静かなる攻略
ファフナロッタは本陣の様子を、物陰から伺っていた。
本陣から兵士が続々と出ていく。
エルリンの作戦で、毒蝶のラファエラがこの一連の騒ぎの主犯とされている為、兵士が総力を上げているのがわかる。
盗んだ資料にあった警備体制マニュアルにも目を通している。
貯水池は建物の裏にある。戦闘は極力避けたい。
ーー戦闘は不得意じゃない、あの2人が異常なだけで、ここにいる貴族の護衛程度の相手に引けは取らない。
だけど、私にはあの2人に無いものがあると信じている。先見の明は私の最大の武器だ。
ファフナロッタは自分の頬を叩いて気合を入れる。
「ーー集中!」
本陣の見張りの死角の外から大回りして、塀に背中を付けて張り付く。
周囲を警戒しながら、一気に塀を飛び越える。
着地時も周囲を再度警戒する。
見廻りの気配に気付くと、植え込みに身を隠す。
ファフナロッタは他の2人に比べて小柄であることも強みにしている。
見廻りをやり過ごしながら、素早く建物の裏へ向かう。
「かつては疾風と呼ばれた私だ、やれるわ!」
貯水池にあと一歩のところで、通路に見張りがいることに気付く。
あまり悠長にしている暇はない。
ーーーやるしかない
ファフナロッタは何食わぬ顔をして、見張りに向かって歩いていく。
「誰だ!止まれ!」
「あ、こんばんは!」
ファフナロッタはしゃあしゃあと言った。
「隊長さんに届け物なんですが、隊長さんは・・・?」
兵士との距離を縮めていく。
「な、なに?どうやって入っ・・・」
「テンプテーション・・・」
次の瞬間、兵士はファフナロッタの目に吸い込まれそうになる。
「あなた、お名前は?」
「な、名前・・・ブランド・・・」
兵士がうっとりとした眼差しになる。
「ブランド・・お願いがあるの」
「何でも・・・する」
ブランドが持っていたショートスピアを落とす。
「これを、貯水池に入れてきて欲しいの・・・」
「これを、入れる」
「そう、いい子ね、やってくれたら、ご褒美を〜あ・げ・る」
「やる、ご褒美・・・欲しいです」
「じゃあ、よろしくね」
ファフナロッタは闇に溶けるように姿を消す。
「はっ!俺は・・・これは何だ?あ、貯水池に入れるんだった、そうだ、ご褒美だ、だから・・・入れないと・・・」
ファフナロッタは素早く本陣を後にする。
「こちらファフナロッタ、本陣貯水池を攻略!」




