試される者
薄暗く、人の出入りもあまりない、地下の酒場にエルリンとファフナロッタは入っていく。
ファフナロッタの忠告を受けて、エルリンは装備一式を身に着けて来た。
ここへ来る途中。
「そうそう、ファフナロッタ、あなたが戦うところを見たことが無いのだけれど、お強いのかしら?」
エルリンは少しからかうように言った。
「リンほどではありません、ですが人間時代は【疾風のイルナ】で通ってました」
「疾風のイルナ・・・すばしっこいイルナみたいで可愛い!」
エルリンは優しい笑顔で言った。
「昔の話です、とにかく、有事の際は私があなたを守ります」
「頼もしいわ、そんな事言われたのは子供の時以来かな・・・あなたが一緒で本当に良かった・・・」
嬉しさと淋しさが混ざったその表情に、ファフナロッタはかける言葉を失った。
店の奥から顔色の悪い男がやって来た。
「こちらへどうぞ・・・」
店の更に地下へ案内されたエルリンとファフナロッタは、テーブルと椅子以外何もない広間に辿り着く。
そこにはベングッドの他に数名の人間がいた。武装した屈強そうな用心棒と思われる男が3名。テーブルの上座に座っている男は少し雰囲気が違う。ベングッドが緊張しているように見える。
その男は綺麗な身なりをしているが、隙のない雰囲気と鋭い目付きをしている。
張り詰めた雰囲気の中で、エルリンが最初に口を開いた。
「依頼された件、ちゃんとこなしたわよ」
「君が噂のエルフかな?」
上座の男が品定めするようにエルリンを見た。
「どんな噂かしら?」
エルリンは少し目を細めた。
「この情報屋のベングッドを気迫だけで殺しかけたとか?」
「少し威圧しただけよ、あなたはそんな話をする為に来たの?」
用心棒がエルリンを睨見つけた。
「いやいや、悪かった、私はダネル・ストークスと言うもの、まあベングッドの上司と言ったところだ、ベングッドは知っているね、この情報屋の名前だ、今日私がここに来たのは、凄いエルフの女性がいると聞いてね、まあ、とりあえず座ってくれ」
エルリンとファフナロッタはテーブルの椅子に腰掛けた。
「私はゼルギア帝国の内情が知りたくて来たのよ、だから情報が欲しい、そちらが必要なら仕事も請け負う、お互いギブアンドテイクの関係を築きたいの」
エルリンは物怖じせずにキッパリと言い放った。
ダネルは目を閉じて少し考えると、酒場のスタッフらしき女性に手を挙げた。
やがて飲み物が運ばれてきて、ダネルはそれに口をつけると話を続けた。
「なるほど、それはこちらにとっても願ってもない話だ、しかし、そちらは我々について多少なりと理解しているようだが、こちらは君らが何者かよく分かっていない、それではフェアな取引とは言えない」
ダネルは飲み物を飲み干すと、エルリンに鋭い視線を向けて言った。
「そちらの赤髪の女性はヴァンパイアだね?」
周囲がざわつく。
「リン、皆殺しにしましょう!」
ファフナロッタは立ち上がって銀の短剣を両手に構えた。
「駄目よファフナロッタ!」
エルリンはファフナロッタを制し、言葉を続ける。
「何か問題でも?」
エルリンがダネルを睨みつける。
「・・・なるほど、確かに大した問題ではない」
ダネルはフフと笑った。
「余談だが、少し前、ゼルギア軍が犯罪者をシュトラーダに逃亡させて混乱を狙う作戦を行った、その犯罪者の1人が手足を切断されて送り返されるという事があった、男の話では、それをやったのはウォーハンマーを持ったエルフだと・・・」
ダネルがエルリンを睨み返して続ける。
「興味深い話だろ?」
「もう一度聞く、君らは何者だ?目的は何だ?」
張り詰めた空気の中、エルリンとダネルは微笑みながら睨み合っていた。




