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彼女と僕の奇妙な日常【小説家になろう!】  作者: MOH
4月 突然の来訪者

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タンシチュー

 彼女が『人物観察』反省会という名の、歩行者天国を行き交う人々への辛辣な講評を終えた。

 女性の服装に対する批評が多かったけど、僕にはよく分からない。

 壁に掛かったアンティーク調の柱時計に目をやると、お店に入ってから30分以上経っていた。

 相変わらず、彼女と僕以外にお客さんはいない。

 もしかすると、厨房の人たちがお昼休みに入っているのかもしれない。


 そんなことを考えていると、メイド服姿の女の子がトレイに料理を載せて、テーブルにやってきた。

 調理に時間が掛かった分、味には期待していいのかな?

 ところが、テーブルに置かれた皿は、僕たちがオーダーしたものではなかった。

 ほんわりと香り立つ、オニオングラタンスープ。

 怪訝な顔をしていると、メイド服姿の女の子が申し訳なさそうに説明する。


「すみません。オーダーの調理に時間が掛かっておりまして、こちらはお店からのサービスです。もうしばらくお待ちください」

 お辞儀をしてフロアへ戻って行った。


「すみません。オーダーの調理に時間が掛かっておりまして、こちらはお店からのサービスです。もうしばらくお待ちください」

 そう言ってお辞儀をすると、フロアへ戻っていった。

 彼女が何か一言、言うのかなと思ったけど、女の子の説明に頷いただけで、ボリュームのあるスープに口をつけていた。僕もお腹が空いていたので、スプーンを手に取った。

 このスープもメニューにあったと思うけど…… オーダーした料理と同じくらいの値段だったんじゃないかな?


「美味しいね。これがサービスなんて、いいお店」


「『タダより高いものはない』という諺(ことわざ)もあるけど」


「エムくんは、その辺、用心しすぎじゃない? 叔父さんの家の合宿所だって、最初はタダなのを疑ったでしょう」


 家賃がタダなのは、地方出身の学生にとってはありがたいけどね。

 でも、大学の講義も始まっていないのに、この疲労感は何なのだろう?

 東京に出てきてから、家賃以上の労働をしている気がする。

 その大半が彼女に関わっているように感じるのは、気のせいだろうか?

 おかげで、毎晩ぐっすり眠れているけど……


 サービスのオニオングラタンスープを食べ終わり、少しお腹が落ち着いたところで、メイド服姿の女の子が再びトレイを持ってテーブルにやってきた。

 ようやく昼食だ。

 ……アレ?

 女の子がテーブルに置いた皿が、またオーダーしたものと違う。


「もう少し調理に時間が掛かります。こちらもお店からのサービスです」


 メイド服姿の女の子は、それだけ言うとフロアへ戻っていった。

 なんでオムライスが出てこなくて、タンシチューが出てくるわけ?

 まさか、残り物じゃないよね。

 僕がフォークでタンを突いていると、彼女はナイフで切り分けたタンを、何のためらいもなく口に運んでいる。


「うん、美味しい。タンシチューは好きよ。脂質が少なくて、ローカロリーだもの。でも、シチューにはパンがないとね。すみませーん! パンもお願いできますか?」


 このお店に、彼女と僕以外のお客さんがいないことに慣れてしまったのか、彼女はフロアに立っているメイド服姿の女の子に声を掛ける。

 まるで、自分の家にいるかのような振る舞いだ。

 女の子は頷くと、厨房へ入っていった。


 しばらくすると、女の子がトレイを重そうに運んでくる。

 ようやく、オーダーしたカツレツとオムライスができたみたいだ。


(つづく)

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