守るために
「ここに来るのも久しぶりね」
エルリンは懐かしい気分で、ヴァンパイア城の中を歩いていた。
「あなたはここでは珍獣扱いですものね」
いつものレミーの嫌味が炸裂する。
でも、何か嫌じゃない。
「ヴァンパイアに珍獣認定されるなんて、私の価値はエンシェントドラゴン並よね」
エルリンが爽やか笑顔で返しを入れる。
「ものは言いようですわね!」
レミーは返しが来たことに満足したような笑顔で言った。
「2人は仲良しだね、アストリッド」
ファフナロッタがアストリッドの顔をのぞき込んで話しかける。
「キャハハ!そだね」
大広間に入ると、縦長のテーブルの上座にシュナイゼルがワイングラス片手に座っていた。
「おお!皆、ご苦労であった!さあ、座ってくれ!」
皆は一礼して席に着く。
「ラファエラ、その娘は?」
「ーーー私の養女です」
エルリンはアストリッドの肩に手を置いて答えた。
「ハハハハハハ!いや、ラファエラ、お前はやはり面白い!」
シュナイゼルは高らかに笑った。
エルリンとレミー、ファフナロッタの3人は、シュナイゼルに現状を報告した。
その間、アストリッドはリンに抱きついて眠っていた。
「なるほど、計画は順調という認識で良さそうだな」
シュナイゼルはレミーのグラスにワインを注ぐ。
「あ、恐縮ですわ」
レミーもシュナイゼルにワインを注ぎ返す。
「そうですね、例の鉱山で、ある程度稼げるようになるまでは、シュナイゼル様に資金の援助をお願いしたく思います」
「フム、そうだな、鉱山が軌道に乗れば、お釣りが出るだろうな、人間牧場の食費を魔物で賄うという事だが、ラファエラ、お前が狩りをするのか?」
シュナイゼルはワインを飲みながら話をする。
「口を挟むようですが、ラファエラの仕事が多すぎますわ、牧場の管理、ゼルギアの相手、食料確保、そんなにやってたら、そのうち致命的なミスを起こしますわ」
レミーがエルリンの言い難い部分をフォローする。
エルリンは目線でレミーに感謝する。
「お許しをいただけるのでしたら、私が牧場の管理をさせていただきたく思います」
ファフナロッタが起立して、シュナイゼルに意見を述べる。
エルリンは目頭が熱くなりながら、アストリッドの頭を撫でている。
二人とも、エルリンにはそのような話をしていなかった。そもそも、エルリンは全て一人でこなすつもりであった。
「ーーーうむ、わかった、牧場を管理するには、エルリンを除けば、ファフナロッタが適任だろう、レミーはファフナロッタのフォローをしてやってくれ」
「御意」
レミーとファフナロッタは、頭を下げて承諾した。
「エルリン、牧場経営方針は、必ずレミーとファフナロッタに相談して決めろ、ゼルギアと魔物狩りも、手が回らなければ私に相談しに来るが良い、わかったな、これは命令だ」
「承知いたしました、ありがたき幸せ」
エルリンは深々と頭を下げた。
シュナイゼルへの報告が終わると、皆は食堂に集まった。
「はい、お待たせ〜」
ファフナロッタは、チキンステーキとサラダにパンを、テーブルに並べた。
「お腹ペコペコ!食べてもいい!?」
アストリッドが待ってましたとばかりに、フォークを手に取る。
「ええ!」
エルリンが笑顔で応える。
「ここには、食べ物を冷やしたり、凍らせたり出来る魔導具があるから、こういう時、助かります」
ファフナロッタはレミーにワインを注ぎながら言う。
いつもはワインがあれば上機嫌のレミーが、珍しく仏頂面をしている。
「・・・ここまで来たら、シュナイゼル様の顔に泥を塗るわけにはいきませんわ」
レミーの一言に、張り詰めた空気が流れる。
「確実に人間牧場を軌道に乗せますわよ、ラファエラ、もうあなた一人の責任では済まされませんわ・・・連絡は密にお願いしますわよ」
真面目なセリフをこんなに長く・・・
エルリンはそう思ったが口には出さなかった。
「ええ、気をつけるわ・・・それと、さっきはありがとう、どうか、今後ともご助力をお願いします」
エルリンは席を立って、レミーとファフナロッタに頭を下げた。
レミーの口元が緩み、一瞬優しく笑みを浮かべる。
「それと、アストリッドですが、あなたが鍛えてますわよね?」
思い出したように、再び厳しい視線でエルリンを睨みつける。
「ええ、まあ、軽い運動程度だけど・・・」
「戦士として鍛えなさい、私とファフナロッタも協力しますわ、これはアストリッドの為ですわ」
エルリンは理解した。
自分がここに来た時もそうだ、働かない人族は、食料になるかブラッドサッカーになるかである。
「わかったわ、アストリッドを立派な戦士に鍛えてみせるわ」
エルリンは自分が育てると誓ったアストリッドを、戦いに巻き込むことになった事に、罪悪感を覚えた。
「アストリッド、ごめんね」
エルリンは食事に夢中になっているアストリッドの頭を撫でた。
アストリッドは食事の手を止め、エルリンを見て言った。
「なんで謝るの?リンと一緒なら、何でもするよ!」
アストリッドはあどけない笑顔を見せた。




