予期せぬ死闘
エルリンは森の中を猛ダッシュで走り抜けていた。後方から大型の蜂の魔物キラーワスプの大群が迫っていた。
「最悪!しくじったわ!」
目の前を飛んでいたキラーワスプを不用心に一匹殺した結果がこれである。
キラーワスプとは、カラス程の大きさのアシナガバチである。
キラーワスプの大群、エルリンにとっては天敵とも言える。
ウォーハンマーでは到底捌ききれない。
それに、エルリンの動きがいくら速いと言っても、蜂のスピードに勝てない。
「火の精霊よ力を貸して!ファイアボルト!」
キラーワスプが炎の魔法で、一瞬足止め出来るが焼け石に水である。
「つけ焼き刃の妖精魔法じゃ、どうにもならない」
やがて群はエルリンに追いついて襲ってくる。
「うおおおおおお!」
エルリンは破れかぶれでウォーハンマーを振り回す。
数匹のキラーワスプが叩き落とされていく。
ウォーハンマーを振り切ったエルリンに他のキラーワスプが群がり、毒針で攻撃する。
エルリンは数に圧倒され攻撃を避けきれず、毒針が刺さる。
「つ!」
元々、エルフは毒に強い体質に加えて身体強化術で抵抗力が上がっていたので、数カ所刺されても無事でいられる。しかし、このまま刺され続けると、流石に死に至る。
「だめ、目眩が激しくなって・・・意識が・・・まずい、一か八か・・・」
「闇の・・精霊よ・・・力を・・・ブランク・・・マインド!」
エルリンはよろけて倒れながら、認識阻害の妖精魔法を自分にかけて、心の中で願った。
「お願い!効いて!」
キラーワスプは急に目の前の標的を見失ったように、ただ周囲を飛び回り、しばらくすると縄張りに戻っていった。
「やっ・・たわ、たす・・かった」
認識阻害の魔法も効果が切れると同時に、エルリンはフラリと立ち上がり、ヨロヨロと歩き出した。
「森を・・・抜けたら・・・村が・・・あるはず」
目的のメニス村は、シュトラーダ王国の敵対国であるゼルギア帝国との国境近くにある村でる。
エルリンは朦朧とする意識の中、おぼつかない足取りで歩き続けた。
「げ、解毒・・・を」
ウエストポーチから小さい瓶を取り出し、蓋を空けて口に流し込んだ。最後の力を振り絞って歩き続けると。
「見えた・・・建物・・・あれ・・は、畜舎?・・・もう・・少・・・し・・・」
エルリンは、牧場の畜舎と思われる場所に何とかたどり着き、藁束の上に倒れ込んだ。
「わた・・・し、死ぬ・・のか・・・な」
薄れていくいく意識の中、誰かが体を触るのを感じた。
「だ・・・れ?・・・子供?」
「ママ〜!誰か倒れてるよ〜!」




