ヴァンパイア6元始 シュナイゼル
ゼルギアとの国境付近にボスを生きたまま投げ捨てた後、エルリンは一度村に戻ってきた。
フラフラしたおぼつかない足取りで、賊の死体が転がる道を歩く。
「また、1人になっちゃった・・・」
「ロゼッタのハーブティーが飲みたい・・・」
涙が止まらない。
ドス!
エルリンの肩に矢が突き刺さる。その場に倒れ込んだエルリンが、屋根の上にいる弓を持った雑兵の生き残りを見つけた。
倒れたままエルリンは
「風の妖精よ力を貸して、ウィンドスラッシュ!」
雑兵は風の刃で胸を切られて屋根から落ちる。
「ぐはっ!」
エルリンは立ち上がり、肩の矢を抜いた。
「つっ!」
落ちた雑兵に近づき、息があるのを確認すると、抜いた矢で目を突き刺した。
「こんなこと、したくないのよぉ・・・あんたたちが悪いんだからね」
!
エルリンはとんでもない気配が近づいてくるのを感じ取った。
「なに、この感じ!?」
後ろから!エルリンは振り向いた。
「ん?なんだこの村は、戦でもあったか?」
そこにいたのは3人の、恐らくヴァンパイア。
ヴァンパイアがこんな所をうろうろしてるなんて有り得ない。
3人の内2人は恐らくブラッドナイトで男と女が1人づつ。
問題は真ん中の男のノーブルヴァンパイア、凄い威圧感だ。
「シュナイゼル様・・・」
女のブラッドナイトがエルリンを指さす。
「エルフか・・・ほう、なかなか美しいな・・・」
ノーブルヴァンパイアがエルリンを舐めるように見る。
エルリンはウォーハンマーを構える。
ブラッドナイトとなら互角かもしれないが、2人相手となると勝ち目は薄い。
それに真ん中の奴は・・・勝てる気がしない。
ヴァンパイアの不死者の王国には、6元始と呼ばれるヴァンパイアがいて、人族がどうあがいても彼らには勝てないと言われている。
ヴァンパイアはアンデッド軍とよく戦争をしているが、他の軍とは戦争はしない。
どちらかと言うと、コソコソと町に潜入し、人をさらって仲間に引き込んだりエサにする。
「ヴァンパイアがどうして・・・・」
エルリンが身構えながら訪ねる。
「散歩だよ、ただの散歩、私の趣味でね」
シュナイゼルと言うヴァンパイアが、エルリンを横目で見ながら話をする。
「ん?・・・泣いているのか?・・・フフ、少し私と話をしないか?」
エルリンの精神耐性はかなり高い、だが、シュナイゼルの魔眼に抵抗しきれず、体の自由が利かないことに気付く。
「わかった、話をする・・・」
「いい子だ・・フフフ」
シュナイゼルは勝ち誇った顔をしてエルリンに歩み寄る。
「オッドアイか、本当に美しい」
シュナイゼルはエルリンの顎に手を添えて少し持ち上げた。
「わ、私はヴァンパイアには・・・ならない・・・エルフとして・・・死ぬ」
唇をグッと噛み締め、誘惑の魔眼に必死で抵抗する。
「面白い!気に入った!貴様を配下にせず、エルフとして迎えてやろう!」
シュナイゼルは高らかに笑いながらエルリンに背を向けた。
エルリンは魔眼が解けて膝から崩れ落ちた。
「なに、どうゆうこと?」
男のブラッドナイトがシュナイゼルに詰め寄る。
「あの女を連れて帰るのですか?食料ではなく?」
「ああ、あのままがいい、楽しめそうだ!おい、エルフ、名前は何という?」
エルリンはウォーハンマーを杖のようにしてへたり込みながら答えた。
「エルリン、エルリン・ファリル・・・」
「エルリン、いい名前だな・・・私はシュナイゼル・ブルノンワンス=アモロルトゥ、ついてこいエルリン、一緒に食事をしよう」
シュナイゼルはエルリンに右手を差し出した。
エルリンは無意識にその手を取り、彼らについていく気持ちになっていた。
「そうだ、先に私の誠意を示してやろう」
シュナイゼルはエルリンの首輪にそっと手をかざし、呪文を唱えた。すると、エルリンの首から忌まわしき首輪がポロリと外れる。
「お前は自由だ・・・」
エルリンは3人の後ろを歩きながら、心の中で呟いた。
「私は、何がしたいの・・・?ロゼッタ、教えて・・・」




