↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女と僕の奇妙な日常【小説家になろう!】  作者: MOH
4月 突然の来訪者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/33

3万円

 テーブルに置かれた料理を見て、また驚いた。

 パイナップルが乗ったポークチャップ。

 そして、彼女がオーダーしたバゲットパン。


「えっとー……これ、頼んでませんよね?」

 思わず口に出してしまった。


「はい。オーダーの調理に時間が掛かっておりまして、こちらもお店からのサービスです。申し訳ありません」

 メイド服姿の女の子が、深々と頭を下げる。


「エムくん、お店のサービスだから、ありがたくいただきましょう。女の子を困らせちゃダメよ」

 彼女にそう言われ、女の子はフロアへ戻っていった。


 いくらお店のサービスとはいえ、これまでに出てきた料理だけで、僕たちがオーダーした料理の金額を、とっくに超えている。だんだん心配になってきた。

 彼女はポークチャップを器用に切り分け、ポークの上にパイナップルを乗せて口に運ぶ。


「これ、本当にサービスだよね? お金、取られないよね?」


 彼女は答えず、ポークチャップを口に運んでから、システム手帳に何かを書き込んでいた。

 レースのカーテン越しに見える窓の外は、細い裏道がますます暗くなってきた。

 そういえば、僕たちがお店に入ってから、誰も入ってきていない。

 お客さんが来ないのは、ランチタイムとディナータイムの間の、中途半端な時間だからだろうか?


 そんなことを考えていると、厨房からシェフハットを被った恰幅のいい男性が出てきた。

 シェフがフロアに出てくるなんて、どうした?

 僕たちのテーブルの前まで来ると、シェフは帽子を取って、深々と頭を下げた。


「実は、食材がなくなりまして……。急いで百貨店の地下へ買いに行こうと思っています」

 そこまで言うと、シェフは困ったような顔をする。

「ところが、お店の現金を銀行の金庫に預けたばかりでして……。申し訳ありませんが、お金をお貸しいただけませんでしょうか。もちろん、その分を今日のお勘定にしていただいても構いません」


「えっ?」


 いきなり何の話?


 僕が彼女にどうするのか聞こうとすると、彼女が先に口を開いた。

「今日の主役、エムくんが決めてよ」


 彼女は、いつもの美少女スマイルを浮かべている。

「サービスで出された料理は美味しくいただいたから、このままお店を出てもいいし、困っているシェフさんにお金を貸して食材を調達してもらって、あらためてオーダーした料理をいただいてもいいのよ」


 これだけ食べておいて、お金を払わずに店を出るのは、さすがに気が引ける。

 返してもらえるのなら、貸してもいいかな?

 今日のお勘定分くらい渡せばいいんだろうか?


「いくらお貸しすればよろしいんですか?」


「とりあえず、3万円ほど」


「えっ!」


「お店が購入する食材が、あまり少額ですと、百貨店の方から『あの店、危ないのかな?』と思われてしまいます。そうすると、いざという時に掛け払いができなくなるものですから」

 銀座では、そういう取引があるの?


 よく分からないけど、昨日のピザ代2万円を立て替えても、財布にはまだ3万円残っている。

 上京するときにもらった餞別金が、全部なくなってしまうけど……


 料理は美味しい。

 それに、お店がこのまま逃げるわけでもないだろう。

 ……たぶん。


「3万円ですね。念のため、借用書を書いてもらえますか?」

 念のためにそう言うと、シェフはポケットから一枚の紙を取り出した。

 そこには、すでに『3万円』と書かれた借用書があった。

 手際が良すぎるんだけど……


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。