017「水面下で蠢く脅威」
「いよいよ、ベスト16まで来たか……」
「はい。現在のところ予定通りでございます」
武道館ではウララ・ウィンスターのベスト16進出の選手紹介が行われていた。
「そろそろ、奴らの『動き』があるかもしれないので警戒をお願いしますね、レイカ」
「はっ!」
そう言うと、レイカは姿を消した。
「いよいよ、ここからか。さて…………」
一人、呟く男は生徒会長ジュリコ・ウェンポート。
「本番はここからですよ、ダイ君」
自身の外殻魔道具である剣を強く握りしめ、舞台のほうへと歩き出した。
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「団長……レオンからの伝言です」
忍者のような黒装束の男がメモのような紙切れを『団長』という者に渡した。
「ふむ。なるほど……やはりこの生徒で間違いないようですね」
男はそのメモ書きを見てフッと笑みを零す。
「皆の者、準備せよ。これよりアルキメド王立学院にて……ミーシャ・アイゼンハワーの弟子、『ダイオウガ・エスティオット』を捕縛するっ!」
おおおおおおーーーー!!!!!!!!!!!
黒装束の男たちが団長の声に一斉に士気を上げた。
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――ランカーズトーナメント会場、武道館
「ジュリアーノ国王……」
国王の横にいる屈強な男が国王の耳元で呟く。
「……どうやら『敵』が動き出したそうです」
「なるほど、いよいよか…………準備は?」
「はい。すでに準備は完了でございます」
「そうか。ところで…………二人はここに来ておるのか?」
「はっ!『息子の晴れ舞台にふざけやがって!』とすでに臨戦態勢でございます」
「……親バカだな、相変わらず」
と、頭を抱える国王だが顔は笑っていた。
「まったく………………頼りになるご両親だなっ!」
「はっ! 心強く存じますっ!」
「まあ、それは君もだよ…………レイオウガ・エスティオット君」
「はっ! ありがたき幸せっ!」
国王の横にいた屈強な男、それは…………若き王立軍新鋭隊長レイオウガ・エスティオットだった。
「レイ。じゃあ、ご両親にくれぐれも『先走らないように』と伝言をお願いします」
「かしこまりましたっ! 失礼いたします!」
そう言って、レイは急いで『ご両親』のもとへ向かった。
「いや~、久しぶりに『英雄五傑』の戦闘が見れるなんて楽しみ、楽しみ。それと……」
そう言って、国王はある生徒に焦点を合わす。
「ダイオウガ・エスティオット君。悪いけど、君には大いに注目されてもらうよん!」
ジュリアーノ国王は悪戯な笑みを浮かべ、『その時』を待っていた。
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舞台では一通り、ベスト16進出の選手すべての紹介が終わり、いよいよ試合が始まろうとしていた。
「さて、このベスト16からの対戦カードはクジを引いた選手同士の対戦となりま~す!」
そう言うと実況のウララ・ウィンスターのところに『箱』が運ばれた。
「この箱の中に各選手の名前が書かれた札が入っておりますので、今からボクが引いたお二人が第一試合の対戦カードとなります。それでは…………ウララ、引きまーーす!」
ウララが箱に手を突っ込んでゴソゴソとかき混ぜている。そして、しばらくして一本の名札を引いた。
「まず一人目は…………レオン・リトバルスキ選手ーーーっ!!」
わああああーーー!!!
会場が大きな声援に包まれた。
「一回戦からいきなりの有名人、1年生のレオン・リトバルスキ選手! これには観客も大興奮だーーー!!」
先ほどの選手紹介で『英雄五傑の息子』『ミーシャ・アイゼンハワーの愛弟子』と紹介されたこともあり、観客はレオンの登場に興奮した。
「それでは次にレオン選手の対戦相手を発表します! うーーーん……」
ウララが再び、箱の中をグルグルかき混ぜ始め、そして、1枚の名札を取り出した。
「レオン選手の対戦相手はこの人!…………ダイオウガ・エスティオット選手ーーーーっ!!」
ざわ……ざわ……。
え? 何? この観客のリアクション?
「うーん、こいつ、ここまで勝ち上がってきたけど実力がよくわからないんだよな~」
「そうそう。一回戦では掌底で倒したって言ってたけど、そんな素振りなかったもんなー」
「そうそう。あと、ここまでの試合も一回戦と同じように壁に飛ばして失神させただけじゃん。あれって、本当に掌底なのか? 何か、特殊な『外殻魔道具』じゃないのか?」
「だろうな……。なんせ、その『外殻魔道具』自体持っていないって言ってるけど、それは逆に相手をはぐらかす作戦じゃねーのか?!」
ダイのこれまでの試合内容がすべて一回戦と同じ『相手を掌底で壁に飛ばして失神』というものだったのだが、観客は皆、『本当は掌底ではなく何か飛び道具的な外殻魔道具を使っているんじゃないのか?』という疑念を抱いていた。
それもそのはず……なんせ、観客には『ダイの攻撃が見えない』からだ。
その為、観客のほとんどはダイのことを『特殊な外殻魔道具使い』という認識で見ていた。
「失礼しちゃうわね、ホントっ!」
リリカがプクッと頬を膨らませて観客にガンを飛ばす。
「ま、まあ、仕方ないですよ。私たちだって種明かしされて凝視してやっとダイの動きが見えるぐらいなんですから……」
「そりゃー、そうだけどさ……ふんっ!」
シャロンがリリカを必死に宥める。
「それにしてもダイ君、一回戦の相手……」
「うん」
そう。
ベスト16一回戦の相手はいきなりの、
「レオン・リトバルスキ……………………とりあえず、試合で直接、彼に聞いてみるよ。いろいろと」
「うん、頑張ってね、ダイ君!」
「うん、ありがとう」
「ダイ! あんな偽者チャチャっとやっつけてよね!」
「うん、わかった!」
「ダイ……ご武運を」
「うん、ありがとう、シャロン」
3人がダイに声をかけ終えたところでちょうど舞台にレオン・リトバルスキが現れ、
「……やろうか、ダイ?」
ニタッと笑いながら、ダイを煽るような言い方をする。
「ああ、望むところだ」
ダイが舞台へゆっくりと上がっていく。
わあぁぁああーーー!!!!
二人が舞台へ現れると観客のボルテージはさらに上がった。
「それではベスト16一回戦の試合開始の宣誓は毎年恒例の……我が学院長で、アルキメド王国国王ジュリアーノ国王陛下に宣誓していただきます。お願いしますっ!」
わああああああーーーーーーー!!!!!!
学院長専用の特別観覧席からジュリアーノ国王がレオンとダイの立つ舞台に降りてきた。
「やあ、みんな。今年のランカーズトーナメント、楽しんでいるかい?」
わああああああーーー!!!!
観客が拍手と歓声で応える。
「ありがとう。さて、これからベスト16の一回戦が始まるのだが一つ訂正と報告がある……」
例年とは違う挨拶に観客は『え?』と一瞬、固まった。
「何? 何? 何なのよ、一体?」
「さあ、何でしょう……何か、国王様が訂正と報告って言ってたけど……」
「そうですね。一体、国王様は何を言おうとしておられるんでしょう?」
リリカ、シャロン、クレアだけでなく、皆が同じように国王の言葉に耳を傾けている。
「まず、訂正のほうだが…………レオン・リトバルスキ君」
皆が『えっ?!』とその言葉を聞いたと同時にレオンに目を向ける。
「彼は確かに『英雄五傑』のクリフ・リトバルスキの息子ではあるが、『ミーシャ・アイゼンハワーの弟子』では……ないっ!」
「「「「「え? えええええーーーーーー!!!!!」」」」」
観客が国王の言葉に動揺の声を上げる。
国王は観客の動揺の中、さらに言葉を続けた。
「そして、もう一つの報告は…………ダイオウガ・エスティオット君」
「え? お、俺っ?!」
国王がダイの名前を出すと、本人も含めて国王の次の言葉を漏らすまいと耳を澄ました。
「彼が、彼こそが…………本物の『ミーシャ・アイゼンハワーの愛弟子』であるっ!」
「「「「「ええええええーーーーーー!!!!!!」」」」」
会場が歓声やらどよめきやらで混然となり、今日一番の盛り上がりを見せた。




