桃花
「え~っと、涼音?」
「なに?」
「森のアイテム探索依頼って幾ら位かかるの?」
「物によるけど、最低5000円からかな。」
「何か欲しいものが有るの?」
「うん、でも、お金かかりそうかな。」
「とりあえず言って見たら」
「うん、「エルフの涙」が欲しいなって。」
桃花が言うと同時に、シャイナが奥の扉から現れた。
「皆さま、ごきげんよう。」
しかし、涼音は話を続ける。
「エルフの涙?、何それ。宝石か何か?」
「ううん、この森にいると言われてる、エルフさんの涙だよ。」
「桃花、エルフって信じてるんだ。」
「今、あた、私の隣に座ってるキャラさんって、守の王なんでしょ。」
「あら~、そうですよ。」
「じゃぁ、きっといるよね。」
「いるいないは別にして、それを何に使うの?」
「魔法のアイテムに使いたいなって。」
「エルフの涙を?」
「うん、水属性が格段に上がるアイテムになるんだって。」
「そうなの?シャイナ?」
「へ?」桃花が涼音の言葉で振り返る。
(うわぁ、綺麗な人。)桃花が思う。
「聞いたことないですね。」
「だってさ、桃花、がセネタだよそれ。」
「え?」
「初めまして、可愛い人。私、エルフ族の「シャイナ」と申します。」
「はぇ?」
「え、え~?エルフの人、本当にいたんだ。」
「私たちが、水と風属性の魔法に長けていることから出たデマでしょうね。」
「と言う事だから、良かったね、騙されなくて。」
「そっか、水属性上げられないのか。」
「なんかあるの?」
「え?あの、実は。」
「うん?」
「幼馴染が水属性の試験で悩んでて、手伝えたら良いなって思って。」
「あ~、それが彼氏?」
「え、いや、違うの。彼氏なんかじゃなくて。」桃花が顔を真っ赤にして挙動不審になる。
「水属性が上がれば良いんですの?」シャイナが言う。
「え?はい。」
「あら、ではこれをどうぞ。」そう言ってシャイナが、矢が入ったケースから、草が編みこまれたものを取り出し、桃花に渡す。
「これは?」
「私が幼い頃に使っていた、魔道具ですわ。」
「おっと、桃花、それ水属性と風属性に100程度の補正が掛かるアイテムだよ。」涼音が鑑定して言う。
「へぇ?いや、そんな物いただけません。」と言って桃花が返そうとするが、
「いえ、私達の子供時代に、訓練で何個も作る物だから、幾らでもあるんですけど。」シャイナがケースから更に数個を取り出す。
「桃花、貰っておけば?」
「え?でも、そんなお金ないよ。」
「対価なんていらないですよ。」シャイナが言う。
「いや、でもそれじゃ。」
「桃花、隣のコンビニで、桃花お勧めの甘味を買ってきて。」涼音が言う。
「え?何で?」
「全てが解決するから。」
「解った、行ってくるよ。」桃花が出て行く。
シャイナはそれを見て、ニコニコしながら涼音に言う。
「あれが青春って言うものですか?」
「そだね、あたしには無縁の物だね。」
カウンターの奥で、シュワが(やれやれ)って顔で涼音を見ているが、涼音はあえて無視をした。
数分後「買ってきましたぁ。」桃花が息を切らせながら入って来た。
「お、おかえり。桃花。」涼音が少し引きながら答える。
桃花は、コンビニ袋から獲物を取り出した。
「おぉ。」
「まぁ。」
シャイナとキャラが同時に声をあげる。
「良く分かんなかったんで、ある物全部買って来たの。」桃花が息を切らせながら言う。
カウンターには、ロールケーキやシュークリーム、ドーナツ、プリン、団子や大福まである。
「これは、昨日食したものだね。」
「えぇ、でも他の物は食べた事が無い物ですわ。」
「す、涼音、これで良いの?」
「シャイナ、好きなもの選んで。」
「あら、ではこの黄色に茶色が薄くかかったのを頂きます。」
「シュワ、お皿頂戴。」
「はいですぅ。」シュワがシャイナの前にお皿を置く。
「シャイナ、これはこれを剥がして、お皿の上でさかさまにして、この爪を折るの。」涼音がプリンの食べ方を説明する。
容器から滑り出るプリンを見て、シャイナが感動する。
「凄いですわ.」
涼音はスプーンをシャイナに渡す。
「これで食べるんだよ。」
言われるままに、シャイナがプリンをスプーンですくい、口に入れる。
「ふわぁぁ。」シャイナが上を向いて感動する。」
「美味しいですわ。」
「す、涼音、私もそれが食べたい。対価は何を用意すれば良いのだ?」キャラが涼音の両肩を持って言う。
「桃花、他に欲しいものある?」
「え?欲しい物?いや、別にないかな。」
キャラはそれを聞いて、桃花に迫る。
「桃花殿、私もそれが食べたいのだよ。何が、何が望みだ。」
「え?いや、別に。」
「武器か?防具か?それとも何かアイテムか?」
「いえ、特に、痛い痛い痛い。」
「あ、すまない。」キャラが桃花の肩から手を放す。
「う~~、私はそれを食べられないのか。」キャラが凄く残念な顔で言う。
「いえ、どうぞ、食べてください。」桃花が言うが、
「対価も出さずに、施しを受けるのは一族の掟に背くので。」
(うわぁ、面倒くさそう。)桃花が思うが声には出さなかった。
涼音は、桃花の表情を読み取って、良い判断だと思う。
「あ、じゃぁ。」桃花が何かを考えついて言う。
「私に、キャラさんの森を案内して下さい。」
「え?」キャラがぎょっとする。
「桃花、何言って。」涼音もうわーって顔で言う。
「ほぇ?駄目だった?」
「いや、まぁ、キャラが一緒なら大丈夫・・だよね、キャラ。」
「・・あ、いや、もちろんだ、全力で守るよ。」歯切れが悪そうにキャラが言う。
涼音は「あー。」って顔をして上を向くが、桃花に言う。「あたしも付いて行くから。」
キャラはそれを聞くと、プリンの容器を手に取り、先程と同じように皿に出し、スプーンですくって口に入れる。
「はぅ~。」キャラも幸せそうな顔で天井を見上げている。
桃花は冷めてしまった、シナモンコーヒーを飲みながら二人を見てニコニコしている。
その横で、涼音はコーヒーを口に含みながら、頭を抱えた。




