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ポートランド・ルーキーズ  作者: 帆影眠(ぽやしみ仙人)
3・4月編

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6/34

5試合目 初めての援護点



 BFOがヘディングでアシストしたホームランの後、全員三振で仕留め6回裏を終える。

 苛ついたのもあって本日最速の102マイル(約164キロ)を含めて100マイル(約160キロ)連発していたら、主審が萎縮でもしたのか前の回よりも気持ち広くストライクを取ってくれた。


「ショー、本当に済まない……。せっかく無失点でここまで来たのに俺のせいで……」


 ベンチに戻ってすぐにBFOが帽子を取って謝ってきた。

 彼の顔は悲壮に満ちていてとても見ていられない。


「気にするな、あれはお前のせいじゃない」


「でも、俺が転ばなければ取れた打球だった……」


「何度も言うがお前のせいじゃない。この欠陥球場と審判の判断が悪い」


「それはそうだが、俺が転ばずに取っていれば……」


「ああもうめんどい! いつまでもミスを引き摺るな。それよりこの回打席が回ってくる訳だし、お得意のバットで取り戻してこい」


 背中を軽く叩いて彼をベンチから送り出す。

 BFOは守備だけの選手ではなく、打撃でも優れている選手だ。

 昨シーズンはチームトップである30本のホームランを打っていて、彼が放ったホームランが決勝打になったことも一度や二度ではない。

 ここぞという時に一発が打てるバッターは強い。

 ただ問題があるとすれば、本日の先発投手が無援護に愛されていることくらいだろう。

 贅沢は言わないので毎試合2,3点の援護くらいはマジで欲しい。

 打席に立ったBFOは気合十分といった感じで初球から豪快にフルスイング。

 際どい球をファールにして粘る、とにかく粘る。

 迎えた10球目。

 快音が響き渡りベンチにいた全員が立ち上がって打球の行方を追う。

 奇しくもレフト方向に上がった打球は先程BFOがバランスを崩したフェンス際を軽々と超えていった。

 同点に追いつくソロホームランで試合は振り出しへ。

 それと同時に俺の負けを帳消しにする一発だった。

 あと何気にメジャー初めての援護点でもある。

 ダイヤモンドを一周してベンチに戻った彼は熱烈な祝福を受ける。

 その表情は先程とは正反対で、明るい笑みを浮かべていた。


「ナイスバッティング!」


 俺たちは喜びを噛み締めるように強く抱き合った。

 というかめっちゃ痛い……。

 力が強過ぎるBFOは感極まって涙を流し、しれっと俺のユニフォームで涙を拭っていた。

 普段なら無理にでも引き剥がしてキレるところだが、負けを消してくれた英雄にそんな真似は出来まい。


「おい、しれっと鼻水を人の服で拭くんじゃねえよ馬鹿野郎」


「Oh ソリー、ソリー」


 悪戯っぽい笑みを浮かべたBFOはグローブを持ってフィールドへと駆け出していった。

 いつの間にか俺たちの攻撃は終わっていたらしい。

 てっきり降板だと思って油断していたら、退場した監督の代わりに指揮を執るピッチングコーチがブチギレながら早くマウンドへ向かうように急かして来た、……解せぬ。

 まあ、球数的にこの回までだろう。

 さっきの回で全力投球をして少し疲れたので、この回はカーブを中心に投球を組み立てる。


「おお、スゴイボールだな……」


 思わずそう呟くほどエグいほど落ちるカーブを投げてしまった。

 打者の手元で急に落ちるボールにバットが空を切る。

 何とか捕球したキャッチャーも百五十センチくらい急に落ちるボールをマジマジと見つめ、何が起こったか分からないと言わんばかりにしばらくそのまま固まっていた。

 バッターも苦笑しながらバットでボールの軌道を描き首を傾げる。

 投げた本人ですら驚いているぐらいの変化量だ。

 マジでどうやって投げたんだ、アレ……。

 カーブと速球を混ぜて緩急をつけて三振を奪ってツーアウト。

 続く打者には初球を打たれたが完全な打ち損じだ。

 ショートが悠々捌いてファーストに送球、そのままアウトのはずが送球が逸れてベンチに入ったため自動的に打者は二塁まで進む。

 いわゆるエンタイトルツーベースとなった形だ。

 勿体ないが起きてしまったエラーは仕方がない。

 そう思っていると背後が何やら騒がしくて振り返る。


「レオのバカ! 何であんな打球でエラーすんだよ!」


「うるさい! テオにだけは言われたくねえよ!」


「何だとこの野郎!」


「やんのかこの野郎!」


 二遊間を守る双子のレオとテオが喧嘩を始め、審判と二塁走者が仲裁していた。

 マジで何やってるの君たち……。

 危うく退場になりそうだったが、審判に睨まれるとすぐに二人は守備位置へと戻っていった。

 守備位置に戻ってからもお互いに罵り合っていて集中出来ない。


「あ、ヤベッ」


 集中を乱されたのもあって、過去一甘い球を捉えられライトまで運ばれてしまった。

 何とかホームランにはならなかったものの、タイムリーツーベースにはなりそうだ。

 三塁を狙ったバッターランナーに対して、ライトからの好返球でアウトには出来たが逆転は許してしまった。

 自責点ではないとはいえ再び負けが付く状況になり悔しい。

 結局、その後ルーキーズは1点も取れずヘイローズとの三連戦、その大事な初戦を落とした。



《用語解説&設定》

・決勝打→試合の勝敗を決めるヒットやホームランのこと

・二遊間→二塁手と遊撃手(ショート)の間

・自責点→ホームランなど投手の責任となる失点のこと

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