孤独の戦鬼
第2ラウンドとも言える戦い。魔物軍は増援と合流し、明らかに戦力は増強されている。
「私に先陣を切らせてください」
騎馬に乗った騎士団長に、エルリンは進言した。
「死に急いでいるのか?」
「いいえ、魔物軍を叩き潰して、生きて帰るんです」
「フン!勝手にしろ」
号令共に、先頭の部隊が魔物軍に向かっていく。
エルリンも咆哮と共に突進していく。
エルリンにとってウォーハンマーは始めてだが、使い方は分かる。
身体強化術で腕力を強化し、重量のあるウォーハンマーをぐるぐると回しながら敵陣に突っ込む。
「エルフがウォーハンマー!」
友軍が目を疑う。
「うりゃああああ!」
力一杯ウォーハンマーを魔物に叩きつける。敵軍の先頭の魔物5匹が血飛沫を上げて吹っ飛んでいく。
先陣をエルリンの戦いが、部隊の士気を高める。
「エルリンに続けぇ!」
後方にいた兵士たちがエルリンに追従する。
進軍する部隊の目前に、魔物軍の城が見えてきた。
「見えた!」
エルリンのウォーハンマーが勢いを増し、下級魔物を薙ぎ倒していく。
ミノタウロスが咆哮を上げてエルリンに襲いかかる。
「邪魔をするな!」
ミノタウロスが振り下ろすグレートアックスをひらりとかわし、その遠心力をウォーハンマーに乗せて、ミノタウロスの右足叩き折る。
ミノタウロスが断末魔のような咆哮を上げて倒れる。
エルリンは倒れたミノタウロスの頭にウォーハンマーを振り下ろすと、頭がひしゃげて血と肉片が飛び散り、体が一瞬痙攣してミノタウロスは息絶える。
「あの女、バケモンか!?」
騎士団長は驚きを隠せなかった。
下級魔物がエルリンに怯えてたじろぐ。
エルリンは立ち止まらず、前へ前へとエルリンは敵を薙ぎ払いながら突き進む。
「この戦いに終止符を打つ!」
気がつくとエルリンだけが先行しすぎていた。
「止まれ!エルリン!そこまでだ!」
騎士団長がエルリンに向かって叫ぶ。
「えっ!?」
エルリンは何を言われたのかも分からず、一瞬動きを停めて後ろを見る。
「皆がお前のように戦える訳ではない、歩調を合わせろ!」
こちらを向いたエルリンに騎士団長が大声で注意する。
「私が突破口を開きます!」
「私の命令が聞けんのか!独断専行は重罪だぞ!止まれエルリン!」
「私が敵を引き付けつつ前進します!」
騎士団長はその言葉に激昂した。
「エルリン!貴様を拘束する!お前ら、エルリンを捕らえろ!」
「そんな、まって!」
エルリンはあまりの出来事に理解出来ず、騎士団長の命令を受けた兵士に取り囲まれる。
エルリンは捕らえられ、縄で木に縛り付けられた。
「私が一体、何をしたって言うの!」
「すまないエルリン、命令だからな、妖精魔法と身体強化術が使えないように猿ぐつわさせてもらうぞ」
エルリンは何もできず、ただうなだれていた。
どれくらい経ったのか、戦いの音がしなくなってしばらくすると、足音が聞こえてきた。
騎士団長が兵士を数人連れてやって来た。
「貴様を本国に送り返す。そこで軍法会議にかける。貴様の処遇はそこで決定する。連れて行け!」
エルリンは何も言えず、ただ従うしかなかった。




