そして道楽亭で
「いや、知らないし。」
涼音が拒絶する。
「自己責任でしょう?」
「い~え。責任取っていただきますわ。」
「あら~、そうですよね。」
キャラとシャイナがニコニコと涼音を見る。
「ふぅ。」とため息をつくと涼音が続ける。
「解った。」
「今日二人が帰った後に、しー姉に頼んで陣を念入りに消してもらおう。」
「え?」
「そんな!」
キャラとシャイナが同時に涙目になる。
「どうして、そのような酷いことを・・」
「だって、しょうがないじゃない。ジャンキーを治すには、隔離して禁断症状を克服してもらわないと。」
やれやれと言いながら肩をすぼめる涼音に二人が縋る。
「う、嘘です。責任取れなんて言うのは嘘です。」
「そうですわ、ちょっとした戯言です。」
「本当に?」涼音は薄眼で二人を見る。
「「こくこく」」二人が同時に頷く。
「・・ふ~ん、じゃあいいや。」涼音が口元を上げて言う。
「シュワ、二人に「あれ」あげてくれる?」
「はいです~。」
シュワは冷蔵庫から涼音に言われたものを取り出してキャラとシャイナの前に置く。
「これは?」シャイナが言う。
「岩のような見た目だが。」キャラが言う。
「どうぞ、召し上がれ。」涼音がニコニコしながら言う。
シュワは「はふ~。」と思いながら涼音を見る。
その視線を感じて、涼音は凄く悪い顔でシュワに目配せする。
シュワはそれを察し、店の奥にそーっと引っ込んだ。
「涼音。」キャラが言う
「これはどうやって食べれば?」
「いや、普通にがぶっといっちゃって良いよ。」涼音が普通に答える。
シャイナとキャラウェイはお互いに目配せすると、恐る恐るそれを手に取った。
「意外と軽い、」キャラが言う。
「では。」シャイナがそう言うと二人が同時にそれに噛みついた。
「「!」」
「こ、これは!」
「う、うおぉぉ」
シャイナとキャラウェイが同時に叫ぶ。
「こ、この中から出てくる甘い物は・・・」
「ねっとりとして、でも舌に絡みつく芳醇な甘さ。」
「「美味しい(すぎる。)」
二人はそれを貪る。
涼音はそれをにやにやしながら見守っていた。
(シュークリームの甘さに理性を奪われたかな?)
涼音がそう感じながら更に意地悪く言う。
「やっぱり、陣は消そうかな。」涼音が虐めっ子の顔で言う。
シャイナは号泣しながら。
キャラウェイは涼音の靴に額を当てて。
「「涼音様、お慈悲を、お慈悲を~。」」
そう言いながら涼音に二人が縋りついた。
涼音は「脅しすぎたかなー」と思いながら、すっきりとした顔をしていた。
「涼音さん、「ドエス」です。」シュワがぼそりと言ったが、涼音には聞こえていなかった。
(それだけ味に疎いと、甘みの刺激は凄いよね。)涼音が内心でにっこりと微笑みながら、足元に跪く二人を見る。
「やだなぁ、冗談に決まってるじゃない。」涼音が言う。
涼音の足元で、パアァっとした顔をして、二人が見上げる。
「「本当ですか?」」と問う二人に
「やだなぁ、うちら友達だよね。」と答える涼音。
シャイナとキャラは涼音の足元でひれ伏している。
すると
「涼音。」カウンターで突っ伏した詩織が言う。
「すごく意地悪。」
「はぅ。」その言葉に涼音が反応する。
(確かに悪戯が過ぎた。)涼音が思う。
「ふぅ。」っと息を吐くと涼音が言う。
「ごめん、キャラ、シャイナ。」
「今までのは冗談。」
「挑発に乗って、調子に乗りすぎた。」
「いえ、私こそ調子に乗ってました。」
「私も非礼を詫びよう。」
三人が顔を見合わせる。
そして、誰からともなく笑い声が上がる。
「「「ああははははは。」」」
見守っていたシュワもふっと緊張を説いた。
こっそりとシュワのレベルが上がっていた。
ラスボスクラスのいざこざに巻き込まれた特典って事らしい。
「心臓に悪いです。」シュワの心の叫びが聞こえた。
「でも、本当にまずいのだよ。」キャラが言う。
「この食物を手に入れる対価が私達にはない」
「学校の購買と言う処で、それらの食物を手に入れるのは理解した。」
「しかし、先程涼音が対価として渡した物を私は持っていないのだよ。」
「私は、その学校にすら行けません。」シャイナが言う。
シャイナはエルフ特有の耳の形状が、明らかに人間と違うので、今の人類の認知度では表立った行動は出来なかった。
キャラウェイのように完全な人化が出来れば良いのだが、エルフにはそのような能力はなった。
最初に道楽亭に訪れたように、フードを被っていれば、ある程度の行動は出来るかもしれないが、それでも学校に登校するのは無理だろう。
あるいは、涼音の教室の生徒なら、その存在を受け入れてくれるかもしれないが、世間一般ではまだ人以外の存在を受け入れるのは厳しいだろう。
(いっそシュワのように周りの人達に認めさせて、済し崩しにするか。)と考えるが、(この町の中だけで収まりそうもないよね。)と思い自分で却下する。
シュワは、本当に小さい時から、理沙姉があちこちに連れ出してこの町の人達と触れ合わせた。
更にテレビの取材にも普通に応じて、認知度を高めた。
だから皆が認知している。
でも、今まで認知されていなかった「エルフ」だとどうだろう。
表面上は大丈夫かもしれない。
でも、そう言う存在を真っ先に否定する輩が絶対にいる。
時間をかければ説得できるかもしれないが、その時間がもったいなく感じるので却下。
(シャイナのお使いはシュワに任せれば良いか。)
涼音が思う。
「涼音、対価を得るにはどうすれば良い?」キャラウェイが涼音に言う。
涼音は少し考えるがキャラ達の後ろを見て言う。
「大丈夫みたいだよ。」涼音はそう答える。
涼音さん、意外に黒い。。
まるで昔のピカチューのようだ。。。




