009「ミーシャ・アイゼンハワーの弟子を名乗る者」
英雄五傑の一人、クリフ・リトバルスキの息子で、ミーシャ・アイゼンハワーの弟子と名乗る男、赤い髪をオールバックにした黒い瞳のレオン・リトバルスキ……その男の発言にいつも賑やかな学食が静まり返っていた。
「あ、あなたがミーシャ・アイゼンハワーの愛弟子……?」
気絶しているリリカのかわり……でもないが、クレアがレオンに質問する。
「はい。愛弟子かどうかはわかりませんが……ミーシャ師匠の弟子です」
「そ、そんな、本当に、存在してたなんて……」
理由は不明だがクレアがこの時がっくりと肩を落とした。
後に、クレアにその時の肩を落とした理由を聞いたところ…………いや、その話はやめておこう(照れるので)。
「私はクレアさんの家のような首都出身の上級貴族ではありませんが、良かったらお友達になってくれないでしょうか?」
そう言って、クレアに手を差し伸べるレオン。
「あ、え、あの、えーと……」
すると、クレアが俺のほうをチラッと見た。
俺はクレアが突然視線を送った意味がわからなかったので『えっ? 何?』といった仕草を返した。瞬間クレアは肩を落とす……が、すぐに姿勢を正し、
「と、友達なら……」
そう言って、クレアはレオンと握手を交わした。
「ありがとう! 改めて、レオン・リトバルスキです。他の方々もこれからよろしくお願いします」
レオンはそう言って俺たち一人一人にも握手を交わしていった。そして、俺の番になった時、
「初めまして…………ダイオウガ・エスティオット君」
「……っ!?」
少し、レオンの握手が強く感じた。
「君も初等部、中等部は通っていないんだってね。まるで私と同じだ。仲良くなれそうで嬉しいよ。これからよろしくっ!」
そう言って、さらに強くレオンは手に力を入れてきた。
「……ちょ、ちょっと力入れ過ぎじゃないかな、レオン君?」
俺は特に抵抗することなく、レオンに手に力が入っていることを告げた。
「あ、ご、ごめん、ダイ君っ! そんなに力を入れたつもりは全くなかったんだけど……す、すまないっ!」
「……あ、そ」
そう言ってレオンは俺に謝った……が、
「謝らなくていいわよ、レオン君。だって普通に握手しただけでしょ? 貧弱なダイがいけないのよ。もっと鍛えなさいよね、ダイ!」
「のやろう~……リリカ、いつの間に」
いつの間にか気絶から帰ってきたリリカがわざわざ俺に悪態をついてきた。
この野郎、わざわざそんなこと言うなよ!
この時ももちろん、『リリカをいつか痛い目に合わそう』へのポイントが加算されたことは言うまでもない。
「すまない、ダイ君。ワザとじゃないんだ」
「あ、うん。わかったよ、レオン君。あと、俺のことはダイでいいから」
「わかった。じゃあ、私のことはレオンと呼んでくれ」
そんな俺とレオンのやり取りをシャロンはジッと眺めていた。
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「しかし、とんだ大物が出てきたね」
「まったくだ」
俺とシャロンは放課後、運動がてら校内を走っていた。
「『英雄五傑の息子』で『ミーシャ・アイゼンハワーの愛弟子』て…………ちょっと凄すぎてさ、逆に本当かな? て思っちゃうけどね」
と、シャロンがあまりにも『大きな肩書き』を2つ持っているレオンに対して疑っているような言葉を発した。
「あ、まあ、うん……そうだね」
「??」
そんな『大きな肩書き』を2つ持つ人を知っているだけに(ていうか俺)、何ともぎこちない同意をする。
考えたこともなかったが、確かに俺の肩書きって口に出したらそういうことになるのか。
我ながら『テンプレチート』だと実感する。
しかし、それにしてもレオンが言っていることは本当のことなのだろうか?
今度、師匠に確認しに行ってみよう。
「でも、一週間後にはそれを確認できるチャンスがあるから楽しみだよね!」
「え? 確認できるチャンス?」
突然、シャロンがそんなことを口にした。
と
「あれ? 知らないの? 昨日先生が言ってたでしょ? 一週間後にアルキメド学院毎年恒例の全生徒の実力評価を兼ねたトーナメント『ランカーズトーナメント』があるって」
「え、そ、そうだっけ?」
言えない……その時、前の席のクレアの髪から漂うフルーティーなシャンプーの香りに集中していたから聞いていないなんて。
「先生の話くらいちゃんと聞きなよ、ダイ」
「め、面目ない……」
シャロンがため息をつきながらお母ちゃんのような目線で注意する。
なんか、すんません。
「……とにかく、このトーナメントであのレオン・リトバルスキが言っていることが本当かどうかわかるでしょ?」
「なんで?」
「いや、なんでって…………君、そんなこともわからないの? もっと勉強しないとダメだよ、ダイっ!」
「す、すみません……」
またもや、シャロンお母ちゃんに怒られちゃいました。
「いいかい? まず、レオン・リトバルスキが『英雄五傑』のクリフ・リトバルスキの息子だってことは授業が終わった後にリリカが教えてくれたけど……」
「え? リリカが?」
「ああ。昼休みの後、授業サボって家に戻って使用人に調べさせたみたいでさ、それで、放課後前に戻ってきたリリカから教えてもらったんだよ」
リリカの奴、この短時間でいつの間に……思っていたより優秀だな、あいつ。
その時から俺はリリカの調査能力を評価しつつ、自分の秘密がバレないよう警戒するようになった。
「それで、レオンが『英雄五傑の息子』であることが真実であることはわかったんだけど……もちろん、それだけでも凄いことなんだけど、それよりも大事なのはもうひとつの……『ミーシャ・アイゼンハワーの愛弟子』かどうかってところだ」
「……なるほど」
「そして、その証拠となるのがミーシャ・アイゼンハワーしか教えられない『氣念術』をレオン・リトバルスキが使えるかどうかということになる」
「……なるほど」
「そして、ちょうど一週間後には『ランカーズトーナメント』が始まる。これでレオンが『氣念術』を使えるかどうかがわかるはずってことなのさ」
「……なるほど」
「何なんだい、さっきから」
「え?」
「なるほど、なるほどって言うばかりでダイはまるで関心がないようだね。レオン・リトバルスキが本当に『ミーシャ・アイゼンハワーの愛弟子』かどうかなんて興味ないの?」
「え? あ、いや、ま、まあ、それなりには……」
「ふ~ん……」
すると、突然、シャロンの俺への視線が一瞬、鋭くなった。
「もしかして……ダイ、君は……」
あ、これはマズイ。
「そ、そりゃ~すっごい気になるよ! だ、だって、あの『ミーシャ・アイゼンハワー』が弟子なんて『英雄五傑』以外では聞いたことないし」
俺はすぐに察してシャロンに話を合わせる。
「そう? てっきりダイは興味ないかと思ったけど……」
「そ、そそ、そんなことねーよ! 俺だって十分興味あるってっ?!」
「ふ~ん…………そっか。やっぱ気になるよね!」
「も、もちのろんっ!」
何とか軌道修正ができた(のか?)。
「でも、確かめるにはレオンに『氣念術』を使わせる必要があるってところなんだけど……彼の実力が相当高い場合、下手したら『氣念術』無しで優勝しちゃうこともあり得るかもってね……」
「なるほど。つまり、レオンに『氣念術』を使わせないと証拠が掴めない……けど、それを使わずに優勝してしまうくらいレオンは強い……って思っているんだな、シャロンは」
「そう。レオン・リトバルスキ………………彼、強いよ」
「……」
そうか、シャロンも気づいていたか。
レオン・リトバルスキ、あいつは確かに……強い。
「だから私は彼と対戦することになった時は、彼が『氣念術』を引き出せるよう頑張ろうって思ってるよ」
「そうか。シャロンも強そうだからな……」
「ありがとう。でも、ダイ、君だって………………強そうだけどね」
「いや、俺なんて全然だよ。ははは……」
「そうかな?」
「……え?」
シャロンがニコッと少し不敵な笑みを零しながら俺に意味深な視線を送る。
「ふふ、まあいいさ。とにかく一週間後の『ランカーズトーナメント』が…………楽しみだよ」
「あ、ああ……」
――そして一週間後、『ランカーズトーナメント』が幕を開ける。
これで……実弾が切れました。
でも、毎日投稿できるよう頑張ります。




