決戦4
「まずいね。」詩織が言う。
「聖属性の不死者って。聖属性効かないって事だよね。」
「厄介な存在になったね。久美子!」理沙が悔しそうに言う。
「私たちの中で一番の常識人だったのに。」
「一番やっちゃいけない事だよ。」
「死者は・・」
「現世に留まっちゃいけない!」
「まして・・そっちと繋げちゃだめだよ!」
理沙はそう言いながら不死の王女に向かって爆炎魔法を放つ。
しかし、不死の魔王が自身の陣から、およそ死者とは思えぬ速さで不死の王女の元に飛び、理沙の魔法を、異様と思える長さの刀で無効化する。
不死の魔王は不死の王女の肩を抱き、不死の王女の頬に口付をして理沙たちを横目で睨む。
『駄目だよ、僕の愛しい人に、そんな無粋な魔法なんか撃っちゃ。』不死者にしてはやけに流暢な言葉で理沙に言う。
『彼女は僕の理解者なんだから。』
「な。」理沙は不死の魔王を見て愕然とした。
長髪の髪を頭の後ろで無造作に結んだその顔は、不死者らしく青白くはあったが、目鼻立ちが整い、いわゆるイケメンと言われる部類の顔をしていた。
しかし真紀が声を荒げて叫ぶ。
「嘘だ!」
「久美子はガチムチがタイプだった!」
(おおぃ、この人何言い出した?)涼音が心で突っ込む。
「貴方みたいななよっとした男に、久美子が惚れるわけないじゃない!」
(うわぁ、死んだ後に性癖を暴露されるって。)涼音が顔を覆う。
久美子は虚ろな瞳で真紀を見る。
「久美子!、まじで貴女、何してるの!」真紀が悲痛な叫びをあげる。
しかし、久美子は全く動かなかった。
その刹那、ハイベルトが死角から不死の魔王に攻撃を仕掛ける。
ガキン!
金属と金属が弾きあう音がする。
不死の魔王が刀でその攻撃を防ぐ。
ハイベルトは弾かれた刃をその刀の背の部分に置き、そのまま滑らせるように不死の魔王に向かい攻撃を続ける。
『笑止!』不死の魔王はその攻撃を刀でいなすと、ハイベルトにカウンターを叩き込む。
「ぐおぉ」ハイベルトがその刃を、手に持った剣で、その威力を地面に受け流して耐える。
「くっ、浅かったか。」
『ふふふ、やりますねぇ。』
不死の魔王は、ゆるりと陣からハイベルトの方に向かい出た。
『死角からの不意打ち、嫌いじゃないですよ!』
その言葉と同時に、不死の魔王がハイベルトに突進する。
「ぐぉ!」
一瞬で間合いに入られたハイベルトは、それでもその切っ先を剣でいなす。
『ふふふ、遅いですよ。』
不死の魔王は、円を描くように縦から、横からと連続で攻撃する。
ハイベルトは必死にその攻撃を防ぐが、不死の魔王の間合いの深さと、その攻撃の速さをかわし切れず、あちこちに切り傷が出来ていく。
「ハイベルト様の直剣では、不死の魔王の剣と相性最悪だね。」理沙が呟く。
「魔王の剣は、いわゆる刀だからねぇ。」詩織も賛同する。
「直線攻撃と、円。いや、球の攻撃じゃ、じり貧にもなるねぇ。」
ぺこん!
「痛~い!」理沙のデコピンが詩織に飛ぶ。
「落ち着いて解説してないで、対策考える!」理沙が詩織に言う。
「あい。」詩織はそう言いながら、地面に陣を描き始めた。
それを見て、理沙と涼音が動いた。
『ははは、それそれ、どうしました?』
不死の魔王の攻撃が続いていた。
ハイベルトの両腕は、無数の切り傷で血だらけになっていた。
「ぐう!」
『さようなら!』そう言いながら、不死の魔王が必殺の一撃をハイベルトに叩き込もうとする。
ズパン!
その刹那、不死の魔王の後頭部に、炎魔法がさく裂した。
「後ろががら空きだよ。」
理沙が無詠唱で一番魔力の少ない魔法を放っていた。
不死の魔王は、刀で魔法を防いだが、髪の毛が少し焦げていた。
理沙は、魔法を連発する。
不死の魔王は、鬱陶しそうにその魔法を刀で払う。
しかし、充分な時間であった。
涼音は、ハイベルトを、不死の魔王から離した。
そして、ハイベルトの剣を引っ手繰ると、詩織に向かい放り投げた。
「な、な?」ハイベルトは突然の事に理解できずに狼狽える。
そして、涼音はハイベルトに回復の呪文を唱えると、「回避の腕輪」をハイベルトの腕にはめた。
詩織はハイベルトの剣を受け取ると、地面に描いた陣の上に置き、念を込める。
一瞬の旋光の後、剣は刀になっていた。
詩織はその刀を持つと、涼音に投げる。
涼音はその刀を後ろ手で受け取り、ハイベルトに渡しながら言う。
「不死の王に対抗できる刀です。」
ハイベルトは、傷の癒えた手でその刀を受け取ると刀を持った手を振る。
「ヒュオン!」と言う風切り音がする。
「軽いな!」ハイベルトが満足そうに言う。
「どれ、再戦と行こうか!」
ハイベルトはそう言うと、理沙の魔法を捌いている不死の魔王に再び死角から突っ込んだ。




