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狂気に落ちたエルフ

エルリンはメニス村へと帰路を急いでいた。

首輪の事は追々考えながら、ロゼッタ達と充実した日々を過ごすのも悪くない。

そう考えながら、草原を早足で横切っていく。


メニス村に近づくに連れて、何か胸騒ぎがしてくる。

「なんだろう・・・」


すっかり日が暮れていたが、もうすぐ村に到着する。

「え、あれは・・・」


村から煙が上がっているのが見えた。

エルリンの鼓動が高鳴り、自然と走り出す。


村の入り口に着くと、広場あたりから煙が上がっているとわかる。村の様子も明らかにおかしい。


見張りの自警団が倒れているのがわかる。

エルリンは駆け寄って抱き起こすと、腹部を刺されて息絶えていた。


何かとんでもない事が起きている。


「はっ!ロゼッタ!」


エルリンは丘に向かって走り出した。


「どうか無事でいて!」


ロゼッタの家が見えてきた。

入り口の扉が開いている。


エルリンは部屋に飛び込む。


「ロゼッタ!シャロン!」


バタバタと他の部屋も見て回る。


「二人とも返事をして!・・・はっ!」


床に血痕を見つける。

外へと引きずられた後がある。


急いで外にでて村に戻る。


「ダメだ!こんなのダメだ!」


広場の方へ身を隠しながら忍び足で移動する。

途中、明けっ放しの家や血痕が目に入る。

同時に騒ぎ声が聞こえてくる。


物陰に隠れて、広場の様子を伺う。

何か焦げ臭い匂いが漂ってくる。

エルリンはその光景に絶句した。


明らかに村人ではない、賊のような連中が飲み食いしながら騒いでいる。


そして、死体の山が焼かれている。

それが煙の原因だった。


エルリンは頭が真っ白になった。

ロゼッタとシャロンは・・・?

あいつらは何者?


いや、違う・・・・


感情が押し寄せてくる。


この感情は・・・・明確な殺意


私の居場所・・・・


ウォーハンマーを持つ手に力が入る。

エルリンはゆっくり広場に近づく。

呼吸を整えて、身体強化術を使う。


人を救ってきたこのウォーハンマー、こんなことに使うなんて・・・


賊らしき男の一人がエルリンに気付く。

「ボス!エルフがいますぜ!めっちゃ美人ですよ!」


座っている大柄の男がボスのようだ。

「生け捕りにしろ!」


ボスが雑兵に命令する。

「エルフの姉ちゃん!大人しくしな!」

数人の雑兵がエルリンに襲いかかる。


エルリンのウォーハンマーが黒い弧を描くと、血飛沫を上げて雑兵が吹き飛ばされる。


他の雑兵達が驚き、たじろぐ。


「てめぇら、何ビビってやがる!行けぇ!」


「うわぁぁぁぁ!」

雑兵がエルリンを取り囲み、一斉に襲いかかる。


エルリンは雑兵を圧倒するスピードで動き回り、次々に雑兵を叩き伏せていく。


見かねたボスが隙を見て、エルリンにヘビーアックスで斬りかかる。


エルリンは、後ろに目がついているような反応速度でそれをかわす。


「お前は後でゆっくり料理してやる、聞きたいこともあるしね」

血まみれの顔のエルリンが、狂気に満ちた目でボスを睨みつける。


「ぐう!」

ボスがエルリンの気迫に押されそうになる。


一瞬で雑兵を全滅させたエルリンは、ボスの正面に立ってウォーハンマーを構える。

「お前らは何者だ」


「フン!俺たちはゼルギアの犯罪者だよ、自由の代わりにシュトラーダの辺境を襲うように言われたんだ、装備まで支給されてな」

ボス不敵な笑いを浮かべた。


「何が目的なの?」

エルリンが間合いを詰めながら続ける。


「さあな、混乱でも狙ってるんじゃねぇか?」

ボスがヘビーアックスを構える。


「牧場にいた親子はどうしたの?」


「さあな、いちいち殺した相手が誰なんて気にしてねぇよ」

そう言うとエルリンにヘビーアックスを振り下ろす。


エルリンは風のような速さで飛び込み、ボスのヘビーアックスを持つ手にウォーハンマーを振り下ろし、ボスの手首を砕く。

「うぎゃあ!」

ボスが悲鳴を上げて、ヘビーアックスが地面に落ちる。


腕を押さえながら痛みで転げ回るボス。


エルリンが左足首にウォーハンマーを振り下ろすと、ボスは更に大きな叫び声を上げる。

「や、やめてくれ、殺るなら・・・一思いに・・・」


エルリンはボスの顔にウォーハンマーを乗せて、狂気に歪んだ笑みを浮かべて言った。

「簡単に死ねると思うなよ」


ボスはエルリンのその顔を最後に気を失った。


ボスは気がつくと、縛られて身動きが取れないようにされていた。

「まだ・・・生きてる・・のか・・・・はっ!」

ボスは驚愕した。両手両足が切り落とされていた。

しかも死なないように治療されている。

「ヒィィィ!」


そして、正面には焚き火を起こしているエルフがいる。


焚き火で何かを焼いている。

恐らく自分の両手両足だ。


「お、お前、イカれてる!このイカれエルフめ!」

ボスは恐怖で泣きながら叫んだ。


エルリンには全く響いていない。

「あんたをその格好のまま、ゼルギアに送り返してやろうかしら、あ、左手が焼けたわ、食べる?」

ボスの焼いた左腕をボスの口に押し付ける。


「や、やめろぉ!」


「口を開けろ!ゴミ野郎!」

エルリンはボスの腹に蹴りを入れる。

「ぐはっ!」


思わずボスが口を開けると、エルリンは焼いた左腕をボスの口に押し込む。

「むぐぅ!」

もがき苦しむボスを見て、エルリンは壊れた笑い見せる。


「自分でも不味いと思うでしょ?私もさっき一口食べただけで吐いちゃったわ!」


「アハハハハハハ!」


ーーー私の拠り所を奪ったんだ、地獄では済まないと思え!


エルリンは怒りに任せて人間を惨殺し、血まみれで相手をいたぶる、狂気に満ちたエルフへと成り果てた。


だが、その目には、何故か涙が溢れていた。

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