共犯者
ファフナロッタはダネルをかなり警戒している。
今にも斬りかかりそうな勢いだ。
しかし、ダネルは一切動じない。
「あ、これは失礼しました、自己紹介がまだでしたね、私はリン、リン・ファ、こちらのヴァンパイアがファフナロッタです、彼女、凄く優秀なんですよ」
エルリンは緊迫した空気をほぐすかのような、明るい物腰で自己紹介した。
「ハハハ、やっと名前が聞けましたね、リンにファフナロッタか、よろしく頼む」
ダネルはエルリンの空気にワザと乗せられた様子だった。
「お互いの利益になるよう、建設的に話をしましょう」
エルリンも飲み物を注文する。
「リン、ヴァンパイアとバレた以上、シュナイゼル様のお手を煩わせるような事は・・・」
「分かってる、敵になるようなら容赦しないから」
エルリンとファフナロッタが口元を隠しながら、小声で話をする。
「今日の仕事・・・あの子供はどこから?帝都・・・かしら?」
エルリンは飲み物を一口すすりながら訊ねた。
「この街、アルバは我々黒の翼が、経済の8割を牛耳っている、しかし、王都の経済は破綻しかけている、貧富の格差が開きすぎて餓死者が続出、貴族は堕落の一途、貧困層の人間をただ死なせるよりは、買い取った方がマシな事もある」
「回りくどいのは嫌いだから、単刀直入に言うわ、その商売、こちらも乗らせてほしいの」
エルリンは身を乗り出した。
「フム・・・」
ダネルは少し考えた。
「まさかとは思うが、狙いはヴァンパイアの食料かね?」
エルリンは黙って首を縦に振った。
周囲がざわつき、緊張が走る。
「リン・・・それを言っては・・・」
「わかってるわ、でも、ここまで来たら引けない」
ファフナロッタの不安に、エルリンは結果で示すしかないと思った。
「なるほど・・・フフフ、面白い!いいね!実にいい!」
ダネルは手を叩き、大声で叫ぶ。
エルリンは少しシュナイゼルに似ていると感じた。
「そこまで晒してくれたのなら、こちらも手の内を見せないわけにいかないな、我々は帝国の経済を牛耳る計画をしている」
ベングッドが驚き、思わず声を上げる。
「ダネル様、こいつらに言って大丈夫なんですか!?」
「ベングッド、ヴァンパイア軍の力を知らんのか?」
「あ、その、ランディル最強の勢力とは・・」
ベングッドは恐る恐る答える。
「ゼルギアはどこと戦争しても負ける、シュトラーダは魔物軍との戦いのせいで、ゼルギアに攻めてこないだけだ」
ダネルは一度目を閉じた後、目を見開いて微笑みを浮かべる。
「ヴァンパイア軍との取引、吉と出るか凶と出るかは分からんが、面白いではないか!」
ダネルはエルリンに手を差し出し、握手を求めた。
「改めて、私は黒の翼の首領、ダネルだ。」
「よろしく頼みます」
エルリンは握手を受け入れた。
「堅い話は明日からにして、今日は宴会という事でどうだろう?リン」
「いいわね、賛成です!」
エルリンは満面の笑みで答えた。
「リン、大丈夫ですか?」
ファフナロッタは不安をぬぐえない様子である。
「懐に入れただけでも上出来だと思ってほしいなぁ〜」
エルリンはファフナロッタの肩に頭を乗せた。
「どうなっても知りませんよ、とにかく、一度シュナイゼル様に報告しないと・・・」
ファフナロッタは少し呆れた表情を見せた。




