落とされた後の上がりって、大体良いことの前触れ前編
ガンちゃんことソルト視点です。
ちょっと短めです。
「お、やっと起きてきた。おはようアニキ。いや、おそようか」
休日、リビングに下りるとソファーに寝そべってテレビを見ている妹のウルが、そう言ってきた。
時計を見れば、十二時を半分も超えていて確かにおそようだ。
まあそれでも、せっかく休日なんだ。たまにはこんな時間まで寝ていてもバチは当たらんだろう。
そんなことを思いつつ、俺はウルに話かけた。
「あれ。親父と母さんは?」
「んーと、お父さんは朝早くから出掛けて、お母さんはさっき買い物に行った」
「ふーん。ラルも一緒に行ったんか?」
「アネキは遊びに行った」
俺に向けた足をパタパタさせながら、ウルは素っ気なくそう答える。どうやら意識は完全にテレビに向いているようだ。
俺もテレビへと意識を向ける。
映っているのは何やらドラマのようなもの。それが何のジャンルのドラマなのかは分からない。あまりそういうのを見ない俺には興味が湧かないというかなんと言うか。
そんなウルとテレビから視線を外し、俺はキッチンの方へと向かう。するとウルは、俺の行動を見計らってかこう言った。
「あ、何か飲み物持ってきて」
んー。なんと言うか……。小生意気なガキだ。
別に頼むは良い。俺もそんなことでいちいち腹を立てたりはしない。けど……その態度が、な。
テレビを見ながら、まるで召使いかなんかでも扱うように言われると、さすがに俺じゃなくてもムッとすると思う。兄妹なら尚更だ。
「ほらよ」
「サンキューッ! やっぱりアニキは優しいなあ。アネキなら絶対持ってきてくれないもん」
「だろうな」
とかなんとか考えたりはするが、結局持ってきてしまう。
俺はリビングに戻ってきて、コップに注いできたオレンジジュースをウルに渡す。
ウルは起き上がってそれを受け取ると、ニコニコしながら飲みだした。
「あれ、飲み物取りに行ったんじゃないの?」
「んー、水飲みに行っただけ」
ソファーの空いたスペースに座ると、ウルがそう尋ねてくる。そして俺がそう言うと、ウルは申し訳なさそうにこう言った。
「ごめん。てっきり」
「別に飲みに行ったのには変わんねーし」
「やっぱりアニキは優しいなあ。アネキなら絶対怒ってる」
「ラルは厳しいからなー」
ウルが言うようにつくづく甘いと思う。まあ、そんなことで腹を立てんのがめんどうなだけなのだが。
「そういえば、お前はどっか行かねーの?」
「行きはしないけど、友達が遊びにくる」
「ふーん、何時から?」
「うんと、十三時の約束だから、もうそろそろ来ると思う」
時計を確認すると、後十分くらいでその時間が訪れる。どうやら家の家族は、俺を除く全員が何かしらの予定があるようだ。
「そっか。ごゆっくり」
それを聞いて、俺はソファーから立ち上がり自分の部屋へと戻ろうとした。
「部屋戻んの?」
「ああ。着替えてくる」
「どっか行くの?」
「んー、うん。リッコのとこでも行ってくるわ」
「えっ!? リコっちゃんところに行くのっ!? いいなあ〜」
うおっ、びっくりした。急に食いついてきたな。
立ち上がった俺をガバッと見上げ、ウルは羨ましそな声をあげる。
っていうのも。ウマが合うのか、ただ単純になめられているのか、ウルはリッコに凄く懐いている。
二人の性格を良く知る俺から見れば、恐らくだが前者だろう。ウルはともかく、リッコは精神的な年齢が低いからな。頭が絶賛思春期的な意味で。
「まあ、居るかどうかは知らんがな」
「絶対居るでしょ。リコっちゃんって暇そうだもん。私も暇だったらな〜」
そう言うウルに返事を返さずに、俺は部屋へと戻り、出掛ける準備を始めた――うん、前言撤回。もしかしたら後者、或いはその両方だったかもしれないな。
◆◆◆
外へ出れば、今日は灰色に濁った空が続いていた。
今週はずっと太陽がギラついた空を見ていたからか何となく新鮮に感じるというか何というか、考えようでは良い天気だと思う。ただ、そう思うのもちょっとした出来事があったからなのだが。
さっき俺が出掛けようとした時、ちょうどウルの友達と鉢合わせた。そして、その内の一人が「良い天気ですね」なんて言ってきた。
今考えれば、こういう気持ちだったのだろう。けど、その時は反応に困ってしまい「ああ、雨が降りそうで涼しそうだな」って返すのがやっとだった。まあ本当に、雨でも降られた時にはそんな余裕ぶった気持ちは一変すると思うが。
やっぱり俺にはウルくらいの年の子の考えは分からん。
まあそれは良いとして、だ。
今の俺にはどうしても片付けなければならない問題が出来てしまった。それは――
「……何してんだお前?」
「え……ガンちゃん?」
部屋の前まで行くと玄関を全開にして何やら作業しているこのガキについてのことだ。
上げて落とされ、落とされて上がる。良くありますよね。主にガチャで。




