賢者グリベズ
ジョシュから聞いた場所と地図を頼りに、グリベズのいる集落を目指すエルリン。
どこまでも広がる草原を歩いていた。
「泊まれるような場所は・・・当然無いか」
間もなく日が暮れるので、野宿の用意をすることにする。
焚き火にあたりながら、ロゼッタの作った弁当を食べることにする。
「やっぱりロゼッタのご飯はおいしい」
少しさみしげな顔で1人呟く。
次の日、日の出とともに出発したエルリン。魔物との遭遇を警戒しながら集落を目指すが、少し方角を間違ったのか、予定通り到着出来なかった。日が暮れて、何とか御者の休憩所に辿り着いた。御者が馬車を停めて休息をとる場所だ。
エルリンは御者に集落の場所を教えてもらい、その日はそこで寝泊まりした。
次の日の昼頃、何とか集落に辿り着くことが出来た。
平原の中に、簡易的な柵が施してあり、木や藁で作られた家が並んでいる。
槍を持った見張りらしき若い男と目が合う。
「あんた、何か用か?」
見張りは疑いの目を向けながら言った。
「あの、私、エルリン、エルリン・ファリルと申します、こちらの集落にグリベズさんはいますか?」
「あ〜、またか、あの家だ、ほら、変な看板の出てる」
見張りは適当にあしらうように答えた。
「ありがとうございます」
エルリンは丁寧にお礼を言うと集落に入った。
エルリンはグリベズの家の前に来ると、木の扉をノックして挨拶をした。
「すみません、私はエルリン・ファリルと申します。グリベズさんおられますか?」
しばらくして、中から声が聞こえた。
「空いとるぞ、入れ」
「あ、はい、失礼します」
エルリンはそう言って、ゆっくり扉を開けて中に入る。
中は色々な物が散らかって雑然としていた。手前にテーブル、その奥に誰かが机に座っている。
「なんじゃ?ワシに何か用か?」
「グリベズさんですよね?私、エルリン・ファリルと申します」
エルリンは背中を向けたままの男に挨拶をした。
「それはさっき聞いた、何の用だと聞いとるんだ!」
男は振り返ると、声を荒げて言った。
「ん?エルフか、珍しいのう」
その老人は本を読んでいたようだ。
「あの、実は私がしている首輪を外したいのですが、お知恵をお借りできないかと・・・」
エルリンは訊ねた理由を簡潔に話した。
「表の看板は見たか?」
「あ、はい、相談料1件につき銀貨3枚と・・」
「払えるのか?」
「もちろんです」
「よし、聞こう、言っとくが前払いじゃぞ」
グリベズは立ち上がり、テーブルに腰掛けると、右手を出して銀貨3枚を催促した。
エルリンは支払いを済ますと、早速首輪をグリベズに見せた。
グリベズは首輪をじっくり眺めると、文献を引っ張り出して調べだした。
1時間くらい経った頃、グリベズは答えが出たようなスッキリした顔をした。
「やはりな、わかったぞ」
グリベズは分かったことをエルリンに話した。
通常、よく使われる「隷属の首輪」は貴族が奴隷に付けるもので、誰に隷属しているかが分かるようになっていて、居場所を示す魔法と、痛みを与える魔法が付与されていることが多い。
町に入る検問所では、この首輪をしているものは必ず拘束されて尋問を受ける。
エルリンが付けられた首輪はこの首輪に似ているが、付与されている魔法はクジミナ子爵からの命令に絶対服従の精神魔法と、探知魔法に必ず反応する魔法である。
これを外すには、効果の高い呪い効果を打ち消す魔法をかけるしか方法が無く、無理に外そうとすると首に食い込むようになっていて、最悪命を落とす。
「やっぱり、ディスペルかリムーブカースあたりよね、しかも高位クラスの・・・」
エルリンは予想通りという表情をした。
「仕方ないのぅ、どっかでそれなりの魔法使いを捕まえてたのむしか方法はない」
グリベズは眉一つ動かさずに伝えた。
エルリンはグリベズに礼を言うと、少し肩を落として集落を後にした。
「ロゼッタのハーブティー・・・飲みたいな・・・」




