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ゼルン軍の詰所に戻ったアルビルとケンウッド、そして数名の兵士。


ケンウッドは詰所に帰るなり、甲を壁に投げつけた。

「クソッ!なんだよ!あいつらは!」


「落ち着け、ケンウッド、どうにもならん」

アルビルが冷静にケンウッドをなだめた。


「リベンジするぞ!あんな女に舐められたまま引き下がれるか!」


「諦めろ、私は降りるぞ・・・」


「なっ!隊長!なにビビってやがる!」

ケンウッドはテーブルを叩いて怒鳴った。


「ヴァンパイアが背後にいるとわかった以上、我々に勝ち目はない、ウリヤス様も諦めるだろうな」


「・・・俺は、諦めんぞ、ラファエラ!」

ケンウッドは拳を握りしめて、ラファエラへの再戦を誓った。



数日前、ヴァンパイア城。


カン!カン!


木剣を打ち合う音が道場に響く。


「アストリッド!大振りは駄目ですよ、隙だらけです!」

大振りばかりするアストリッドに、ファフナロッタがヒョイヒョイと避けながら注意する。


「いやぁ!」

アストリッドの渾身の大振りが空を切る。

ファフナロッタはアストリッドの頭をコツンと叩く。

「あいたぁ!何すんのさファフ姉!」

アストリッドがファフナロッタに大声で文句を言う。


「あなたが言う事を聞かないからですよ」

ファフナロッタは呆れた顔をする。


「だって!リンはいつもこんな感じだもん!」

アストリッドが目尻を釣り上げて怒る。


「リンも、最初からウォーハンマーを振り回していた訳ではないのですよ、基礎を大切にして下さい」


「リンは筋がいいって褒めてくれたもん!」


「あなたの筋はいいですよ、腕力もありますし、でも、基礎をおろそかにしていい理由にはなりません」


エルリンが留守の間、ファフナロッタがアストリッドを鍛えている。

最初はエルリンが居ないことに駄々をこねていたが、ファフナロッタが何とかなだめて、一緒に訓練が出来るようになった。


「ブゥ〜!ファフ姉嫌い!」


いつも以上に駄々をこねるアストリッドに、ファフナロッタは困った顔をする。


「そう、強くならないと、リンと一緒に戦えないですよ」


「ーーーそんなの、ヤダ・・・」


「リンを助けたいのでしょ?」

ファフナロッタはアストリッドの頭を撫でる。


「・・・うん」


「じゃあ、もう少し頑張りましょうか」

ファフナロッタは微笑みながら言った。


それから1時間、訓練を終えると、ファフナロッタは昼食の用意をしに厨房に向かった。


アストリッドは道場に残り、一人で木剣を握りしめる。


ーーーリンと一緒に、戦うんだ!


ファフナロッタは昼食の用意を終えて、アストリッドを呼びに行った。

「アストリッド、ご飯ですよ・・・?」


自室にいない。


まさか。


ファフナロッタが道場をそっと覗くと、アストリッドが一人、汗だくになりながら、黙々と木剣を振り続けていた。


ファフナロッタは笑みをこぼしながら、アストリッドに声をかけた。

「アストリッド、ご飯、出来てますよ」


「はぁ、はぁ、うん、お腹、ペコペコ・・・」

そう言うと、アストリッドは膝から崩れ落ちた。


「よく頑張りましたね・・・」

ファフナロッタはアストリッドの汗を布で優しく拭う。


「昼からは魔法の座学ですよ」

ファフナロッタが満面の笑みで言うと、アストリッドはうつ向けに倒れ込んだ。

「ええ〜!」



エルリンとレミー、そしてキュルスは、馬車に乗ってアルバへの帰途についていた。


「ラファエラ、あのまま逃がし大丈夫ですの?」

レミーがワインを飲みながら、落ち着いた口調で話す。


「そうね、あのケンウッドとか言う人間、結構強かったわ、あのままだと、レミーの手を煩わせる事になった」

エルリンは顎に手を当てて応える。


「私が皆殺しにしても良かったのではありませんこと?」


「レミー様、ラファエラさんはあなたの存在を知られる事を、危惧したのではないかと思います」

キュルスが恐る恐る口を挟む。


「それは本当ですの?変態エルフ」

レミーがエルリンに問い詰めると、エルリンは首を縦に振った。


「何か伏兵がいるかもと思わせておいて、その情報を持ち帰らせた方が、こちらへの警戒が強くなる」


「黒の翼の背後にはヴァンパイアがいる、くらいに留めた方が恐怖を感じますね」

キュルスがすかさず補足する。


「ワザと逃がしたと?」

レミーが鋭い視線でエルリンを見る。


「いえ、サッと勝てるようなら、それでも良かった、でも、相手の隊長は頭が切れる人物だった」


「賢い人物なら、ゼルギアの戦力でヴァンパイアに挑まないと踏んだ訳ですわね」

レミーはワインを一口飲むと、話を続けた。

「相変わらず食えない奴ですわね、変態エルフ」


「あのさ、褒めてるのか、けなしてるのかどっち?」

エルリンが目を細めて言う。


「私がゴリラを褒めるとでも?」


「おお!噂通り、お二人は仲がいい!」

キュルスが手を叩いて喜ぶ。


次の瞬間、レミーの拳がキュルスの顔面を捉えた。

「な・・・なんで?」

キュルスは鼻血を出して倒れた。

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