012「ランカーズトーナメント開幕」
――『ランカーズトーナメント』当日
アルキメド王立学院高等部では年二回の大きなイベントがある。その一つがこの『ランカーズトーナメント』だ。
このトーナメントは一年生から三年生まで学院の全生徒を対象にしたトーナメントで目的は個人の実力を測ることにある。
ちなみに、このトーナメントでは『魔道具』の使用が認められているのだが、その前にこの『魔道具』について説明しておこう。
人間族がこの大陸で他の種族と互角かそれ以上に渡り合えた理由のひとつとして『魔道具』の発明が挙げられる。
『魔道具』には二種類あり、まず鎧や剣、籠手など実際に体に装着させたり武器として扱う『武具・防具』の魔道具は『外殻魔道具』と呼ばれている。もう一つの『薬』の魔道具は、簡単に言うと付与魔法のようなもので、その『薬』を飲むと効力を発揮。『内殻魔道具』と呼ばれている。
この『魔道具』を使って人間族は他の種族との差を埋め、遂には互角以上に渡り合えるまでに至った。
その為、この大会では『武器・防具』の魔道具、『薬』の魔道具の使用が認められている……というか、人間族が他種族と渡り合うのに必要な『魔道具』はむしろ使いこなせる必要があるので、この大会は『実戦形式の魔道具訓練』といった意味合いもある。
ちなみに『魔力』の量が多い者ほど『実力者』として認められるが、『魔道具』を使いこなせる者もまた同じように『実力者』と認められる。
そうして、このランカーズトーナメントで勝ち上がれば勝ち上がるほど、その実力の評価は『学院ランキング』としてランキング形式で評価されることとなる。ちなみに、この学院ランキングは卒業後の進路に大きく影響するものなのでかなり重要なイベントとして位置づけられている。
そんな『生徒個人の能力評価』としての試合なので、相手を再起不能にすることや大ケガをさせないようにする為、自分から『まいった』という申告以外に、相手との実力差が明らかな結果が出た時点で本人の意思に関係なく審判の判断で試合を止めさせるといった『レフリーストップ』も用意されている。
また、試合形式ということもありそれなりに負傷することもあるので、その時は常に傷の回復ができるよう『治癒サポート班』という治癒魔法を得意とする教師たちが常に動けるよう舞台の袖で待機している。
そんな『ランカーズトーナメント』は学院の大きな恒例イベントということもあり、学院の生徒以外の一般人や王族、貴族といった者たちも観覧に訪れるなど、学院のイベントというよりも『王国内での大イベントのひとつ』という捉え方が一般的だ。
まあ、俺は学院に入るまで『山奥暮らし』だったからそんなイベント知らなかったけどな。
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「ふ~、緊張するわね~……さすがに」
緊張という言葉に程遠い存在だと思っていたリリカが珍しく緊張していた。
「失礼ねっ! 私だって緊張くらいするわよっ!!」
おっと。どうやら言葉に出ていたようだ。
「ていうかね~、あんたこそ大丈夫なの?! 授業の実技とかでもパッとしないし、正直、一回戦敗退とかありそうなんだけど……ぷっ!」
「……のやろう~」
前の『ミーシャ・アイゼンハワーの愛弟子』の一件以来、理由は不明だが俺に対しての角が取れたリリカと比較的仲が良い。とはいえ、相変わらず、ムカつくことしか言わないけどな。とはいえ、リリカのこのノリは嫌いじゃない。
「お願いだから、せめてベスト100以内には入ってよね? そうじゃないと私やクレア、シャロンの仲間の『株』が下がっちゃうからね。ふふんっ!」
「う、うるせーよ! が、頑張るよ……」
ニヤニヤしながらリリカが俺を煽る。
でも、リリカが俺に対して『仲間』という言葉を始めて口にしたのを聞いて、俺は『やっと友達として認められた』と内心喜んでいた。まあ、こんなこと絶対にリリカには言えないけどな。
「それにしても……」
と、シャロンも少し緊張した面持ちで話に入ってくる。
「さすがに全生徒参加っていう規模のイベントだけに人が凄いね……」
アルキメド王立学院高等部の生徒数は約300人、ちなみに各クラス20人編成で5クラスあるので学年ごとに約100人いる計算だ(多少の増減はある)。そんな全生徒が参加するんだ、そりゃ~、凄いよな。
「ね、ねえ、あれって……王族の方々じゃないかな?」
クレアが来賓席を見ながら呟く。
来賓席には『王族』と『上級貴族』の席が別で用意されていた。
「そりゃ~いるでしょ? そもそもジュリアーノ国王がこのイベントが大好きなんだから。見なよ、あそこ……」
リリカが指さす方向には、ジュリアーノ国王が年甲斐もなく(現在30歳)、側近を連れながら屋台で食べ物を買いまくっていた。
「フフ……楽しそうにしてるね国王様。私、こういう国王が大好きです!」
クレアがその光景を見て嬉しそうに答える。
「私もだ。こういう地位にいても国民に寄り添う国王が好きですしとても尊敬します!」
「そうだね。ぶっちゃけ普段はちょっと頼りないように感じることもあるけど、でも、いざとなった時の行動力とか決断力は凄いって思う」
「へ~、そうなんだ……」
俺は本の知識や師匠から習った歴史しか知らないので、国王に人柄についてはわからない。なので、そんなコメントしか出ない俺に対して、三人から(主にリリカから)、『あんた、ホント国宝級の世間知らずねー』とバカにされた。
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「生徒諸君っ! 並びに観戦に来られた皆の者、今日は我が校のランカーズトーナメントに集まり感謝する!」
ジュリアーノ国王によるランカーズトーナメントの宣誓が行われた。
「新入生の諸君はまだ未熟な者も多い。故に決して無理をせず降参が必要な時はすぐに申告するように。2~3年の上級生も無理しない程度に存分に力を振るってほしい」
ジュリアーノ国王の宣誓に皆、立ち上がって傾聴している。
会場である武道館の席はすべて観覧者で埋め尽くされておりすごい熱気だ。いかにこのランカーズトーナメントが注目されているかがよくわかる。
「では、これよりランカーズトーナメントを開催するっ!」
わぁぁあぁあ~~~~~~~~~~~~!!!
武道館が震えるほどに観客が拍手と歓声を一斉に上げる。
その会場の雰囲気も相まって、俺は初めて父さんや師匠以外の人とやり合えることにとてもワクワクしていた。とは言え、師匠や父さんからは『氣念術』と『自作魔法』は使わないよう言われているので全力でやり合うというわけではない。
なので、今回のランカーズトーナメントは『氣念術』『自作魔法』抜きでどこまでやれるかという範囲で試合をすることになる。まあ、この2つを使用すると悪目立ちするのでそれは仕方がない。
と、ここで少し『氣念術』について説明しようと思うが、それを説明するにはこの世界の『魔法』についても触れる必要がある。
まず、この世界で『魔法』を使うには魔法を使うためのエネルギーである『魔力』が必要となる。そして、この『魔力』を作るには細胞の中に存在する魔力の素となる『魔素』をかき集めることで作られる。
なので、細胞の中にある『魔素』の量が多ければ多いほど作り出せる『魔力』の量も多いということとなり、それは『強大な魔法』を放つことが可能となる。
その上、『魔力』は単純な物理攻撃や防御にも『プラス補正』のように能力を引き上げる使い方もできる。いわゆる付与魔法だ。
だから、『魔力』の量が多い者ほど『実力者』として認められる。
次に『氣念術』の話だが、『氣念術』は自然界の命あるものすべてに存在する『氣』というエネルギーを取り込み、魔法や剣術、武術に利用する術である。簡単に言うと『魔法』を使用する為のエネルギーである『魔力』にプラス、自然界の『氣』というエネルギーを取り込み『ブーストをかける』ことができるということだ。
だから、『氣念術』を使える師匠や英雄五傑が他と比べて強いのは『魔力』以外に『氣』というものを利用できるところにある。
とは言っても、師匠レベルで自然の『氣』を取り込める『氣念術』を使えるのは存在しない。というのも『氣念術』を使って自然から少しでも多くの『氣』を取り込むには、如何に『氣念術の理解』があるかということが重要になる。
なので、いくら『魔力』が高かったり、武術や剣術に長けていても、『氣念術の理解』がなければ使うことはできないし、また、理解の差によって自然から『氣』を取り込める量に差が出てしまう。
ちなみに、俺が取り込む『氣』の量が『10』だとすれば、師匠は『50』以上は取り込む。それくらい師匠は自然界から莫大な『氣』を取り込むことができるし、そもそも、それ以上に『魔力』も膨大なので師匠が『氣念術』を使う場面は今ではほとんどない。つまり『化物』である。
今なら、師匠が初めて家に来た時、父さんが横で震えていたことも理解できる。
そんなわけで俺は今回『氣念術』は使えないのでランカーズトーナメントでは本来の自分の『魔力』のみでの戦いとなる(自作魔法も使えないし)。
ちなみに師匠との修行では、俺が『魔力』プラス、全力で『氣念術』を使うのと、師匠が『魔力』のみで戦って何とか試合になるという感じだった。そんな、師匠との差が同世代の人たちとどれだけ差があるのかわからない為、俺は『魔力』だけでどこまで通用するのか不安だった。
そんな不安を抱える中、俺の出番が回ってくる。
いよいよ主人公の力が世に…………みたいな感じで。




