不死の王
「不死の王」は自身が発動した極炎魔法を、何の感動もなく虚ろな瞳で見ていた。
受けたものが一瞬で消し炭になるどころか、灰になって消滅する威力の魔法だが、彼にとっては通過点の魔法でしかない。
魔法の効果が切れないのは、その渦中にいる対象が消滅していないからだと知っている。
「ククク、愚カニモ抗ッテイルノカ。」不死の王が呟く。
「魔力ガ徐々ニ切レテ行キナガラ、ソノ身ヲ焼カレル苦シミヲジックリト味ワウガ良イ!」
どの位で中の者たちの魔力が切れるのかを楽しんでいる時、不意に目の前に何かが現れた。
それは、幾重にも張っている結界を、それが持っている刃で容易く切り裂き、身構えるより素早く、その刃を突き立てて来た。
「物理攻撃ナド我ニハ効カヌ。」と言った言葉と同時に自身の頭の中にその刃を感じ取る。
「?」(何ガ起キタ?)と思うと同時に頭の中で二つの魔法が発動する。
自身の存在が何かに焼かれているのを「不死の王」は感じる。
(何故ダ、何故私ノ存在ヲ消セル?)
(魔道ノ真髄ニ到達スルタメ、生ヲ捨テ意識体ニナッタ私ヲ!)
(何故消滅サセラレル・ノ・ダ・・・・)
そう考えながら「不死の王」の意識が消えていった。
「不死の王」は、抗うこともなく愛華の刃を頭部に受けた。
瞬時にシャイナの炎魔法と涼音の聖魔法が刀から発動する。
「ギャ!!!。」一瞬だけ「不死の王」が断末魔の声を上げると塵になって消えていく。
「あっけない。いや、それだけあの二人の力が凄いって事か。」愛華が考えながら刀を鞘に納め、二人がいた場所をを見る。
(いや、いないし!)愛華が思う。
(どこ行ったんだよ?)
きょろきょろとあたりを見回すと「不死の王」が朽ちた場所できゃいきゃいしていた。
(何やってんの?あの人たち。)愛華が思う。
涼音とシャイナは当然と言うように「お土産」を吟味していた。
「ドラゴンゾンビの魔石見つけました。」シャイナが言う。
「「不死の王」の杖と装備が尋常じゃないよ。」涼音が言う。
「「魔道の杖(持っているだけで、マジックポイントを消費することなく極限魔法も発動できると言われている杖)」って伝説じゃなかったんだ。」。
「それに「回避の腕輪(物理攻撃を自分の意志とは関係なく回避する効果の有る腕輪)」「4大属性魔法の指輪(地水火風の最大魔法を発動できる指輪)」「闇の指輪(闇魔法、暗黒魔法を発動できる指輪)」
「無詠唱のアンクレット(魔法発動に必要な呪文詠唱を省略できる小手)」とか、レアばかりだよ。」
「真面目に魔道に取り組んではいたんだねぇ。」涼音が言う。
「平凡だから、道具を使って非凡になろうとして闇に魅入られちゃったんだろうね。」
その場所には魔法陣が残されていた。
涼音とシャイナがその魔法陣を調べる。
「「!」」二人が同時に気付く。
「これは、地脈の流れに作用する陣だね。」涼音が言う。
「本来の流れを無理やり捻じ曲げて、その力を取り込む禁呪。」シャイナが言う。
「私たちの村が、この森に認知されなくなった元凶ですね。」
シャイナは魔法陣の中心を短刀で刺し、もごもごと呪文を唱える。
瞬間、魔法陣が軋み音とともに割れ、光になって消えていった。
一瞬の静寂の後、地の底から何かが湧き上がってくる。
地脈の流れが正常になった事で、このあたりの土地の力が回復しているようだ。
するとあたり一面に草が芽吹き始め、ぐんぐんと成長していった。
「これは?」愛華が言う。
「ヒール草ですね。」シャイナが答える。
「地脈の集まるところに群生する、回復薬の原料になる草です。」
「地脈を遮る魔法陣が消えたので復活したのでしょう。」
「元々瘴気が澱んでいた処だから、何年かするとポーションの泉でも出来るかもね。」涼音が言う。
「そうなると素敵ですね。」シャイナがほほ笑む。
「さて。」
「あたしが知っている「森」とは違う存在になっている気がするんだけど。」涼音が言う。
「二人はどう思う?」
「私はここにきて日が浅いので良く解らない。」愛華が言う。
「こんな処に高位の魔物がいて、その影響が私たちの森にまで干渉しているので、良い状況ではありませんね。」シャイナが言う。
「シャイナ。」
「はい?」
「このまま、あたし達の町まで来て貰えないかな?」
「この状況とシャイナ達の森の状況を姉さんたちに伝えたい。」
「姉さん?」
「あたしたちの町で、この森に一番詳しい人たち。」
シャイナは少し考えるが、「良いですよ。」と答えた。




