槍術士ケンウッド
「こちらキュルス、敵の一団は騎馬にまたがり、森の側道に進入、私も、後方から追跡を開始します」
「ラファエラ、了解、5分後に交戦を開始するわ」
エルリンはギフトヴィントミューレを肩に担ぎながらゆっくり前進する。
そして、顔に無機質な仮面をつける。
「下僕共、あの変態エルフに追従せよ!」
レミーが手を前に突き出して、ブラッドサッカーに命令する。
ーーー普通に言えないの?
エルリンは頭の中で突っ込む。
ブラッドサッカー十五匹が、静かにエルリンの後ろへ並ぶ。
やがて馬の蹄の音が響いてくる。
ーーー来た、とりあえず足止めしてみるか
エルリンはブラッドサッカーに命令する。
「お前とお前、道の前に出で騎馬隊を足止めせよ」
命令されたブラッドサッカーが大きなコウモリのような羽を羽ばたかせて、森の中を飛んでいく。
「後の者は私に付いてきなさい!」
エルリンは身体強化術を使って走り出す。
蹄の音が徐々に大きくなる。
やがて、馬が嘶き、人の声が響く、先行したブラッドサッカーと接敵したようだ。
「前の5匹、敵の反対側から攻撃!後ろの5匹、前進して側面から攻撃!」
ブラッドサッカー達がバサバサと大きな羽音を響かせて飛び去る。
「残りは私の前方を守れ!」
エルリンはブラッドサッカーのスピードに歩調を合わせて突撃する。
「こちらレミー、いつ泣きべそをかいてもよろしくてよ。ちゃんと助けて差し上げますわ。」
「こちらキュルス、敵後方を監視中、合図を待ちます」
敵の一団をエルリンの視界が捉えた。
先行したブラッドサッカーが次々と倒されていく。
ーーーなるほど、精鋭部隊ね。
前方のブラッドサッカーがエルリンを隠すように前に出る。
エルリンがギフトヴィントミューレを構える。
「キュルス、援護攻撃開始」
「御意!」
前に出たブラッドサッカーが断末魔を上げる。
エルリンはその屍を飛び越えて、目の前の兵士にギフトヴィントミューレを振り下ろす。
驚きの表情のまま、兵士は血飛沫を上げて体がひしゃげる。
「ラファエラだ!毒蝶のラファエラ発見!」
隊長のアルビルがエルリンに気づき、兵士達に警告する。
エルリンが次の標的を定めようとした時、視界の外からスピアの刃先が飛んでくる。
ーーーヤバッ!
エルリンはとっさにスピアをかわす。
「ヒュー!あれをかわされたのは初めてだぜ!」
ケンウッドが感嘆の声を上げる。
ーーーこいつ、今までのゼルギア兵士とは違う!
年は20代後半、無精髭に鋭い視線。
「隊長〜、ラファエラは俺の獲物っすよ!」
ケンウッドがニヤリと口元を緩める。
次の瞬間、敵軍に雷撃が走る。
キュルスの雷魔法、ライトニングである。
馬が嘶き、兵士が悲鳴を上げる。
「後方にもいるぞ!」
アルビルが大きく声を上げて注意を促す。
ブラッドサッカーは残り3匹。
ゼルン軍は残り21人。
フードを被っていた巨大の連中が、ライトニングで頭を露わにする。
頭にヤギのような角、青い肌の色に凶暴な顔つき。
ーーー魔人。
ちっ!本当にレミーの出番かな。
「余裕だな!ラファエラァ!俺相手に余所見かよ!」
この男の槍さばきには隙がない。
ウォーハンマーの刃先で受けるのが精一杯だ。
その上、魔人が3匹、あの隊長も油断出来ない、キュルスのライトニングを受けても平気な顔をしている。
「いいわね、あなた。」
エルリンは小さく笑う。
「私も久しぶりに、本気を出そうかしら」
ギフトヴィントミューレを低く構えた。




