蘇る赤い戦鬼
ソヤン村に来て30年程の月日が経った。
今やエルリンがこの村の最年長で、自警団団長である。
クジミナ子爵も亡くなって、首輪がどうなるのかもわからなくなっている。
一度ティモンが嘆願書を出してくれたが、それ以来返事もない。
長命のエルリンだけが年を取ることなく、高齢の村人を何人も見送ってきた。世話になったリリアンさんも。
そして今日、もう一人大事な人を看取ろうとしている。
エルリンは仕事を終えると、大急ぎである家に駆け込んだ。
「ティモン!」
ベッドに横たわる初老の男性に声をかけた。
「や、やあ・・・エル・・リン」
「な、なんだぁ、元気そうじゃない、心配して損しちゃった」
医者が言うにはティモンは病に侵されていて、今日が峠だと言う。
「君・・に・・・・謝りた・・かった、初めて・・・来た日、何も・・・知ら・・ずに君を・・・怖がって」
「も、もう、ティモン、いつの話してるの、全然気にしてないよ」
「君に・・・伝えた・・かった、ずっと・・・君・・が・・・好き・・・」
ティモンは静かに息を引き取った。
「いやぁぁぁ!」
その日の夜、エルリンは自宅で膝を抱えて一人つぶやいた
「何で、なんでみんな、私を置いて死んじゃうの・・・」
ティモンの葬儀が終わって間もなくだった。
団員がエルリンの元に走って来た。
「エルリン団長!」
「どうしたの?」
「アンデッドの軍団が・・・すごい数で」
「え!?」
今まで野良アンデッドくらいしか村に来なかったのが、今回は明らかに村に攻め込んで来ている。
「村のみんなを避難させて!私が時間を稼ぐ!」
エルリンが団員に指示を出す。
「いくら団長が強いと言っても、あの数をお一人では!」
「いいから行きなさい!これは命令よ!」
自警団は村人を避難誘導している。
事情を悟った村人達が、エルリンに声をかける。
「エルリン、神の祝福があらんことを」
村の手前にある小さな橋の手前にエルリンは立っていた。
視界の先にはアンデッドの群れ。
「不死者とのお遊戯には飽きたのかしら?暇つぶしならわたしが付き合ってあげる、いくらでも来なさい!」
エルリンはウォーハンマーを構えて、呼吸を整えると身体強化術で肉体を限界突破させる。
「大地の精霊よ力を貸して!ロックアーマー!」
鎧に大地の精霊を宿して防御力を上げる。
そして、近づいてくるゾンビ、スケルトン、グールをウォーハンマーで薙ぎ払っていく。凄まじい威力にアンデッドは四散していく。
「この感じ、しばらく忘れていたわ!」
ウォーハンマーを軽々と振り回し、アンデッドを次々に成仏させていく。
「村人達には指一本触れさせない!」
アンデッドの群れにすごいスピードで突進し、引きつけながらまとめて駆逐していく。
「アンデッド軍を統率してる奴はどこ!」
アンデッドは統率者を仕留めれば動きが止まる。
毒の爪で傷つけられようと、脚に噛みつかれようと動きを止めない。
ウォーハンマーを振り回してアンデッドの身体を砕いていく。
「いた!あいつが統率者!グールネクロマンサー!雑魚共どけぇぇ!」
エルリンの雄叫びが戦場にこだまする。
どれくらいの時間が経っただろうか、統率者を倒したものの、エルリンはふらふらになりながら、アンデッドの群れを村に向かわせないように引き付けていた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・こっちよ、死体共!」
気づいた時には村からかなり離れたところまでアンデッドを誘導していた。
近づかない限り、アンデッドは行動を停止し、立ちすくんでいた。
「ここまで・・・くれば・・・」
エルリンはその場に倒れ込んだ。
「みんな、ちゃんと・・避難したか・・・な」




