ダンジョンにて4
涼音は一歩前に出て、更に高度な「識別」をして言う。
「手前にゾンビやら死霊やらがうようよ。」
「その奥に。」「?」涼音が言葉に詰まる。
「その奥に?」愛華が問う。
「ド、ドラゴンゾンビが2体・・・」涼音が呟く。
(何ですとぉ??)愛華が声を出さずに突っ込む。
(聖魔法以外の魔法はほぼ無効で、物理攻撃は受けても、瞬時に再生すると言う伝説の化け物?)
(侍の奥義に有効なものが有ると聞いたことがあるが、今の私はそれを使いこなせていない。)
「やめようよ。」と愛華が言うと同時に、シャイナが矢に魔法を纏わせてドラゴンゾンビに放つ。
その矢は片方のドラゴンゾンビの額に当たり、魔法が発動する。
「があぁぁぁぁぁ!」ドラゴンゾンビが咆哮する。
瞬間白く輝き、灰になって巨体が四散する。
「しゃーないねぇ。」と言って、涼音がぶつぶつと呪文を唱えながらゾンビの集団の前に走る。
集団の前で止まると手で印を結び唱える。
「浄化!」
涼音を中心に白い光が広がる。
涼音がうようよいると言ったゾンビや死霊が一瞬で消え去っていく。
しかしドラゴンゾンビには効果が無いようだ。
一体残ったドラゴンゾンビが咆哮を始める。
「ブレスが来るよ!」涼音が言いながら上位保護の「護壁」を展開する。
シャイナがその護壁の中に滑り込んだ時、ドラゴンゾンビがブレスを吐いた。
ブレスを受けた周りの木々が一瞬で枯れ、朽ち果てる。
ドラゴンゾンビのブレスは生あるものの、生命力を奪う。
ドラゴンゾンビが2撃目のブレスを放とうとした時、シャイナが再び魔法を纏った矢を射かける。
その矢はドラゴンゾンビの右目に当たり、ドラゴンゾンビの右目を吹き飛ばす。
しかし、その右目は見る間に再生していく。
「ごめんなさい、外しました。」シャイナが言う。
愛華がはっとして言う。「涼音!」
「何?」答える涼音。
「私の剣、草薙の剣に匹敵すると言ってたよな。」
「しー姉作だから、それは間違いないかな。」涼音が答える。
「分かった、私があいつに突っ込む。」愛華が言う。
草薙の剣なら「破魔」の力を宿している。
きっとアンデットにも通用するはずだ。
愛華が集中する。
そして気が高まった瞬間、言葉を発する。
「奥義!真空斬!」
愛華がゾンビドラゴンに突っ込む。
しかし、愛華は足元の瓦礫につまずく。
「「「あっ」」」3人が同時に叫ぶ。
勢い余って地面に顔から行く愛華。
「あちゃー。」って顔でそれを見る涼音とシャイナ。
(愛華マジで残念な娘。)と思いながらも「ドンマイ!」と声をかけ涼音が「護壁」張りなおす。
シャイナはドラゴンゾンビに威嚇の弓を射続ける。
愛華はまだ地面に突っ伏している。
「シャイナ、今から投げるものを射て!」涼音が言う。
涼音は先ほどからペットボトルの水にぶつぶつと呪文を唱えている。
「聖なる祝福!」涼音が言うとペットボトルが紫色に輝き始める。
「聖水」が出来ていた。
ドラゴンゾンビは再びブレスを吐こうと身構える。
その開いた口に涼音がペットボトルを投げ入れた。
シャイナがそのペットボトルを狙い、矢を放つ。
口のすぐ前でペットボトルに矢が当たり、紫の水がドラゴンゾンビの口中と喉を焼く。
「・・・・・」ドラゴンゾンビは声にならない咆哮を上げる。
口中と喉の再生は始まらなかった。
涼音は忍者刀を抜き、ドラゴンゾンビの足元に瞬歩すると、両足の腱を一瞬で切り裂いた。
自身の体重を支えられずにドラゴンゾンビが膝をつく。
その足を足場にして、涼音が腰の筋肉を断ち切る。
どの攻撃の傷も再生が始まらなかった。
涼音の攻撃には「聖属性」が付与されているからだ。
ドラゴンゾンビの身体が崩れ落ちた。
その額にシャイナが必殺の矢を放つ。
ドラゴンゾンビの頭部内で魔法が発動し、先ほどの個体と同じように、白く輝き、灰になって巨体が四散した。
愛華はその間中、恥ずかしさで身動きが取れないでいた。
涼音とシャイナはドラゴンゾンビがいた更に奥を見据える。
「いるね、不死の王」。涼音が言う。
「私、初めて見ますわ。」シャイナが言う。
その先には「不死の王」と呼ばれる者が祭壇に向かって祈りを捧げていた。
祭壇の前には少し大きめの魔法陣が存在している。
ドラゴンゾンビが消滅したことを感じ、「不死の王」が祈りを止めて涼音たちの方を見る。
「我ガ求メシ極ミニ至ル覇道ヲ遮ル愚カ者達ヨ!」地の底から湧き出るような声が響く。
「ソノ屍を以ッテ我ニ謝罪ヲ示セ!」
その瞬間に涼音たちの周りが業火に包まれる。
しかし涼音達は「護壁」により全く影響を受けていない。
「無詠唱で魔法を発動したよ。」涼音が感心して言う。
「あら、それは素敵ですね。」くすくすと笑いながらシャイナが言う。
「いやいや、その反応色々可笑しくないかな?」
地面から起き上がった愛華が突っ込みを入れる。
(お、復活した。)愛華を見ながら涼音が思う。
「あんな化け物を目の前にして言う感想がそれ?」愛華があきれて言う。
「いやぁ、あんな高レベルの化け物見るの初めてでさぁ。」
「感想の言葉が見つからないんだよ。」涼音が言う。
「魔法に詳しい私も「無詠唱」の魔法発動は久しぶりに見るもので。」シャイナが言う。
(あんたら絶対感動なんかしてないよね。)愛華が思う。
(しかも、シャイナは「久しぶり」とか言ってるけど、シャイナの魔法矢に詠唱するの見てないんだけど。)愛華が心で突っ込む。
「聞いて良いかな?」愛華が言う。
「どうするつもり?」
「「殺っちゃうしかないかな?「ないですね。」」
(うん、仲いいねこの人達。)愛華が思う。
「どうやって?」愛華が言う。
駄目元で愛華が聞く。
(どーせ真面に答えてくれないよね。)
「あれには物理攻撃はほぼ効かないですね。」シャイナが言う。
「魔法攻撃も多分全く効かないかな!」涼音が言う。
(おー真面目に答えてくれたよ。)愛華が思う。が少し考えて。
「ちょっと待って!」愛華が叫ぶ。
「二人して無理だって言ってるよね?」
「「なにが?」」涼音とシャイナが同時に答える。
「あんたたち二人であの化け物にダメージ与えられないって言っちゃってるよ。」
「「?」」涼音とシャイナがお互いの顔を見る。
「誰が?」涼音が言う。
(あーもうやだ、この人達。)
愛華がは絶望しながら目の前の二人を見る。




