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ポートランド・ルーキーズ  作者: 帆影眠(ぽやしみ仙人)
5月編

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30/35

28試合目 サイクル達成?



 試合は双方とも毎回得点を重ねたまま進み、ルーキーズが1点のリードで8回裏ツーアウトまでやって来た。

 同点に追い付かれたり、逆転されない限り本日最後となるルーキーズの攻撃。

 その打席には本日3本のアーチを描いている打神が立った。

 ランナーは二塁、三塁と得点圏にいてチャンスの場面だ。

 ここでスリーベースヒットを打てばサイクル安打達成。

 ホームランならメジャー史上初となるサイクルホームラン達成。

 どちらにせよ記録として残るし、後者であれば偉業がかかる打席は異様な緊張感が漂っていた。

 選手達はもちろん観客達も固唾を呑んで彼の打席を見守る。

 ただ相手投手は打神が苦手とするサウスポーだった。

 今季のホームランは全て右投手から放ったもので、左投手からはヒットすら打てていない。

 データが重視されるメジャーということもあって、その事は相手チームも当然把握していて。

 通常なら打神を歩かせて満塁策を取り守備を固めてもおかしくはない場面だが、まず打たれることは無いと確信でもしているのか相手は申告敬遠をして塁を埋めようとはしなかった。

 それだけ勝算があるということだろう。

 若しくは打神という選手を甘く見ているだけか。

 何にせよルーキーズとしては1点でも多く得点をしておきたい。

 9回を投げるのがどういう状況になろうとクローザーで確定している。

 何故ならば他のリリーフは全て使いきっており、残っている投手はクローザーと先発のみ。

 頼みの綱であるクローザーは昨年10回もセーブ失敗している。

 今年も不調気味なので1点を守りきれるか怪しい。

 かと言って先発を使えばローテーションは崩壊する。

 短期決戦であるPSならまだしもレギュラーシーズン、それもまだ五月なのに貴重な先発要員をピッチャーが足りないという理由だけでリリーフとして使うのは非現実的だ。

 初球の落ちるボールを打神はしっかり見送った。

 不調の時なら間違いなく手を出していたボールだが、今日の打神は良くボールが見えている。

 一度三振に倒れているが、際どいコースの見逃し三振だった。

 その次の打席ではしっかりと四球を選べている。

 2球目はバットに当ててファウルにした。

 3、4球目は外に大きく外れる球で、打神はしっかりと見極める。

 これでボールが先行して3ボール1ストライク。

 5球目はインコースに入ったボール球を空振りしてフルカウント。

 観客達は立ち上がって打神へと熱い視線を向ける。

 6球目、7球目は打ち上げてファウル。

 続く8球目――。

 甘いコースに入ってきたスイーパー。

 それを見逃すほど打神は愚かではない。

 パカーンという音と同時に打球は黄色のファウルポール目掛けて飛んでいく。

 打球が切れてファウルになるか、それともスタンドに入るか――。

 そのどちらでも無かった。

 何かに当たる音が聞こえた刹那、ボールはグラウンドへと勢い良く落下してくる。

 外野手が慌てて走ってくるがボールを掴むなり苦笑しながら高々とそれを掲げ何かをアピールした。

 中継のカメラが彼の掲げるボールを大型ビジョンに写し出す。

 白いはずのボールの表面には、何かで擦ったような黄色い跡がはっきりと見える。

 それは元からあったものではなく。

 かといって投手やバットによって意図的や自然に着色されたものではなく。

 球場内で黄色く着色され、ボールが当たるような場所にあるのは一つしかない。



『――――』



 それを理解した観客達は、大歓声と鼓膜を破壊せんとするほどの拍手で打者の偉業を讃えるのだった。





























 ――打神三振、メジャー史上初のサイクルホームラン達成。

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