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ダンジョン

リアルが忙しい。

こんな事じゃ駄目だと判っていても、どうにもこうにも。。。

シャイナは耳を隠すために被っていた帽子と、パーカーを脱ぎ、いつもの軽装になった。

キャラウェイも、前と同じふんわりとした服になっていた。

シュワに至っては、道楽亭の制服のゴスロリ風メイド服である。


(どうでもいいけど、ダンジョンに赴く格好じゃないね。)そう思う涼音も、未だに学校指定のジャージ姿であった。



涼音を先頭に、四人は森の奥へと進んでいく。

そして、特に何事もなく境森のダンジョンの入り口に着いた。

(ここまで何も無かったのが不気味だけど、守の王の威光ってことで納得しようか。)涼音がそう思う。

実際、出てきたのはそういう威圧の影響を受けない下級の存在ばかりであった。

それらすべてが涼音の封魔石で封印されたのは言うまでもない。


境森に来て、涼音がふと疑問に思う。

(あの時、あたしを追い詰めたのは誰だろう。)

涼音はキャラウェイをじっと見る。

キャラウェイはそんな涼音の視線に気付き、にっこりとほほ笑んだ。


「ねぇ、キャラ。」

「なんでしょう?」

「前にここで、あたしが死にかけたの、キャラが相手だった?」


キャラウェイは「んー。」と考えて「私は違うと思います。」と答える。

「私、此処の担当じゃなかったですから。」

(担当区域があるのか?)そう思いながら涼音が更に問う。

「ひょっとして、ハイベルト様?」

キャラウェイはまた「んー?」と考えて言う。

「お父様でもないですね。」

(な、じゃあ誰だよ?)と言う思いを飲み込んで涼音が言う。

「ふ~ん、じゃあ良いや。」


「お役に立てませんで、申し訳ございません。」

「いや、あたしが未熟だっただけだから。」右手でほほをポリポリと掻きながら涼音が答える。

(森の中での出来事は、自己責任が基本だもんね。)

 と思った時に涼音は気が付く。(あれ?そう言えば、あの時、真紀姉が封印したっけ。んじゃ、二人とも違うね。納得。)


「さて、行きますか。」涼音が伸びをしながら言う。

「はい。」

「ええ。」

「ほーい。」

三人がそれぞれ答える。


涼音達はダンジョンに足を踏み入れる。

(おや、意外に整備がされた処だね。)

ダンジョンの床や壁の造りを見て涼音が思う。

床は、まるでレンガを敷き詰めた様に整備されている。

壁も然り。

「これは、高等種の守るダンジョンみたいだね。」涼音が独り言のように呟く。

「そのようですわね。」キャラがそれに答える。


「そうすると罠とか多そうだよね。」

「少し憂鬱になってきた。」涼音が言うと同時に「わきゃ。」シュワが変な声を出す。

「んー?」涼音がシュワを見ると、シュワが震えながら言う。

「踏んじゃいました。」

涼音がシュワの足元を見ると、床が少しだけ凹んでいる。

「シャイナ、キャラ、先を急ごう。」涼音は二人に言う。

「な!」

「助けてくださいよぉ。」シュワが涙目で言う。


「えー。」

「森の中では自己責任でしょう?」涼音が虐めっ子の顔で言う。


「三日分のおやつ差し上げます。」シュワが必死に言う。

「五日分。」涼音がニコニコして言う。

「解りましたぁ。」シュワが叫んだ瞬間、涼音がシュワを抱えてその場所から数メートル飛ぶ。

その瞬間、シュワがいた場所に、通路の両側から無数の矢が飛来する。


「踏んで即発動する罠じゃなくて良かったね。」

涼音がシュワに言う。

「肝に銘じます・・・。」


涼音は「んー。」と考えると呪文を唱える。

「光あれ。」

先の戦でアンデットに有効だった呪文だが、罠やギミックなどの識別にも使える便利な呪文である。

少し魔力を押さえたので、涼音の数メートル前にテニスボールほどの光りが輝いている。

その光が当たった、通路のあちらこちらが、淡く光っている。

「あう~、これなら楽勝です。」シュワが言うが

「すべてを見破るわけじゃないからね。」涼音がくぎを刺す。


それでも、その効果はてきめんであった。

4人は罠やギミックに引っかかることもなく、数階層を攻略していた。


「ん?」その階層に下りた時、涼音やシャイナがそれに気づく。

キャラウェイも詩織に貰った王笏を構える。


「周りの魔素量が明らかに変わったね。」涼音が言うと同時に

「キシャァァ!!」岩の影から、数体のオークロードが戦斧で攻撃してきた。


しかし、涼音は慌てる様子もなく、オークロード達に石を指で弾く。

石がオークロード達に当たった瞬間、オークロード達は自身の周りに現れた結晶に取り込まれて封印される。


「相変わらず凄いです。」シュワが封魔石を拾いながら言う。

「無駄な体力使いたくないからね。」涼音が涼しげな顔で言う。


シャイナとキャラウェイは顔を見合わせ、(やっぱりこの人達を敵に回しちゃダメだね。)と目で語り合う。


そして、やけに立派な扉の前に一行がたどり着いた。

「いかにもですね。」シャイナが言う。

「階層から考えて、フロアボスではないでしょうか。」キャラが言う。


「まだ先は長いかぁ。」涼音がうんざりとした顔で言う。

「シュワ、開けて。」


「え~、あたしですかぁ?」と言いながら、シュワは躊躇せずにその扉を開ける。

途端に流れ出る強力な波動。

「ぴや!」シュワが変な声を上げて挙動不審になる。

その尻尾は凄く膨れている。

「あの、あの、あたしこれ以上駄目です。」

その場でへたり込みながらシュワが言う。


「?」

涼音はキャラも足ががくがく震えている事に気付く。

「涼音、此処はいけません!」キャラが言う。

その扉の向こうは回廊になっていた。


シャイナはその奥を凝視しながら言う。

「凄い存在がいますね。」


しかし、涼音があっけらかんと言う。

「えー?そうかなぁ?」


「はい!」

シャイナが頷きながら言う。

「今までに、会った事も無い存在です。」


「えー?そうなんだ?」

「キャラとシュワはそこで待ってていいよ。」


そう言いながら涼音がそこにすたすたと入っていく。

シャイナもそれに続く。


しばらく歩くとサッカーコート4面分ぐらいの広場に出た。

その中央には、4階建てのビル程の高さの金剛仁王を模した石像が2体立っている。

「あれ、絶対動くよね。」

「デフォですわね。」

「凄い存在って、あれ?」

「いえ。更に奥です。」


「んじゃ、ちゃいちゃいと葬っちゃいますか。」涼音が腰の袋から竹筒を数本取り出しながら言う。

「ふふふ、相変わらずですねぇ。」と言いながらシャイナは弓矢を取り出し、その矢に魔法を流し込み始める。

「どっち行く?」

「私は吽にします。」

「んじゃ、あたしは阿ね。」

涼音はそう言うと、自身に隠形をかけて走り出す。

一瞬で目の前から消えた涼音を感じ、「流石ですね。」と呟きながら、シャイナは更に時限式の魔法を矢に付与して、吽の仁王像の眉間目掛けて矢を放った。

普通の矢より数倍速く飛んだそれは、像の眉間に見事に突き刺さる。

そして絶対零度の魔法が発動して、像の頭を瞬時に凍らせる。

吽の仁王像は、攻撃を受けた事を察知して動き始めるが、時間差で発動した爆炎の魔法により、凍った頭部が爆散して動きを止める。


次の瞬間、阿の仁王像の口の中と両脇、そして股間で爆発が起こる。

涼音の竹筒爆弾で、阿の仁王像は動く間もなく瓦礫に変わっていた。


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