存在意義
日が暮れて、隠れ家の周りにも警備兵の影が見え始めた頃、3人はそっと隠れ家から抜け出し、作戦を開始した。
エルリンとレミーは、ワザと警備兵に見つかるように広場に向かって走り出した。
「打合せ通り、私が撹乱します、レミーは抜け道へ」
「それではここで分かれますわ、健闘を祈りますわ!」
レミーは闇の中に消えていった。
エルリンはフッと笑みをこぼす。
「今日は、全力出せそうね」
追っ手がエルリンに群がってくる。
数は20、30、どんどん増え続ける。
「こちらラファエラ、敵を引きつけつつ、12地点を移動中」
「こちらレミー、あと2分で抜け道入口付近に到着」
「こちらファフナロッタ、本陣到着、状況観察中」
エルリンは路地の袋小路に追い詰められる。
じりじりと詰め寄る兵士達が一斉に武器を構える。
「ラファエラだな!大人しく投降しろ!」
「死にたい奴から前に出なさい」
エルリンはギフトヴィントミューレを構え、呼吸を整えると、身体強化術を発動する。
「クロスボウ構え!」
隊長らしき兵士が、指揮すると、後方に構えていた兵士がエルリンと距離をとりクロスボウを構える。
「風の妖精を力を貸して!ミサイル・ディフレクション!」
エルリンは風の妖精魔法を唱えて、射撃攻撃の防御を行う。
狭い路地に3人の兵士が2列でクロスボウを構え、エルリンめがけて発射する。
それと同時にエルリンは前に走り出す。
ミサイル・ディフレクションで矢が5本逸れ、1本はエルリンの肩をかする。
次の瞬間、エルリンがウォーハンマーを目にも止まらない速さで振り抜くと、3人のクロスボウを構えた兵士は、血飛沫を上げて四散する。
怯む間も与えず、ウォーハンマーを振り返すと、後ろにいた3人も断末魔の悲鳴を上げて絶命する。
狭い路地で、兵士達は怯えた声を上げてひしめき合っていた。
誰一人、最初の一歩を踏み出せない。
足元には、仲間だった肉片と血溜まりが広がっていた。
「その死体を乗り越える勇気のある奴は、かかってきなさい」
エルリンは体中に血飛沫を浴びていた。
そして、シュトラーダにいた頃を思い出していた。
誰が呼び始めたのか――「赤い戦鬼」。
戦場の私は、不思議なくらい冷静だった。
体は勝手に動き、恐怖はどこにもない。
・・・嫌だったはずなのに。
これこそが、私の存在意義だったのかもしれない。




