悪の流儀
エルリンはスカウトギルドで、ギルドマスターと睨み合っていた。
「あんた、見慣れねぇ顔だし、相当の手練れだろ、怪しいんだよ、素性を明かしてもらわないと情報はやれねぇ」
ギルドマスターが詰め寄る。
「さっきから言ってるじゃん、他所から来た冒険者なんだから何にも分からないのよ、証明しようが無いし!」
エルリンは苛立ちながら言った。
「そのウォーハンマーにレザーアーマー、並の冒険者が持てるもんじゃねぇ・・・」
ギルドマスターは葉巻に火をつけ、一服すると、細めた目でエルリンを見据えた。
「それに・・・通行証はどうやって手に入れた!」
「偶然助けた商人にもらったのよ!」
「警備兵を呼んでもいいんだぜ・・・」
ギルドマスターはあしらうように言った。
「私は、この国の噂を聞いて救いたいと思って来たのよ!・・・・なによ!もういい!」
エルリンは怒ってギルドを後にする。
「リン・・・その様子だと、成果を聞くまでも無いですね・・・」
ファフナロッタはそれ見たことかと言いたげな顔をしている。
「・・・そう・・・でもないわよ」
「そこのエルフのお嬢さん・・・」
エルリンの背後から声をかける中年の男がいた。
ファフナロッタがエルリンを庇うようにその男の前に立つ。
「ファフナロッタ、大丈夫だから・・・」
ファフナロッタをなだめると、男に笑顔で応えた。
「何かご用かしら?」
「情報が欲しいんだろ?」
「ええ、欲しいわ!」
エルリンは目を輝かした。
「ちょいと俺の仕事を手伝ってくれたら、俺が好きなだけ情報をやろう」
男は不敵な笑みを見せた。
「いいわね、願ってもない話だわ」
エルリンは即答した。
「リン!さすがに不用意です!自重を・・・・まさか、これが狙いですか?」
ファフナロッタは初めて驚きが顔に出た。
「やるなエルフの姉ちゃん、正面からギルマスに言っても駄目なのがわかっててやっただろ?俺はそういう頭の回る奴は嫌いじゃねぇ」
男は願ったり叶ったりだと言わんばかりのようだった。
「お二人さん、異論はないわね、どこかでエールでも飲みながら話をしましょう、喉がかわいちゃった」
エルリンは満面の笑みで言った。
地下の酒場に来た3人は、飲み物を注文する。
「お姉さん、エール3つね〜」
エルリンが最高の笑顔で注文する。
そのすぐ後、情報屋の男の顔を見る目つきに凄みが増す。
「で、何をさせようと?」
情報屋は、その目に恐ろしい圧迫感を感じて冷や汗をかく。
「い、いや、その軽い仕事なんだが・・・待て、あんた、今まで何をしてきたらそんな目が!」
「私の過去は関係ないよね?1度目はあんたが望む仕事を受けてあげる、でも、その後はこちらの要望にも応えてもらう」
情報屋が目を合わせられないくらい怯えている。
エルリンの目は「赤い戦鬼」そのものだった。
ファフナロッタもこんなエルリンは見たことがなかった。
「あ、ああ、わかった、だけどな、俺に手出しするなよ、俺の後ろには・・・」
情報屋がエルリンを脅そうとした瞬間、エルリンはテーブルを叩いた。
バン!
「それは脅し?私の後ろに何がいるかも分からずにそんな脅しをかけるつもり?思ったよりバカなのね」
エルリンは殺意むき出しの目で情報屋を睨んだ。
「私に声をかけた時点で、釣られたのはあんたなのよ、ここで降りるって言うなら拷問したっていいのよ」
かつて戦場で数多の命を奪った女の目をしていた。
情報屋は頭を抱えてガタガタと震え始めた。
「リン、もうその辺で・・・気迫だけで殺しかねない」
ファフナロッタがエルリンを止めた。
ファフナロッタの言葉にやりすぎたと感じたエルリンは、営業スマイルのような笑顔で話を続けた。
「あ、安心して、ちゃんと仕事はするし、お互い良好な関係でいましょう!ごめんね〜」
「ほんと・・・何者なんだ・・・まあいい、仕事の話をしよう・・・」
「エールお待ち!」
少女がテーブルにエールを運んできた。
「ありがとう!さあ、乾杯しましょう!」
そう言ったエルリンの笑顔を見て、ファフナロッタは首を傾げた。
「シュナイゼル様に似たのかしら・・・」




