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帰る場所

靄の中にエルリンはいた。


声が聞こえる。


お母さん、会いたかった・・・私、ラミーナです!


私、シャロンじゃない、シャロンって誰ですか?


私、ラミーナです。


お父さんは、死にました・・・。


最後まで、お母さんの名前を呼んでました。


お姉ちゃん!シャロンを置いてかないで!


エルリン・ファリルは私のお母さんです!


もう、私を忘れたんですね


お母さん・・・・


「はっ!・・・」

エルリンは目が覚めた。

「あれ?なんで涙が・・・」



ある日、エルリンはロゼッタに言って、夕方に1人で酒場に出かけた。

酒場に入ると、数人の客が酒を飲んでいたが、エルリンが店に入るなり客の注目を集めた。


エルフだ

いい女だな

何しに来たんだ?


客が口々に言っている中、マスターのジョシュがエルリンに声をかける。

「やあ、エルリン」

「こんばんは、ジョシュ、今日は話せる?」


「もちろんだ」

ジョシュは笑顔で応え、カウンターに座るよう促す。


「ワインをもらえる?あとチーズも」

エルリンは椅子に腰掛けると、ジョシュに注文をした。


「喜んで・・・あ、首輪の件だっけ?」


「ええ、解除魔法が使えるプリーストを知ってたらありがたいのですが」


ジョシュはエルリンにワインとチーズを出すと、首をかしげて考えた。

「まず首輪について詳しく調べて見たらどうだろう?」


「あ・・・」

エルリンは鋭い指摘に絶句した。


「どの程度知ってるんだい?」


確かに考えてみれば、聞いた情報を鵜呑みにして自分では詳しく調べていなかった。


「その手の魔導具は、使い手が嘘を教えている事が多々ある」


「そう、ごもっともな意見ね・・・」


ジョシュが言うには、この辺りには小さな集落が多く、都市に住んでいた者も、余生は田舎で暮らしたいと思う人も多いという。


「ここから2日程歩いた場所に小さな集落があって、そこにグリベズという年配の男性がいる、その人は元高位のセージだ」


「その人なら首輪の事がわかるのね!」

エルリンは目を輝かせた。


「まあ、あくまでも可能性だけどね、俺が教えられるのはそんなとこかな」


ジョシュは他にも情報をくれた。


シュトラーダ軍がディッザールから撤退したこと。


ゼルギアでは貧困層が毎日のように暴動を起こしていて、大規模な貧民狩りを行なっていること。


「人族は・・・限界かもしれないね」

エルリンはほろ酔い気分で嘆いた。


ロゼッタの家に帰る頃には、すっかり酔いは覚めていた。

「おかえりなさい」

ロゼッタは夜が更けていたにも関わらず、エルリンを出迎えた。

「あ、ロゼッタ、ごめん、起こしちゃった?」

エルリンは申し訳なさそうに言った。


ロゼッタはハーブティーを淹れ、テーブルに腰掛けた。


「いい話は聞けた?」

ロゼッタはハーブティーをカップに注ぎながらエルリンに訊ねた。


「そうね・・・あのね、ロゼッタ、一度村を離れようと思うの、首輪の事を詳しく知れるチャンスかも知れない」

エルリンは思い切った表情で、ロゼッタに想いを告げた。


「よかったじゃない、一歩前進だ」

ロゼッタはエルリンの前に、ハーブティー入りのカップを置いた。


「ありがとう」

エルリンはハーブティーをすすった。

「ああ、本当においしい、」


美味しそうにハーブティーを飲むエルリンを、笑顔で見つめながら、

「ここはあなたの家よ、必ずハーブティーを飲みに帰ってくるのよ」


「うん!必ず!」

エルリンは涙をこらえて、精一杯の笑顔をロゼッタに見せた。


まだ、ロゼッタに何も返せてない、必ず帰ってくる!

エルリンは胸の中でそう誓った。



次の日、エルリンが出発の準備をしようと、蔵の中にしまってある装備を取り出して驚いた。


全て新品のように綺麗に磨かれていたのだ。

エルリンはすぐさまロゼッタの元に駆け寄った。

「ロゼッタ!私の装備が!」


家事をしていたロゼッタが驚きながら応える。

「何かまずかった?」


「違う、凄く綺麗に・・ありがとう!」

エルリンは深々と頭を下げた。


「あ、あ〜!それね、だってあのまま置いておくと、ほら、匂いとか・・・ねぇ」

ロゼッタはワザと意地悪な顔で言うと、続けた。


「エルリンって結構お金持ちよね、驚いたわ、あ、くすねてないから安心して、それにあの綺麗な蝶々の装飾品は誰にもらったの?」

エルリンをあえて困らせるような発言をした。


エルリンは呆気に取られるあまり、ゆっくりと言葉にした。

「あ、まあ、何度も死ぬ目にあったから、思った以上に報酬がもらえてね」

「それと、あの装飾品はね・・・」


「ごめん!エルリン、ちょっとからかっただけなの、無理に話さなくていいのよ、それにごめんなさい、荷物の中見ちゃって・・・」

ロゼッタは真剣に話すエルリンの言葉を制止するように話しだした。


「・・・そんなことより、これ、お弁当」

少し気まずくなった雰囲気をロゼッタが和らげる。

「今日中に食べてね」


「本当にありがとう」

エルリンの瞳から涙がこぼれた。


「エルリン、シャロンが起きると騒ぎ出すから、早めに出発する事をオススメするわ、あの娘には私から話しておくから」

「そうね、寝顔だけ見て行くわ」

エルリンはそっと寝室に入り、シャロンの健やかな寝顔を見て小声言った。

「行ってくるね」


エルリンは装備を身につけると、グリベズのいる集落へと出かけた。


ロゼッタはエルリンが見えなくなるまで手を振っていた。


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