3試合目 ロサンゼルス・ヘイローズ
翌日、ロサンゼルスの空はよく晴れていた。
気持ちの良い青空の下、球場に入ってアップを済ませる。
軽く投球練習を終えるとあっという間に試合開始時刻が迫ってきて、午後7時7分――日本時間の午前11時7分に試合はスタートした。
ロード、敵地での一戦なのでルーキーズが先攻、即ち俺の登板は1回裏からになる。
ブルペンからベンチへと移動して身体を動かしながら出番を待つ。
それにしても試合開始時刻が7分とか中途半端な時間なのは何故なんだろうと考えているうちに、初回の攻撃は三者凡退であっさりと終了した。
全員様子見することなく初球打ちでフライを打ち上げてアウトになったらしい。
さすがに攻撃終了が早すぎるのでフルカウントまで粘って欲しかったが、それを言ったところで仕方がないか。
いよいよ出番が来たので足早にマウンドへと向かう。
今日の対戦相手――ヘイローズは何というかパッとしないチームだ。
ホームランを量産するような打線が強いわけでも、鉄壁を誇る守備という訳でもなく。
どちらも中途半端で、圧倒的なエースも客を呼べるスター選手もいない。
成績としてはウェストリーグの激戦区である南西地区の最下位常連。
最下位と言っても南西地区には前人未到のWS十連覇を達成したドルフィンズ、PS進出常連のパシフィックスがいる。
そんな二つのチームを前に地区優勝どころか地区三位すら厳しいだろう。
特に強豪チームが同地区にいる訳でもなく、ただ単純に弱いだけで地区最下位から一生脱出できないルーキーズとは違う。
だが、地区最下位というのはそれだけで罪のようで。
ヘイローズに所属する有望な若手選手は勝利を求めて我先にと同地区の金満で常勝球団であるドルフィンズへと移籍していく。
そのため、ドルフィンズのファームだと揶揄されているくらいだ。
そんな状況でも球団は高額な契約を選手に提示することはない。
有望な選手は流出していく一方だ。
そんなチーム事情とは対照的に、試合が行われている球場は全米一奇抜といっても過言ではない。
外野フェンスの先には滝や池、林があり客席がない大胆な構造をしていて、ホームランボールは高確率で行方不明になる。
ボールの回収は事実上不可能なので、選手にとってはホームランを打っても記念ボールは手元に戻ってこず悪夢でしかない。
ファウルポールには黄色くペイントした木が植えられており、葉が生い茂っていると打球の行方が分からず判定を巡って度々揉めている。
生きている木を黄色くペイントするなんて環境破壊もいいところだが、植物由来のペンキを使用しているから平気らしい。
よくわからんがさすが自由の国って感じだ。
ファウルポールの根本は木の根がグラウンドに侵食しており、外野手は木の根に躓いてしょっちゅう転倒して打球を捕球出来ずにいる。
ただの外野フライもこの球場では長打に成り得るのだ。
奇抜というよりもマジでただの欠陥球場だろ、これ……。
ともあれ投手である俺にはあまり関係がない。
いつも通りアウトを積み重ねていくだけだ。
とりあえず初回は三者連続三振で終える。
そこから両チームともヒットや四球で出塁しても一塁止まりという貧打の攻防が5回まで続いた。
0対0で迎えた6回裏のことである。
バッターが打ち上げた打球には伸びがなく、それでも風に流されてフェンス際まで飛んでいった。
完全に打ち取った当たり。
俺は打球の行方を最後まで確認せず、キャッチャーにボールを要求する。
その刹那、突如として球場は大歓声に包まれた。
《用語解説&設定》
WS→ワールドシリーズの略。リーグチャンピオン同士が世界一をかけて戦うPSの最終戦のこと。
ロサンゼルス・ドルフィンズ→ウェストリーグ南西地区1位
サンディエゴ・パシフィックス→ウェストリーグ南西地区2位
ロサンゼルス・ヘイローズ→ウェストリーグ南西地区4位




