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星の降る道ⅰ 死者の星環  作者: 超魔王
山の向こうへ
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銀貨五枚

木の陰から、ザフラの家が見えた。

声も、かすかに聞こえる。

ヴァルシャの鼻面をナディラが撫でている。

「静かにね」

僕は男たちを見た。

四人。

そのうち一人だけ、身体が大きかった。

どこかで見たことがある。

どこだった?

男が横を向いた。

分かった。

胸の奥が冷たくなった。

夏至祭の夜だ。

王宮から逃げた僕に絡んできた男。

あの夜は、ただのチンピラだった。

混乱した街で、身なりのいい子供を見つけたから寄ってきただけだった。

たぶん。

でも、今は僕を探している。

「ダルガン」

僕は小さな声で呼んだ。

「なんだ」

「あの大きい人」

「ああ」

「知ってる」

ダルガンが僕を見る。

「王宮から逃げた夜に会った」

ダルガンの目が細くなった。

「追手だったのか?」

「違うと思う。あのときは」

だから余計に嫌だった。

誰かが、あとからあの男を雇った。

あの夜、僕を見た者を探したのかもしれない。

誰が?

「高貴な身なりの子供だ」

男の声が聞こえた。

「見なかったか」

ザフラが答えた。

「来た来た来たよ!」

僕は目を閉じた。

「三日前だ!」

そっちか。

「どこへ行った?」

「さあねえ」

「ばあさん」

男が何かを差し出した。

銀貨だった。

ザフラが受け取る。

黙る。

男も待っている。

ザフラは何も言わない。

二枚目が出た。

まだ黙っている。

三枚。

四枚。

五枚。

そこでザフラが突然、自分の額を叩いた。

「おお!」

男がびくっとした。

「急に頭がすっきりしてきた!」

ダルガンが額を押さえた。

「婆さん……」

「高貴な子っていうけどねえ」

ザフラが聞いた。

「あんたら、誰を探してるんだい?」

「質問してるのはこっちだ」

「五枚ももらったんだ。間違ったこと教えたら悪いだろ?」

男は嫌そうな顔をした。

「王宮の火事は知ってるな」

「山の婆でも知ってるよ」

「王と弟をそそのかした奴がいる」

僕は息を止めた。

「そいつが二人をそそのかして王宮に火をつけさせた。その混乱で、王宮の宝を盗んで逃げた」

僕は聞き間違えたのかと思った。

僕が。

兄と。

誰かにそそのかされて。

王宮へ火をつけた?

そんなことはしていない。

「宝ってなんだい?」

ザフラが聞いた。

「知らん」

「知らないもの探してるのかい」

「俺たちはな。ただ、とんでもないしろものだとは聞いてる」

「ふうん」

ザフラが唸った。

「そりゃパルキアだ」

「なぜだ」

「あの坊主、宿で話してたよ。ヴァルダーン領を避けて、西へ抜けるって」

「本当か?」

「母親がパルキアの王女なんだろ? 頼るなら母親の国だ」

「ばばあ」

男が低い声を出した。

「こっちは憶測を聞いてるんじゃねえ」

銀貨を取り返そうと手を伸ばした。

ザフラは五枚を胸に抱え込んだ。

「いやだ! これは受け取ったものだーー!」

危うく声が出そうになった。

ダルガンが僕の口を塞いだ。

「もういい!」

男は怒鳴った。

「それはやる。嘘つきもいい加減にしないと死ぬぞ、ばばあ」

「三日前に高貴な子供が来たのは本当だよ!」

「はいはい」

四人が去っていく。

かなり長い間、僕たちは動かなかった。

やがてザフラが裏へ回ってきた。

「もういいよ!」

家へ戻った。

机の上に銀貨が五枚並んでいた。

「婆さん!」

ダルガンが怒鳴った。

「危ねえじゃねえか!」

「危ないのはそっちだわ!」

「金まで取るな!」

「向こうからくれたんだよ!」

「返せよ!」

「なんでだい!」

僕は二人の声を聞きながら、椅子へ座った。

頭の中に残っているのは、別の言葉だった。

王と弟をそそのかした。

王宮に火をつけさせた。

宝を盗んだ。

僕はそそのかされていない。

火もつけていない。

だったら、今あの男たちが聞かされている話も嘘だ。

どうして嘘が、また一つ増えたんだろう。

「あの夜は」

僕は言った。

「まだ終わってないんだ」

ダルガンとナディラが黙った。

ザフラが椅子を引いた。

僕の向かいへ座る。

「だったら」

銀貨を一枚、指で弾いた。

「五枚分、話してみな」

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