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もう迷わない

爽やかな風が吹く丘の上、エルリンは普段着で立っている。


「エルリーン!」

坂道を登ってくる少女がいる。


ーーあれは、ミルトリア

故郷の村で一番中の良かった女の子。

少し年上で、お姉ちゃんのような存在だった。


村を出ると聞いた夜、涙が止まらなかった。


元気にしてるのかな?


「エルリン!」

「ママー!」

あっちにいるのは・・・。

靄が掛かっていて顔がわからない。

確か・・・家族?


「エルリン」

優しい声がする。

あれは、ロゼッタ!


会いたかった!ずっと会いたかった!


あなたのハーブティーが飲みたい!


あれ?走ってるのに、近づけないどうして!?


足は確かに動いているのに、景色だけが遠ざかっていく。


「エルリン、シャロンを・・・お願いね」


待って!シャロンは無事なの!?


ロゼッタ!ロゼッターー!


「リン、起きてください、アルバに着きましたよ」

エルリンはファフナロッタの優しい声で起こされた。

「泣いているのですか?」


「え?ああ、なんでかな?」

エルリンは涙を手で拭った。


表はまだ暗く、日の出前のようだ。


「ふぁぁぁ!」

エルリンは大きなアクビをする。


やがてダネルがお供を連れて歩いてくる。

「リン、これは何事だ?」

馬車から次々と降りる人々を見てダネルは困惑する。


「あ、これは・・・」

エルリンは事の成り行きをダネルに説明した。


「フム・・・まあ、そういうことなら取りあえずはここで面倒を見よう、まずは一息ついてもらって、それから今後の話をしょう」


村人達がダネルの部下の案内で、ホールに案内される中、アストリッドだけはリンから離れようとしない。


アストリッドはエルリンのマントの裾をギュッと握りしめている。

エルリンがアストリッドを見ると、泣きそうな目でエルリンを見つめている。


「皆と行かないの?」

エルリンはアストリッドの頭を撫でる。


「いや、絶対にいや、リンと一緒がいい・・」

アストリッドは涙を流して懇願する。


「フフフ、えらく懐かれましたわね、獣同士、相性が良いのではなくて?」

レミーが腕組みしながら楽しそうな顔をする。


エルリンはレミーのイジりに何も言わず、アストリッドの目線と同じ高さになるようにしゃがみ込んだ。


「む、無視ですの・・・」

レミーが少し不機嫌になる。


エルリンはアストリッドの頬を優しく撫でて、笑顔で言った。

「あなたの面倒は・・・私が見るわ」


アストリッドはエルリンに抱きつき、顔をエルリンの胸に埋める。


その日から、アストリッドはエルリンと生活を共にすることになる。


買い物に行くときも。

「リン!あれ何!?見てもいい?」


食事をするときも。

「パンって、こんなにフカフカなんだね!すごくおいしい!」


風呂に入るときも。

「あったかいね〜お風呂って気持ちいいんだね!」


眠るときも。

「目が覚めたとき・・・リンはいるよね?」

アストリッドはリンの手を握る。

少しうなされた時も、何かを探している。


エルリンはアストリッドがティンテッドという理由で、村人から奴隷のような扱いを受けていたと知る。


アストリッドの健やかな寝顔を見て、エルリンは呟く。

「もう迷わない、人族として正義なんて、必要ない・・・」


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