消えゆく良心
すっかり夜も更けた頃、エルリンは建物の陰に隠れて様子を伺っていた。いつもの装備は宿に預け、目立たない服装で。
1時間程経った頃、エルリンの後ろから足音がした。
「ファフナロッタ、お疲れ様」
エルリンは後ろを振り向く事なく言った。
「リン、まだ来てないようですね」
「そうね、本当に来るのかしら?」
「ですね、何を運ばせるつもりでしょう?」
「ろくな物じゃないでしょうね」
エルリンは苦笑しながら言う。
「そっちはどうだった?」
ファフナロッタを見ながら訪ねる。
「あの情報屋の名前はベングッド、バックにいる組織は犯罪組織の【黒い翼】と呼ばれる連中です」
「この街は聞いてたゼルギアのイメージと少し違うわね、なんだか活気があるわ」
エルリンは様子を気にしながら会話を続けた。
「商人の話では、その黒い翼が関係しているみたいですね、裏組織の影響力が強いせいで、貴族も手を出せないようです」
「ファフナロッタは仕事が出来るね〜、そのおかげで絵が描けそうよ、ありがとう」
エルリンはファフナロッタに微笑んだ。
「リンは何だか楽しそうですね」
ファフナロッタも少し笑みを見せた。
「来た!」
エルリンは急に強張った声を出した。
通りを3人の男が歩いて来た。目印の青いカバンも持っている。
エルリンは3人の男に近づくと。
「今夜泊まれる場所を知りませんか?」
合言葉である。
「ここを真っすぐ行って、細い路地を右に、次を左です」
男の1人が返す。そこに物を置いたという説明である。
「ありがとう」
エルリンは頭を下げる。
エルリンとファフナロッタは指示された場所に向かうと、大きなゴミ捨て場があった。
「何かわかっちゃったかも・・・」
エルリンはゴミ捨て場の扉を開ける。
その中を覗くと、大きな麻袋が捨ててある。
よく見るとその麻袋は少し動いていて、時折声を上げている。
「リン、これは・・・」
「ええ、多分、子供よね」
「仕方ありませんね、仕事ですし」
ファフナロッタはヴァンパイアらしい振る舞いを見せた。
「そうね」
エルリンはファフナロッタに聞こえないくらい小さな声で、「ごめんね」と呟くと、睡眠効果のある匂いが出る薬を麻袋の中に入れた。
「さあ、運びましょう、ファフナロッタ」
エルリンはあらかじめ指定されていた小さな小屋に、麻袋を置いた。
エルリンは思った、少し前ならもっと胸が痛んだのに・・・ヴァンパイアに手を貸すと決めた以上、一つ一つに感傷を抱いていては務まらない。
「リン、急ぎましょう、ベングッドに報告を・・・」
ファフナロッタはやはり冷静だ。
「わかったわ、業務完了・・・」




