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ポートランド・ルーキーズ  作者: 帆影眠(ぽやしみ仙人)
3・4月編

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13/33

12試合目 バットを振らない戦法



 打たせて取るピッチングは三振を積み重ねるよりかなり楽だ。

 球数も少なく出来て長いイニングを投げるために温存出来る。

 現に先ほどのイニングはたったの2球で終わったし、このペースなら9回までいけると思っていたのだが、現実はそう甘くはないようで。

 3回表になると打者がバットを振ってくれなくなった。

 相変わらずコントロールは乱れたままなので、最初の打者にはストレートの四球を与え、続く打者もバットを構えこそするが振る気配はなく。

 カウント稼ぎでストライクゾーンに投げ込んだ打ち頃のカーブにすら反応しない。

 打たせて取るピッチングって打者が打ってくれないと意味がないので困る。

 ボールが先行しているので次もコントロール重視で野手登板の時のように、山なりのボールを投げてみる。

 さすがに50マイルにも満たない緩いボールには反応するらしくバットを振ってファールにしてきた。

 意図的に反応したというより、反射的に思わず手を出してしまったという感じだ。

 ……もう面倒だし今日は全部このくらいの速度で投げようかな。

 そう一瞬血迷ったが緩いボールをパワーで無理矢理ホームランにされても面白くはないので止めておく。

 ホームランダービーじゃあるまいしな。

 過程はどうあれとりあえずツーストライクと追い込んだので、続く球は高めの速球を選択。

 真剣な表情をしている打者はボールの軌道をガン見しているがバットは振らない。

 ギリギリストライクゾーンを掠めているような気がするが、主審の手は上がらず首を横に振るだけだった。

 微妙なところではあるがABSチャレンジをする価値はある。

 それは俺だけではなくキャッチャーのタローも同じだったようで、俺が帽子を二回叩くより前にタローはヘルメットをポンポンと二度叩いてABSチャレンジを要求した。



『キャッチャーによるABSチャレンジ』



 主審がそう宣言してマスクを外しつつ、センター頭上のスコアボードを見つめる。

 たとえこれが判定通りだったとしても後悔はない。

 二回しかないチャンスを一回潰す価値はあるはずだ。

 少なくともバッターが無駄打ちして一回分をドブに捨てるより余程有意義な使い方だろう。

 スコアボードの左側にボールの軌道が表示されると同時に歓声が上がった。

 タローの方へと視線を向けると彼はしてやったりと言わんばかりに、ニヤリと悪い笑みを浮かべていた。

 打者は驚いたような表情をしつつも、結果を認めてベンチへと引き上げていく。

 これでボール判定が覆って見逃しの三振で1アウトになったが、先ほどのイニングに比べてかなり疲れた。

 これなら打たせて取るよりも三振を重視した投球の方が楽だったかもしれない。

 尤もコントロールが定まらないのでいつもみたいに三振を奪えないので意味がないけれど……。

 続く打者は初球からバントをしてきた。

 王道通り一塁でアウトを取る。

 これでランナーは進塁して2アウトでランナー二塁となった。

 長打が出ればランナーが生還して点を失いかねない。

 とりあえず様子見で一球カーブを投げる。

 判定はストライクだがこのバッターもバットを振ってこない。

 ボールが戻ってきたところで、タローが二塁へ牽制するよう指示を出してきた。

 投球動作に入る前に一応横目で状況を確認してみる。

 二塁ベースには双子のどちらかが口笛を吹きながら軽くグローブを構え、ランナーは油断しているのか二塁から離れたところで突っ立っているだけだった。

 それ故に二塁へボールを素早く投げるだけで、よそ見をしているランナーをアウトに出来た。

 ランナーはどうしてこうなったのか分からないと言わんばかりに、呆然と立ち尽くしていたが嘆息しつつベンチへと引き上げていく。

 ……さすがにお粗末過ぎやしないか?


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