悪食魔
シュトラーダ王国。
傭兵ギルドの2階にある、シュトラーダ軍作戦室。
将軍から呼び出されたケンウッドが、偵察任務の報告をしていた。
「ヴァンパイアに協力するエルフ、ラファエラ、それに集落・・・にわかに信じがたいな」
将軍が報告書に目を通して、ケンウッドを睨みつけながら言う。
「違う・・・」
ケンウッドの一声に部屋が静まり返る。
「あいつはそんな生易しいもんじゃねぇ。」
会議に参加している誰かが笑う。
「ケンウッド君、たかが一人のエルフだろう?」
バン!
ケンウッドは机を叩く。
「甘いんだよ、あんたらは!あいつは魔物を喰らい、人間を喰らい、国まで喰らった!」
「ゼルギアもあいつに喰われた!」
「俺は二度も戦って負けた!」
「あれはもう、ただのエルフじゃねぇ!」
ケンウッドは頭を掻きむしった後、静かに続けた。
「悪食魔だよ」
作戦室が静まり帰る。
しばらくして、将軍が小さく呟く。
「悪食魔・・・・ラファエラ」
ケンウッドは作戦室を暗い顔で出たあと、ギルドの酒場へと足を運んだ。
「飲まねぇとやってらんねぇぜ!クソッ!」
そう言った矢先、本を読みながら歩いて来た若い魔法使いとぶつかる。
「おっと!すまねぇ、お嬢ちゃん」
「いえ、こちらこそごめんなさい、えーっと、確かケンウッドさん?」
「俺のこと知ってんの?有名人になったもんだぜ」
「えっと、一度お見かけした人の顔と名前は覚えています」
少女は落とした本を拾いながら言った。
「そんなこと出来んのかよ、だとしたら化け物だぜ、お嬢ちゃん」
ケンウッドが有り得ないと言った口調で話す。
「意外と、何とかなるもんですよ」
少女は満面の笑みで返す。
「ほう、まあ、そんなけ頭いいんなら、魔法もすぐに覚えちまうな、期待してるぜ、お嬢ちゃん」
ケンウッドはそう言うと酒場へ歩いていった。
少女はしばらくケンウッドの背中を見送っていた。
すると、先を歩いていた冒険者が少女に呼びかける。
「おい、シャロン、シャロン・ミリー、何やってんだ、行くぞ!」
「あ、はい!ごめんなさい、すぐ行きます!」
シャロンは駆け足で冒険者と合流する。
「シャロン・ミリー・・・・覚えとくか」
ケンウッドはそう呟くと、酒場の扉を押し開けた




