表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/41

ラーデル村の影

エルリンは物陰に身を潜めながら、静かに村の様子を観察していた。


畑を耕す老人。

水を運ぶ女。

遊んでいるはずの子供達。


皆、生きてはいる。

しかし――笑わない。

誰も会話をしない。

表情がない。

まるで操り人形のようだった。


「……気味が悪いわね」


気配を消しながら、さらに村の奥へ進む。

すると、一軒の酒場が見えた。

昼間だというのに扉は開いており、中から人の声が聞こえない。

エルリンは慎重に中を覗いた。

十数人の村人が、椅子に座ったまま、虚ろな目で正面を見つめている。


誰一人、喋らない。

誰一人、酒を飲まない。


「……」


その時。

老人の一人が、ぎこちなく首を動かした。


「……太陽の……導き……」


別の女が続く。


「……救済……」

「……救済……救済……」

村人達が口を揃えて口ずさむ。


エルリンの背筋に冷たいものが走る。


「……洗脳?」


静かに酒場を後にする。

明らかに異常だった。


その時だった。


カラン。


後ろで何かが落ちる音。

振り返ると、小さな少女が立っていた。

八歳ほどだろうか。

他の村人と違い、怯えた目をしている。


「……お姉ちゃん、知らない人?」


「!」


「静かにして……皆に見つかる……」


エルリンは素早く少女を物陰へ引き寄せた。


「あなた、大丈夫なの?」


少女は小さく頷く。


「……私は平気。でも、お父さんもお母さんも変になっちゃった」


「何があったの?」


「一週間前……太陽神の偉い神官様が来たの」


「ハイプリースト……?」


「うん。でも、来てから皆、少しずつ変になって……」


少女は震えていた。


「夜になると、村の広場に集まるの」


「広場?」


「神官様のお話を聞いて……朝になると、みんな笑わなくなるの」


エルリンの表情が険しくなる。

本物のハイプリーストなら、こんなことはしない。

偽物か。

あるいは、何かに取り憑かれているのか。


「……その神官は、今どこにいるの?」


少女は村の中心にある、大きな館を指差した。

かつて村長の屋敷だった建物。

今では、大きな太陽の紋章が掲げられている。


「神様のお家って、みんな呼んでる……」


「……なるほどね」


エルリンはフードを深く被り直した。


もし本当に太陽神の神官なら、首輪を外す方法を知っているかもしれない。


だが――。


この異様な村の状況を見る限り、素直に会いに行くのは危険すぎる。


「まずは夜まで待ちましょう」


「……やっつけてくれるの?」


エルリンは苦笑した。


「正義の味方なんて柄じゃないんだけどね……放っておけない性分なのよ」


そう言いながら、腰のウォーハンマーを軽く叩く。

かつて赤い戦鬼と呼ばれたエルフは、再び静かに闇へと溶け込んでいった。


「私はエルリン、エルリン・ファリル、あなたお名前は?」


「わたし、プラム」


「そう、プラム、いい名前ね」


夜のラーデル村。


太陽神の紋章……やはり少し違う、太陽神を信仰するリュイが紋章をよく見せてくれた。


村人が操られているような歩調で、次々に屋敷に入っていく。

エルリンは同じ歩調で屋敷に入る。


「!」


この匂い、幻覚作用のある薬草の匂いだ!


屋敷のホールは住居感が無く、儀式を行う祭壇がある。

祭壇の前には白のローブを深々と被った男が立っている。


生気のない人々は祭壇に向かって礼拝を始める。

白ローブの男の後ろに小さな石像が見えた。


「狂いの神・・・魔神信仰か」


信仰者は、デーモンサモナーという魔法使いが多く、人を生贄に魔人を召喚する。儀式で人を人形化して操り、魔人召喚の生贄として使うのだ。

村人を元に戻すにはデーモンサモナーを倒すしかない。


「デーモンサモナーを倒さないと!」 


エルリンが白ローブの男に駆け寄ろうとした時、後ろから叫び声が聞こえた。

「きゃああああ!」


とっさに振り向いたエルリンも声を上げた。

「プラム!」


プラムが村人に追いかけられている。


「エルリン姉ちゃん!助けて!」

プラムがエルリンに向かって走ってくる。


「プラム!」

プラムを受け止めようとした時、エルリンは危機感を感じ、とっさに身をかわした。


ヒュン!


プラムの指先から長く黒い爪が伸びていて、エルリンの顔めがけて斬りつけて来たのを、エルリンは間一髪でかわした。


「プラム、あなたがデーモンサモナーね」


背中を向けたプラムが肩越しに爪を見せ、ゆっくり振り返った。

「キャハハ!せ・い・か・い、まさか避けられるなんてね〜」


「手加減しないわよ、プラム」

エルリンはウォーハンマーを構えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ