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ポートランド・ルーキーズ  作者: 帆影眠(ぽやしみ仙人)
3・4月編

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10/34

9試合目 スーパープレイは突然に



 ノーアウト満塁の大ピンチ、しかも制球が定まらないときた。

 普通の投手なら炎上して四球を与えて押し出しか、タイムリーヒットやらホームランを打たれて大量失点する場面だろう。

 そのまま先発投手としての仕事を全う出来ず、1回で降板する未来がありありと見える。

 無失点で切り抜けるにはかなり酷な状況だ。

 だが、一周回って逆にどこかワクワクしてきた。

 ピンチこそチャンスってやつだろう。

 ただ淡々と三振を奪っているだけではつまらない。

 毎試合は勘弁してほしいが、たまにはこういった刺激がないと、な。

 それに打たせて取るピッチングにもメリットがあって、球数を少なく出来る分イニングを食えるのだ。

 これから先長いシーズンを戦っていく上で、そういった投球もしていかないと絶対に疲れる。

 力で押して三振を奪うだけが投手の仕事ではない。

 打たせて取るピッチングも戦略の一つだ。

 呼吸を整えて緩いカーブを投げる。

 まるで野手登板のようなスローボールに打者は手を出せずに見逃した。

 しかもストライクゾーンに入ったので投手優位のカウントだ。

 初球のボール球を空振ってくれたお陰でツーストライクと追い込んでいる。

 続いて投げた変化球をバットが弾く。

 打球はそのまま俺の方へと一直線で飛んできた。

 まともに当たれば怪我をしそうな打球。

 けれど、それを回避すれば失点は免れず。

 外野まで抜ければ余裕で長打コース、下手をすれば塁を埋めるランナーは全員生還するだろう。

 出来るならそれは避けたいし、取れる打球なら自分で処理した方が確実にアウトカウントを稼げる。

 更に状況次第ではダブルプレーを狙える。

 ならば、ピッチャー強襲の打球になんか怯えていられない。

 俺は覚悟を決めて少し仰け反りながらボールを捕球すべくグローブを構える。


「セカンド、次にサードだ!」


 グローブにボールが収まると同時にキャッチャーがそう叫んだ。

 ボールを手にして二塁へと振り返ると、双子の片割れがベースに陣取っているのが見えた。

 彼のグローブ目掛けてボールを全力で投げる。


「頼んだレオ!」


「俺はショートのテオだ馬鹿野郎!」


 そう叫びつつテオはボールをサードへ転送した。

 そのタイミングで二塁へとランナーが滑り込み。

 サードがベースを踏みながら捕球して審判にアピールした直後、ランナーが三塁へスライディングしてきた。


「――アウト!」


 三塁塁審がアウトを鋭く宣告すると、テオがこちらにやって来て。


「ナイスプレー!」


 そう声を掛けつつ、俺のグローブに自らのグローブを当ててきた。

 そのまま小走りでベンチへと向かっていく。


「ほら早く戻るぞ、ショー。それともアレか、相手だけじゃなく俺達からもアウト奪うつもりならマジで勘弁してほしいぜ。どう頑張ってもショーの球を打てる気がしねえからな、ハハハ」


「ハハハ……」


 そう告げたセカンドのレオがポンポンと肩を軽く叩いて去っていく。

 その言葉で攻守交代なのだとようやく悟った。

《用語解説&設定》

・野手登板→投手ではなく野手が投手としてマウンドに上がること。大差がついた試合で投手を温存するため野手登板が行われる事が多い。

・長打→二塁打以上のヒットやホームランのこと

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