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ロゼッタ・ミリー

エルリンは夢を見ていた。

夫のフレッド、娘のラミーナ、3人でピクニック。

笑顔溢れる生活、ずっと続けばいいのに・・・。


エルリンは目を覚すと、知らないうちに泣いていた事に気付く。

「フレッド、ラミーナ・・・」


気持ちを切り替えて、家の中を見て回ったが、ロゼッタもシャロンもいない。

畜舎に行くと、ロゼッタとシャロンが牛の乳搾りをしていた。

「エルリンおはよう!」

「エルリン姉ちゃんおはよう!」

シャロンがエルリンの足に抱きつく。


「お姉ちゃんはお寝坊さんだぁ」

「ごめんねシャロン、あ、ロゼッタ、何か手伝えることない?」

「そうね、じゃあお願いしようかしら」


しばらくロゼッタの仕事を手伝った後、朝食の時間となった。

「ロゼッタのご飯は美味しい、シャロンは幸せだね、ママがお料理上手で」

「ママのお料理は世界一美味しいよ!」

シャロンは満面の笑みで言った。


「別に手の込んだことはしてないのよ、ホントに」

ロゼッタは少し照れた様子だった。


「シャロンはいつも何の本を読んでるの?」


「魔法のお勉強してるの」


「へぇ〜!将来は大魔導士かな?」


「魔法でママのお手伝いするの」


「シャロンは偉いね!きっと凄い魔法使いになるれよ!」


「えへへ〜!」


「・・・父親の影響なのよ」

ロゼッタが深刻な表情で付け加える。


「パパは魔法使いなんだよね〜ママ!」


「・・・」

ロゼッタは無言で寂しそうに微笑んだ。


昼食の後、はしゃぎ過ぎたシャロンはお昼寝をしていた。エルリンは後片付けをするロゼッタを手伝っていた。

「ロゼッタは私に何も聞かないのね」


「聞いて欲しいならいくらでも聞くわよ」


「ロゼッタには敵わないな・・・」


「あなたの目を見た時、凄く純粋な心の持ち主だってわかった、だけどねエルリン、あなたは純粋すぎる」


「ハハハ、何を言ってるのロゼッタ」

その後、2人は黙って後片付けを終えた。


その日の夜、エルリンは寝付けず、椅子に腰掛けて水を飲みながら窓越しに月を見ていた。

「駄目ね・・・戦ってないと、フレッドとラミーナの事ばかり・・・」

ふと誰かが部屋に入ってきた気配がした。


「エルリン、眠れないの?」

ロゼッタが心配そうにエルリンの隣に座る。


「うん、ちょっとね」


「お茶、入れるわね」


「ありがとう」

エルリンはロゼッタの入れたお茶をすすった。花のような香りがして、とてもリラックスできる味だ。

「おいしい」


「でしょ?私のオリジナルハーブティーなの」 


「ロゼッタは何でも出来ちゃうんだね」 


ロゼッタは微笑んで、エルリンに言った。

「ねぇ、エルリン、私達と暮らさない?」


「え!?」

ハーブティーをこぼしそうになる。


「シャロンも喜ぶわ・・・」

ロゼッタはエルリンの手をそっと握った。


「無理にとは言わないわ、事情は知らないけれど、あなたはずっと戦って来たんでしょ?身につけてた物を見ただけでわかるわ」


「・・・・・」

エルリンは顔を伏せる。


「ごめんね、戸惑わせちゃって、ゆっくり考えてみて・・・」

ロゼッタは立ち去ろうとした。


「・・・もう・・・」

エルリンの胸が苦しくなる。


「?」


「戦いたくない・・・怖いし、痛いし、血の匂いが、血の匂いが何日も取れないの・・・」

エルリンの目から涙がとめどなく溢れ出る。


ロゼッタはエルリンをとっさに抱きしめる。

「わたし・・・戦う事でしか認めてもらえなかった!ランディルの希望になりたかったのに!なれなかった!わたし、何も出来なかっの!」

ロゼッタの胸の中で今まで胸に溜め込んだ何かを、エルリンは吐き出していた。


「大丈夫、大丈夫だよ、エルリンは頑張ったんだよ、十分頑張った」


ロゼッタの胸の中で安心したエルリンは少し落ち着きを取り戻した。

「ロゼッタ、ありがとう、ごめんなさい取り乱して」

エルリンは照れ臭そうに言った。


「いいよ、そういう時もあるよ」

ロゼッタは寂しそうに目を伏せた。


「私の夫は、元ゼルギアの人間でね」

ロゼッタ唐突に話しだした。


「この村に来たときは、エルリン、あなたと同じ目をしてた」

「ゼルギア帝国の・・・」


「ゼルギアは貧富の格差があり過ぎて、貧民は毎日餓死する人が大勢いるらしいの」


「それは何となく聞いたことがあるわ、国力的にはシュトラーダの1/10程度だって」


「夫はそんなゼルギアを何とかしようとしていた、搾取しかしない皇帝を打ち倒そうと・・・わかる?エルリン」

「まさか、またゼルギアに戻ったの?」

ロゼッタは黙って首を縦に振った。


ロゼッタは続けた、ゼルギアは今、シュトラーダ・リミドアと戦う力も無く、少しづつ領土や同志を増やすために辺境の村を取り込む作戦に出ていると。


エルリンは納得した、ラーデル村もターゲットの一つだったのだと。メニス村は国境が近いということもあり、警備隊が駐屯しているそうだ。


エルリンには、ロゼッタのように気の利いた言葉が出なかった。

「無事に、戻ってくるといいね・・・」


ロゼッタは少し涙をこぼして頷いた。


エルリンにとって忘れられない夜となった。


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