再び森に
「いやーまいった。」
理沙が部屋の奥から出てきて言う。
涼音はやれやれと思いながら、理沙に問う。
「何が必要?」
理沙はにこにこしながら言う。
「「境森」」に出来たダンジョンのコアが必要かな。」
(おっと、さり気なく高難度のクエストを振ってくれるよ。)
涼音は、背中にヒヤリとした感覚を感じながら思う。
あの日、死を覚悟した場所。
真紀姉を置いてきた場所。
ジョブチェンジした今なら、通用する場所かもしれない。
でも、同じ轍は踏みたくないな。
そう考えていると
「そこにいるメンバーなら楽勝だよね。」理沙がニコニコして言う。
いやいや、エルフの国の王女と獣魔の国の王女を手駒にしちゃいますか。
(いやマジで駄目だよね。)
(守の王ってそもそも被攻略対象だよね。)
でも、シャイナもキャラウェイもニコニコしながら用意してるし。
「お足が要るんでしょ?」と理沙が言う。
(理沙姉、今の若い子はきっと意味わかんないですよ。)と涼音は思ったが、口に出さずに言葉を飲み込んだ。(口に出したら・・ブルブル)
「はぁ。」涼音がため息をつきながら二人を見る。
「涼音、何時でも行けますよ。」シャイナがニコニコしながら言う。
「私も大丈夫だ。」キャラウェイが言う。
「対価を得るための手段なのだろう?」
「キャラ。」涼音が言う。
「今あんたを討伐すればあたし達、数レベルレベルアップするけど。」
「やっっちゃっていいかな?」
キャラウェイは愕然とする。
「え、え?」
「ちなみに、シャイナを狩っても同じ経験値が手に入るけど。」
それを聞いたシャイナは身構える。
しかし、涼音がシャイナに言う。
「やらないから。」
「ちなみに、あんたらがあたしを討伐しても同じ経験値が入るから。」
涼音が言う。
「三すくみって事で良いかな?」
キャラウェイもシャイナも微妙な顔をして涼音を見ている。
「つまり、あたし達、森の中じゃお互いが討伐対象になるんだけど。」
「共闘するって事で良い?」
するとキャラウェイが涼音の手を取って言う。
「先の戦闘を考慮すると、私は涼音に蹂躙されると思います。」
シャイナもそこに手を添えて言う。
「きっと私も蹂躙される立場ですね。」
(いや、蹂躙て何だよ。)
「あんたらの中であたしってどういう立場よ。」と涼音が呟くと
「食物連鎖の頂点ですね。」横からシュワがしれっと言う。
「いやいや、じゃあ毎回あたしに攻撃仕掛けてくる、あんたは何者だよ。」
「チャレンジャーって事で。」シュワが言う。
「ズビシ!」
「痛った~い。」
涼音がシュワにデコピンをくらわす。
「食物連鎖の頂点と分かっていて、攻撃仕掛けてくるって、無謀以外何物でもないよね。」
「いや、ひょっとするとってこともあるじゃないですか。」シュワが言うと
「ゲシッ。」
涼音がシュワにに拳骨を落とす。
「マジで痛いです。」シュワが涙目で言う。
「それで済んでいるって事を理解しようか?」涼音がシュワを見て言う。
「うぐぅ~」シュワがジト目で涼音を見る。
「それじゃ行こうか。」シュワを無視して涼音が言う。
「マジで酷いです。」シュワが鼻を啜りながら荷物の入ったバックを担ぐ。
「あんたも来るつもり?」涼音がシュワに言う。
「え?行っちゃだめですか?」
「いや、別に良いけど、入れないはずの森にちょいちょい入ってない?」
「あー、そういえばそんな設定有りましたね。」
「設定かよ。」
(きっと、理沙姉かしー姉が作ったんだな。)
「ふぅ、良いよ行こう。」涼音はあきらめて言う。
「そういえば愛華は?」もう一人の存在を思い出して、涼音がシュワに問う。
「理沙さんにお使い頼まれて、出ていったきりです。」
「そうか、まだパシらされてるかー。」
(良い経験値稼ぎになると思ったんだけど。)
「それじゃ。」
「行きましょうか。」キャラとシャイナの言葉で一行は森に向かった。
「シャイナは一度こっちに来てるけど、キャラは初めてだよね。」
「そうですね。」
(大丈夫かな。)涼音が思う。
(森に拒絶されないと良いけど。)
森の入り口に着いた。
涼音は念のため保護を唱える。
全員を障壁が覆う。
「キャラ、行って見て。」
キャラウェイに涼音が言う。
キャラウェイはこくりと頷くと、森の境界に進んだ。
その瞬間、キャラウェイが眩しさを感じる。
しかしそれだけで、森の拒絶は感じられなかった。
涼音は理解する。
「正攻法で森に挑んだ場合、拒絶は無いんだ。」
キャラウェイは自身の状態を確認している。
「特に問題は無いようですね。」
「ふーん。森って結構寛容なんだ。」涼音が思うが、理沙姉がこのメンバーで森に入ることを特に何も言わなかった事を考えると、理沙姉はきっと知っていたんだろうな。と涼音が考える。
シャイナも特に影響を受けずに森に入ることができた。
「じゃぁ、あらためて、行こうか?」涼音の問いに二人は頷いた




