戦う理由
ダネルは酒場にエルリン達を集めていた。
「マドリッグでの作戦はご苦労様でした。・・・ところで、リン、その娘は?」
「えっと・・・この娘の名前は、アストリッド・・・」
エルリンが言葉を詰まらせる。
「ラファエラの養女ですわ」
レミーが呆れた態度で補足する。
「まあ、そうなりますね」
エルリンは照れながら応えた。
「そ、そうか・・・まあいい、始めよう」
ダネルは取りあえず飲み込んだ。
今回の作戦で、ウリヤス公爵は予定通り貴族の称号を剥奪となった。
その後、暫定的ではあるが、ウリヤスの後釜についたのが、黒の翼の後ろ盾をしているアリューゼ公爵である。
これで、ゼルギア帝国の経済は黒の翼が仕切るのは時間の問題となったが、依然としてウリヤス派閥の貴族が目を光らせている。
しかし、これで人間牧場の為のルートも確保しやすくなるのは事実である。
ヴァンパイア支配領内に人間牧場用の施設を造り、そこに人間を集める計画が、本格化することになる。
問題は資金面である。
「資金繰りの話の前に、リン、君に話しておこうと思う」
ダネル飲み物のおかわりを注文する。
「あ、はい」
エルリンは色々思い当たる事が多すぎて、大して驚いている様子はなかった。
「大方予想は出来ていると思うが、マグリッドでの一件以来、ラファエラがお尋ね者になっている、懸賞金は金貨5000枚だ」
「フフフフフ、大した額ではありませんわね」
レミーが茶化すように言うと。
「あ、わたくしにもワインを、瓶ごと持ってきて下さいまし、安物はダメですわよ」
「続けるぞ、これがどういう事かと言うと、ラファエラはゼルギア帝国の敵になったということだ、一応顔を隠しておいてよかったな」
ダネルは運ばれてきた飲み物に口をつける。
「まあ、そうなるのはわかってたわ、あの作戦をやるって決めた時からね」
エルリンは全く動じない。
「さっきの資金繰りの話も含めて、考えがあるわ」
「ほう、聞こうじゃないか」
ダネルは身を乗り出した。
「まず、資金繰りだけど、ヴァンパイア領内に鉱山がある、ヴァンパイアにはあまり必要なく使われていないと、シュナイゼル様が言っていたわ」
エルリンはアストリッドの頭を撫でながら続ける。
「人間牧場に集めた人間を鉱山で働かせます、そうすれば資金面はクリア出来るかと・・・あと、今後、ウリヤス派だった貴族の反抗が起ると思う、政治的解決でどうにもならない相手は、私が始末する、ゼルギアの敵である私なら問題ないと思う、どうかしら?」
「脳筋エルフにしては考えてると思いますわ」
レミーがワインを水のように飲みながら言った。
「食料も、魔物を狩れば抑えられるのでは?」
ファフナロッタがフォローをする。
「ちょ、ちょっとお待ちなさい」
レミーが会話の流れを遮る。
「そこのダネルとか言う人間はわかってないようですけど、ラファエラ、あなた、人間牧場だの反勢力の排除だの言ってますけど、大丈夫なんですの?あなた人族として割り切れますの?」
レミーはグラスにワインを注ぎなら、エルリンにキツい口調で訊ねる。
「ーーーそうね、レミーの言う通りね、まだ、ヴァンパイア目線で人族を見ることは出来ない、それは事実よ、でもね、人族だから特別だとも思わない」
エルリンは神妙な面持ちで語る。
「フフ、やはり君は面白いな、リン、私も同意見だよ」
ダネルは楽しい会話でもしているかのようだ。
「そ、それとね」
エルリンは少し恥ずかしそうに口を開く。
「結構、気に入ってるの、その、ここにいる皆のこと・・・だから、まあ、シュナイゼル様にやると言ったことは実現させたい」
エルリンは少しうつむいた。
「フン!ゴリラが照れるなんて聞いたことありませんわ!」
レミーは少し嬉しそうに見えた。
「リンが皆を見る目は、いつも優しいから、私も好き!」
アストリッドがエルリンの照れた表情を見て、口を挟む。
「よかったですね、レミー様、リンに好かれてますよ」
ファフナロッタがワザとレミーが困りそうな事を言う。
「は、はぁ!?そ、そんなこと、とうでもいいですわ!」
レミーはワインをガブ飲みする。
「さあ、チームヴァンパイアでのイチャイチャはここまでだ、今後は詳細を詰めていこう!」
ダネルが手を叩いて、その場の空気を帰る。
「このクソ人間!次にそれを言ったら首をハネますわよ!」
レミーの青白い顔が、少し赤くなったように見えた。
「私はうれしいですよ」
ファフナロッタが満面の笑みで言った。
「あたしも!」
アストリッドが両手を上げる。
エルリンは照れ隠しで下を向いていたが、微笑みを浮かべていた。
ーーーそう、戦う理由には充分よ
ダネルは軽く咳払いをすると、机の上の地図を広げた。
「さて、では次の話だ。」
結局、会議は深夜にまで及んだ。




