17試合目 2アウト満塁
俺の勝ち投手を奪い去った場外ホームラン。
あの場外弾でルーキーズは逆転を許し、2点ビハインドのまま9回まで来た。
つまり俺が3回裏にホームを踏んでからルーキーズは1点も取れていない。
だが、ブルージーンズもブルージーンズであの場外ホームランから得点は入っておらず。
7回裏から両チームの点差は変動無し。
スコアボードには3回の1、7回の3以外ずっと0が並んでいた。
9回表はランナーを出しつつも危なげなく無失点で切り抜けて、裏の攻撃は下位打線の7番から始まる。
ということはどんな結果であろうとも9番である俺までは確実に回ってくるわけで。
本日3打席とも出塁している俺にどんな形で回ってくるのかが勝敗を分けるであろう。
……尤も出塁と言っても全て四球を選んだだけなので、マルチ安打とか猛打賞みたいに誇れるほど大した成果ではないが。
せいぜい本日4打席とも三振しているどっかの誰かさんに勝ち誇った顔が出来るくらいだ。
ブルージーンズは本気で勝ちに来ているようで、2点差ながらも守護神登場。
ルーキーズにとっては厳しい展開になりそうだった。
この状況での守護神登場で喜ぶのはブルージーンズファンくらいだろう。
だが、スタンドに残っているブルージーンズファンの姿は疎らだ。
中盤くらいまでは球場のあちらこちらで青いユニフォームに身を包んだ観客を見掛けたが、今では数えられるほどしかいない。
というか、現時点で球場にいる観客が少な過ぎて、既に試合が終了しているかのような錯覚を覚える。
それか無観客試合を思わせるような少なさだ。
俺がマウンドに上がっている時は体感四割くらい席が埋まっていたんだけどな……。
ルーキーズ相手に2点差あるなら勝てる、ようやく大型連敗ともおさらばだと確信したブルージーンズファン達の多くは既に家路へついてしまったようだ。
それはルーキーズに関する指標も影響しているのかもしれない。
0勝110敗――これは昨年のデータだが、7回時点でルーキーズが負けている場合の試合結果である。
逆転勝利が一切無いのがヤバすぎる。
つまり7回までに相手チームがリードをしておけば勝てるということだ。
残りの22敗は同点もしくは逆転負けなので、如何にルーザーズ――じゃなかったルーキーズが弱いかが痛感できるだろう。
なんだこのチーム。
本当に世界最高峰のメジャーに所属する球団なのか???
まあ、そんな感じなので正直チームの雰囲気は重い。
諦めムードまでいかないが、やる気に満ち溢れてはいなかった。
7番は四球を選び出塁出来たが、続く8番は三球三振。
1アウトランナーが一塁という場面で俺に打席が回ってきた。
「……よし、行くか」
気合いを入れてバッターボックスに立つ。
理想はホームランを打って同点に追い付くことだが、大振りして打ち損じ内野ゴロからのダブルプレーで試合終了となるのが一番タブーな展開だ。
それだけは何がなんでも避けねばなるまい。
長打を狙わず内野を抜けるヒット狙い、若しくはボールを見極めて四球なら良いと思っていた。
だが、投手が投げたボールは真っ直ぐ俺目掛けて飛んでくる。
「――ッッッ!」
慌てて身体を仰け反らせボールを避けようとするが背中に直撃した。
痛い、痛すぎる。
だが、これで出塁するという最低限の仕事はこなせた。
続く1番はヒットで出塁して満塁になったが、2番は外野に打ち上げてフライアウト。
2アウト満塁のチャンスであの男に打席が回ってくる。
『次の打者は3番ファースト! ミツフル・ウチガミ! マジで頼んだぞ、ミッツー!!!』
なんか場内アナウンスに私情が入っている気がするけど、気にしたら負けだろう。
今日三振しかしていない打神の目は真剣そのものだった。
初球から豪快なスイングをしていく。
空振りにこそなったものの、スイングには迷いがなく状態も悪くないようだ。
続く2球目。
ベンチで誰もが祈るように見守る中、打神がバットを振る。
打球は夜空に向かって飛翔して――スコアボードの裏からは花火が上がった。
《用語解説&設定》
・ビハインド→相手チームに負けていること
・マルチ安打→1試合で2本以上ヒットを打つこと
・猛打賞→1試合で3本以上ヒットを打つこと




