花の天然成分だけだから。」

「涼音。」

「え?何、怖い顔して。」

「いい加減にしないと、友達止めるよ。」

「す、すびばぜんでじた~。」(涼音が涙目で土下座する。)


やはり、桃花最強伝説なのか?



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