禁足地
ヴァンパイア城の広間。
「本日は、女性区画で暴行を働いた男3名を、レミー隊のブラッドサッカーとしました、あとは・・・番いによる繁殖も順調に進んでおり、人口も増加傾向です、今のところ牧場は順調に機能しております、鉱山での採掘状況はこちらの資料をご覧下さい」
ファフナロッタが資料を見ながら、シュナイゼルに報告をする。
「・・・素晴らしい!」
シュナイゼルは手を叩いて称賛する。
「ラファエラ!本当に素晴らしい働きだ!これでヴァンパイア族は当分安泰だ、礼を言うぞ!」
「ありがたき幸せ」
エルリンは深々と頭を下げる。
「ファフナロッタ、お前も良くやってくれている、礼を言うぞ」
「はわわわ!こ、光栄です、はい!」
ファフナロッタは感激のあまり、上ずった声を上げた。
シュナイゼルへの報告を終えた2人は、廊下を歩いていた。
「リン!ありがとう!私、初めてシュナイゼル様に感謝されました!」
ファフナロッタは、今だ興奮冷めやらぬ様子である。
「良かったね、ファフ」
エルリンはファフの滅多に見ない喜びように、心から嬉しくなった。
廊下の少し先・・・レミーが腕を組んで壁にもたれている。
「どうしたの?レミー」
エルリンは先に話しかけた。
「・・・ラファエラ、少しお時間いただけますかしら?」
ーーーうわ!怖!なにこれ!?
エルリンは心の中でそう思った。
エルリンは仕方なく頷いた。
特に会話もなく、レミーの私室に招待された。
エルリンは何を言われるのか緊張して、立ち尽くしていた。
「突っ立ってないで座りなさいな、ゴリラの置物ですの?」
レミーがいつもの毒舌を放つ。
エルリンは言われたとおり、椅子に腰掛けると、レミーがワイングラスをエルリンの前に、そっと差し出した。
「たまには・・・乾杯いたしましょう」
「え!はあ、そうね・・・」
エルリンは冷や汗が止まらない。
チン!
レミーとエルリンのグラスの音が響いた後、しばらく沈黙が続く。
「礼を言いますわ」
レミーの一言が沈黙を破る。
「え?・・・レミー、今日はどうしたの?」
「な!なんですの!?べ、別に褒めたくて褒めてるんではありませんわ!
「ハハハ、ごめんなさい、ちょっと意地悪だったかな・・・ありがとう、レミー」
「フン!あなた、休みもなしに働いていると聞きましたわ」
レミーがワインを一口流し込む。
「ファフやアストリッドのおかげで、睡眠は取れてるわ」
エルリンはレミーにワインを注いだ。
「これまで、よく頑張りましたわね、今後は人間牧場と鉱山の守りを、私に任せてくださいな」
「その、気持ちはとてもありがたいけど、日中は私達が・・・」
「・・・ラファエラ、あなた、未だ私がただのブラッドナイトと思ってますの?」
「・・・実は思ってなかった」
レミーはクスッと微笑んだ。
「イライザ教の高位秘術に、ヴァンピリックシェイドがある、ブラッドナイトが使えるようなものじゃない、ノーブルに近いヴァンパイアでないと・・・」
「想像にお任せしますわ」
「でも、とても心強いわ、是非力を貸して欲しい」
「・・・仕方ありませんわね、やるからには侵入者は一人も逃がしませんわ」
レミーはワイン飲んでに舌鼓をした。
シュトラーダ王国、冒険者ギルド。
「ケンウッド、お前、斥候から外されてるのか?」
シュトラーダに来て一番付き合いの長い、アーチャーのフェルディが声をかけた。
「ああ、将軍にいろんなネタを口封じされてな」
ケンウッドはエールを一気に飲み干す。
「実は、お前の後、別の斥候部隊がヴァンパイア領の偵察に2度程派遣されたらしいが、一人も戻っていないらしい」
フェルディはかなりの情報通で、シュトラーダの情報管理部とのコネがあるらしい。
赤い戦鬼と呼ばれたエルフの情報もフェルディから得たものだ。
「だろうな、あの場所を調査するには、相当有能な斥候でないと、生きて戻れない」
ケンウッドはエールのおかわりを注文する。
「これは、かなりヤバい情報なんだが・・・」
フェルディが右手を出して、ケンウッドに何かを要求する。
「チッ!」
ケンウッドがフェルディの右手に銀貨を2枚握らせる。
「へへ、まいどあり・・・」
フェルディが懐に銀貨をしまう。
「実は、調査に行って戻ってきた奴が一人いたらしい、そいつは街についてすぐに死んだらしいが、死ぬ間際にこう言ったそうだ」
ケンウッドが息を飲む。
「赤色魔眼」
ケンウッドの血の気が引いた。
「・・・俺は二度と行かねぇぞ」
ケンウッドは豆を口に投げ込むと、エールで流し込んだ。
「もう、受ける冒険者なんていねぇよ」
フェルディは苦笑いしながら、ケンウッドの豆を口に入れた。
それからしばらく、ヴァンパイア領は禁足地とされ、近づくものはいなくなった。




