ずっと一緒に
エルリンは朝のジョギングをする。場所によるが、安全な場所であれば必ずと言っていいほど走る。
身体強化術を使うためには、ある程度体力も必要である。
いつもは1人でジョギングをしているが、今日は違った。
「アストリッド、ついてこれる?無理しちゃ駄目よ」
エルリンはいつものスピードの半分ほどで走っていたが、やはり子供のアストリッドには辛い様子だ。
「だ、だ、いじょ、ぶ・・・はぁ、はぁ」
アストリッドはもうフラフラである。
エルリンはしゃがんで、走って来たアストリッドを抱きとめる。
「今日はここまでにしましょう」
エルリンは優しく抱きしめて言った。
「うん、リン、お腹すいた」
アストリッドもリンを強く抱きしめる。
朝起きたエルリンは、アストリッドが起きる前にジョギングを済ませるつもりだったが、アストリッドが起きてしまい、どうしても付いてくると言うので、一緒に走ることになった。
この街で有名なパン屋に、2人で手をつないで向かうことになった。
パン屋が近づくと、パンのいい匂いが鼻をくすぐる。
「リン!前に食べた、ジャムの乗ったやつがいい!」
アストリッドがパンの匂いにテンションが上がった。
「そうね、あれは美味しかったね!」
アストリッドは何をするにもエルリンと一緒がよかった。
武器の素振りや筋トレ、全て一緒にやりたがった。
パンを買った2人は、公園のベンチに座って食べることにした。
「リン!おいしいね!」
アストリッドは口元にジャムを付けて笑顔になる。
「うん!ここのパンは本当においしいね」
エルリンそう言いながら、アストリッドの口元を布で拭う。
「リン、あたし頑張る!」
「何を頑張るの?」
「あたしも強くなる!リンみたいに強くなる!」
「え!?アストリッドはそんなことしなくても・・」
「駄目!ずっと一緒にいたいから、あたしも強くなる!止めたって無駄なんだから!」
そう言うとアストリッドはパンを一気に口に詰め込んだ。
「んぐっ……んぐっ……!」
「ちょっと!そんなに慌てて食べたら喉に詰まるわよ!」
エルリンは慌てて水筒を差し出した。
ーーー確かに、私に何かあった時、この娘は1人になってしまう。武術や魔法を教えるのは悪くないかもね。
エルリンはそう思った。
「リン、ここにいたのですか」
ファフナロッタが走って来た。
「おはよう、ファフナロッタ」
「ファフ姉ちゃんおはよう!」
「おはよう、アストリッド」
ファフナロッタは手を振った。
「どうしたの?ファフナロッタ」
エルリンがパンの袋を片付けながら訊ねた。
「うっかりして伝え忘れていたのですが、昨晩、レミー様が、そろそろシュナイゼル様に現状報告するのに一度戻るのはどうかと言っていました」
「ああ、そうね、そうするべきね」
「レミー様が起きたら報告しないといけないので」
「どこかに行くの?」
アストリッドが不安そうに訊ねる。
その顔を見たエルリンは、今度はファフナロッタを見て訊ねる。
「この娘、連れて行っても大丈夫かしら?」
懇願するような顔するエルリン。
「恐らく、レミー様と私が説明すれば問題ないと思いますが・・・」
「じゃあ、レミーが起きたら、皆で行く方向で検討しようって言っておいて」
エルリンは少し安堵の顔をする。
やはりアストリッドを置いていくのが不安なのである。
今のところ、作戦の予定はなく、ダネルもアリューゼ公爵と面会出来ていないので、当面は人間牧場の下準備がメインの仕事となる。
このタイミングでシュナイゼルに報告するのは妥当だと考えられる。




