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桃花来店

「涼音、お昼だよ。」

「うあ?」桃花の声で涼音が覚醒する。

 その後ろで、出遅れたキャラが手持無沙汰な顔をしている。

「おはよう、涼音。」桃花がニコニコ顔で言う。

「あ~、おはよう。」涼音が寝ぼけ顔で言う。

「あのさ、涼音、相談したい事があるんだけど。」真顔になって桃花が言う。

「なに?」伸びをしながら涼音が言う。

「此処じゃ、ちょっと。」

「おや~、これ関係?」小指を立てながら涼音がにまっとした顔で言う。

「違う。」「いや、違わない。」「いや、そじゃないし。」桃花が挙動不審になる。

(なんだ、この可愛い小動物は。)

「ごめん。」なんか居たたまれなくなった涼音が言う。

「いや、良いの、私が悪いの。」

「ん~。じゃ、後で理沙姉のお店に来て。」

「え?行って良いの?」

「ただの喫茶店だよ。」

「そうなの?」

(どんな認識されてるんだ、あの店?)涼音が思う。

「え~っと、桃花。」

「なに?」

「理沙姉の店ってどんな所だと思ってる?」

「ん~~~~~。敷居の高い高級料亭的な?」

「はい?」

「店長に逆らうと、コーヒー一杯に数万円取られた挙句、再起不能にされるとか?」

「なんだそりゃ?」

「違うの?」

「何処からそんなデマが。」

「ネットで実しやかに語られてるけど。」

「そりゃ、あの店でやらかした奴の仲間が流してるデマだよ。」

「そうなの?」

「最近もあったけど、森のアイテムを狙う馬鹿があの店に来ると、その防衛機能で返り討ちに合うというか何というか。」最後の方は涼音も歯切れが悪い。

「何だ~、もっと怖い所かと思ったよ。」

「違、うと思う、多分。」

「その間が気になるけど、取り合えず分かったよ。」

「じゃぁ、後でお邪魔するね。」そう言うと桃花は弁当を持って教室から出て行った。

「涼音、どうします?」キャラが涼音に声をかける。

「出遅れたねぇ。」涼音が席を立ちながら言う。

「購買の商品無くなってるかもねぇ。」

「す、涼音、私はどうすれば良い?」愛華が言う。

「愛華はお昼ご飯食べて、午後も授業を受ける。」

「え?なんで?」

「愛華にはそれが必要だから。」

「つ!」愛華が何かを察して口ごもる。

「暫くはしっかり勉学に励むこと。」涼音が言う。

「・・・解った。」愛華が力なく答える。

「んじゃ、ご飯買いに行こうか?」涼音が席を立ちながら言う。



いつも通りの買い物を済ませ涼音達は理沙の店(道楽亭)に向かう。

「でも、本当にキャラは授業は良いの?」

「はい、授業内容は凄く興味深いですけど、涼音様と一緒にいた方が何倍も濃いので。」,

「濃いってなんだよぉ。」何故か涼音は脱力して言う。


店(道楽亭)に着くと、早速理沙姉の依頼があり、涼音はキャラとナーガと一緒に森に潜ることになった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(えと、この辺だよね。)っと思いながら桃花が店を探す。

大通りを何往復かするが、なかなか目的の店が見つからない。

携帯のナビはここを示している。

(おかしいなぁ?何で見つからないんだろう?)

 そう思った時、急に道の一部が気になった。

(あれ?さっきまでこんな道なかったよね?)

 大通りにぽっかりと空いた区間。

 その空間は木々が生い茂り、大通りからは奥が見えなくなっていた。

(こ、ここかなぁ?)そう思いながら桃花がそこに一歩踏み出す。

 すると、今まで見えていなかった店の扉が目に入る。

「ふぇ?」思わず変な声が出る。

 ふと見ると、扉の横には「道楽亭(愚者の頂)」と書かれた看板が見える。

「こ、此処で良いんだよね?」誰に言うでもなく桃花が独り言を言いながらその扉に向かった。

 

カランコロンと言うドアベルの音が響き、ドアが開く。

桃花は、恐る恐る中に入った。


「いらっしゃいませですぅ。」カウンターの中からシュワが言う。

 桃花は、顔を引きつらせながら店内に一歩を踏み出した。

(あ、本当に猫耳の人いるんだ。)桃花が思うと同時に目の前にシュワの顔があった。

「ひっ!」桃花が硬直するが、シュワが言う。

「涼姉の匂いがしますぅ。」

「涼姉のお友達ですかぁ?」


「あの、あた、いえ、私は涼音さんのクラスメートの「春野桃花」って言います。」

「涼音さんに聞いて、こちらに訪問させていただきました。」桃花が引き攣りながら言う。


「あ~、はい。涼姉から聞いてますぅ。カウンターにどうぞ。」そう言うとシュワは一瞬でカウンターの中に戻る。

 桃花は「お邪魔します。」と喫茶店に入った時に言う言葉と違う言葉を発してカウンターの席に着く。

「この店はですね、皆様がこのお店にある材料を使って、自分で好きなようにするところですぅ。」シュワが説明するが、いまいち要点がぼけている。

(?)桃花が困った顔をすると。

「あたしで良ければ何かお作りしますぅ。」とシュワが桃花に言った。

「え?あ、じゃあシナモンコーヒー下さい。」

 シュワが固まる。

「え?シナモンコーヒー?」

「はい。」

「あの、えと、あれ?。」シュワが挙動不審になった。

「つ、作った事無いですぅ。」シュワが涙目で言う。

「あ、じゃあ他の物でも。」と桃花が言うと、カウンターの奥で突っ伏してた詩織が起き上がる。

 桃花は、今迄気付かなかった存在に驚くが、詩織が言う。

「豆は何が好み?」

「え?豆?」桃花が思うが、コーヒーの種類だと気付く。

「何でも、いえ、お任せで。」

「ん~。」と言いながら詩織がカウンターの中に入る。

この店のオリジナルブレンドの豆をミルに入れると、がりがりと挽き始める。

 豆を挽き終わると、ドリップを用意してそこに挽いた豆を無造作に入れる。 

お湯はいつでも沸いているので、それを挽いた豆にかけ、少し蒸らした後で、2杯分のコーヒーを煎れると、レジの前に置いてある自分のコインストックから、必要分のコインをとると、レジを開けてコインを投げ込む。


そして、棚からシナモンスティックを取り出すと、コーヒーを乗せた皿の脇において桃花の前に置く。

「シナモンコーヒーお待ちどうさま。」

 そう言うと、詩織は自分用に淹れていたコーヒーカップを持ち、今までいたカウンターの奥の席に戻り、カップからコーヒーを一口飲むと、そのまま突っ伏した。


「あ、ありがとうございます。」と言う桃花に、詩織はカウンターに突っ伏したまま、左手をひらひらとして答える。

「え?代金は?」桃花が口にすると。

「シー姉が払いました。」シュワがカウンターの奥で洗い物をしながら言う。

「え、いや、それは悪いというか。」

「涼姉のお友達なので、今回は奢りですぅ」シュワが言う。

 桃花は暫く考えるが、「いただきます。」と言ってシナモンスティックをコーヒーに入れかき回す。

「え~?シナモンコーヒーって、それだけなんですか?」シュワが言う。

「お店によっては、粉を入れるところもあるんですけど、此処は本格的なんですね。」桃花がコーヒーを口に含みながら言う。

「べ、勉強になります。」シュワはそう言うと、エプロンのポケットから小さいノートを取り出し、何かをメモ書きする。

 桃花はコーヒーカップを両手で持ち、店の中を見渡した。

 入り口から向かって左に、L字型のカウンターに6席。

 左側には4人掛けのテーブル席が3個。

 店の突き当りには、開け放たれた扉があり、その奥にも部屋があるようだ。


カウンターの中には猫耳の女の子。

「あの。」桃花がシュワに声をかける。

「はい、何ですか?」シュワが洗い物の手を止めて答える。

「そ、その耳は本物なのですか?」

「どうぞ、触ってみてください。あ、乱暴にしないで下さいね。」

 その質問に、シュワは慣れた様に答えて、カウンター越しに頭を桃花の方に差し出して言う。

 差し出された頭に、桃花は一瞬戸惑うが、好奇心が勝ち、その耳を触る。

「ふわぁ。」

「へやぁ。」


二人から、同時に変な声が上がる。

「ほ、本物なんだ。」桃花が呟くと、本来の耳がある場所に手を移動させた。

 しかし予測の通り、そこには髪の毛以外は存在していなかった。 

 桃花は無心でシュワの耳を触り続けた。

「あの、あの、もう良いですか?」シュワが限界を感じて桃花に言う。

「へ? あ、うわ、ごめんなさい。」顔を真っ赤にした桃花が言う。

「テクニシャンですぅ。」

「へ、いや、家で猫を飼ってるんで。いや、あの、ごめんなさい。」

「良いんですよぉ。気持ち良かったですぅ。」シュワが頬を染めながら洗い物に戻る。

 桃花は何か居たたまれなくなって、コーヒーを口にする。


「カッチ、コッチ、カッチ、コッチ。」壁にかかった、古い時計が規則正しい音を出している。

(なんか、落ち着くな。この店。)桃花が,最初と同じように、両手でカップを包みながらコーヒーを口にする。

(このお店、好きだな。)桃花が思った時、店の扉から涼音が入ってきた。

「ただいま~。」

「にゃ、襲撃のタイミングがずれたにゃ。」カウンターの奥でシュワが言う。

 桃花は懐かしい顔を見て、手を振る。

しかし、涼音の後から、先程教室で自らを「守の王」を告白した少女と、見た事が無い少女を見て固まった。

(あの女の子、存在が駄目。)(でも、涼音が一緒にいる。何故?)桃花は自分の危機察知能力と涼音の安心しきった様子にパニックになっていた。

「あ~、桃花。大丈夫だから。」

「?」桃花がその言葉を聞いて、我に返った。

「うん。それでいいよ。」涼音が言う。

 桃花は、力を抜いて感じる。

(あの娘はマジでやばい感じがする。化け物?)

「今回の依頼は面倒だったよぉ。」危険を感じている桃花の前に、涼音が座る。

「シュワ、コーヒー淹れて。」

「はいですぅ。」

「ご主人様、理沙様の依頼の品を届けてくるのじゃ。」

「あ、よろ~。」涼音が、桃花が脅威を感じている少女に言う。

「あら、桃花様、ご機嫌ようです。」

 守の王と吐露した少女が桃花の横に座る。

 桃花が硬直する。

(やばい。マジやばい!)

(涼音の人外の規格は知ってる。)

(守の王の伝説も聞いたことがある。)

(カウンターの奥には獣人。)

(そして、奥に消えた訳の分からない存在。)

(あたし、この店にいちゃ駄目な存在だよね。)

 桃花が又フリーズしそうになった時、涼音が桃花に言う。

「相談事って何かな?」

「へ?、いや、あの。」

「渡してきたのじゃ。」先程の脅威が涼音に飛び付く。


「ひっ。」桃花が硬直する。

 涼音は、そんな桃花を見て、ナーガに言う。

「ナーガ、そこにいる私の「大親友」の桃花が、あんたを怖がってるから、自己紹介する!」

 ナーガはその言葉に反応し、桃花を見ると満面の笑みで言う。

「我は、ご主人様に身も心も捧げた、龍のナーガなのじゃ。以後よろしくなのじゃ。」


「龍?」桃花が引き攣って言う。

「一応、此処で元の姿にならないように言ってるけど、何かあったら、あたしなり、そこで寝てるしー姉なりが対応するから、町には被害出ないと思うよ。」

「いや、そんな事じゃなくて、そうじゃない。涼音、龍って神クラスだよね。」

「ナーガは修行中だから、まだそこまで到達してないよ。」

「頑張るのじゃ。」


桃花は天井を見上げる。

(あたし、絶対に場違いだよね。)

「桃花、どーしたの?」涼音が心配しながら桃花に言う。

「涼音、この店、高級料亭より敷居高いよ。」

「え~。そかな?」

「涼音を含めて、いる人の存在力高過ぎ!」


「桃花って言ったっけ?」

詩織がカウンターに突っ伏したまま言う。

「あんた、巫女だね。」

「へ、私が?」

「巫女?何それ、レアスキルじゃない。」涼音が桃花の肩を掴んで言う。

「え、いや、そんな事言われたの、初めてなんですけど。」

「シー姉が言うんなら、その通りなんだろうけど、見てみようか?」涼音が桃花を看破する。


春野桃花 性別女 歳16歳 属性水 巫女適性 巫女レベル0

水魔法 レベル2 風魔法 レベル2

聖魔法取得可

使用可能スキル 鎮魂、


「あー、覚醒してないけど、巫女適性あるよ。」涼音がニコニコ顔で言う。

「そ、そうなんだ。」

桃花は困惑して思う。

(相談事、まったく進んでないよ。)


あー、やっと50話になりました。

遅筆ですね、ごめんなさい。

片手間でやっているので、長い目でお付き合い下さいませ。



ちょっと毛色の変わった物も投稿しています。

ベースはかなり前に作った物なので、古臭さも感じますが、お目汚しに。。

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